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【ルイ ヴィトン】レ サーブル ローズ(ジャック・キャヴァリエ)

ルイ・ヴィトン
©LOUIS VUITTON
ルイ・ヴィトン
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レ サーブル ローズ

原名:Les Sables Roses
種類:オード・パルファム
ブランド:ルイ・ヴィトン
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:2019年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/53,900円
公式ホームページ:ルイ・ヴィトン

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砂漠をバラ色に染めていく、朝焼けのローズウードの香り

©LOUIS VUITTON

私が訪れたサウジアラビア、ドバイ、オマーンの女性たちは、大体十数種類の香りを常備しており、毎朝、その日の気分で、重ね付けしていました。彼女たちにとって、香りのパーソナライズは習慣でした。そして、ウードは何よりも重要なものでした。

それはもしかしたら、むかしむかし、スルタンが、ハーレムにおいて、夜の暗闇の中で、それぞれの愛妾の違いを嗅ぎ分け、それを基準に選んでいた。そのため、香水を何種類か混ぜて、彼を混乱させ、遠ざけたり、引き付けたりする可能性があったのでしょう。

ジャック・キャヴァリエ

2018年8月からルイ・ヴィトンが、松屋銀座・表参道店をはじめとする一部店舗限定で発売している「オンブレ ノマド」。この香りは、中東マーケットのために作られたオリエンタル・フレグランスでした。

その「オリエンタル・パフューム」の第二弾として2019年5月30日に発売されたのが「レ サーブル ローズ」です。こちらは、前作のようにメンズ専用ではなく、ユニセックスの香りとなっています。

「レ サーブル ローズ」とは、フランス語で「砂の薔薇」の意味です。ローズとウード(沈香)とアンバーグリス(龍涎香)が奏でるオリエンタルの香りは、ルイ・ヴィトンの専属調香師ジャック・キャヴァリエにより調香されました。

きらめく星々が砂漠をやさしく見守る夜が明けようとするまさにその時、大地と空と雲を淡い紅色に染め上げてゆく、砂漠が輝きを取り戻す数分間のゴールデン・タイムを描き出す香りです。

それは、暗闇の中から、ひと筋の蝋燭の光によって照らし出された、美しい肢体の女性が現れるイメージでもあります。

ちなみにこの香りで使用されているグラース産ローズ・アブソリュートは、歴史上初めて、天然の花々のために(バニラやスパイスなどに使用される)超臨界二酸化炭素抽出法(超臨界CO2抽出法)を使用して生み出されたものです。

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超臨界二酸化炭素抽出法(超臨界CO2抽出法)とは

©LOUIS VUITTON

ウード・フレグランスの人気は、20~30年前にヨーロッパで存在した本物の香水に似ているからだと思います。アメリカンな香りやフルーティな香りが好まれ、消滅しかけていたオリエンタルな香水です。つまり伝統への回帰なのです。

ジャック・キャヴァリエ

植物から香りを取り出す方法は大きく分けて三種類に分けられます。

  1. 水蒸気蒸留法
  2. 溶剤抽出法
  3. 超臨界二酸化炭素抽出法(超臨界CO2抽出法)

約9割の植物由来の芳香成分は、水蒸気蒸留法(巨大な蒸し器で蒸す方法)により採られています。その理由は比較的手軽に行えるためです。しかし、100℃に加熱するため熱に弱い芳香成分が失われてしまうため溶剤抽出法が選択される場合があります。

ローズの花から溶剤抽出法で採られるローズアブソリュートは、甘さの強い濃厚な香りを持ちます。一方、水蒸気蒸留法でローズの花から採られるローズオットーは、サラっとエレガントですっきりした香りになります。水蒸気蒸留法の方が溶剤抽出法よりも大量の花びらを使用するため非常に高価となります。

しかし、溶剤抽出法であっても、溶剤を気化させるためにある程度の加熱が必要なため、芳香成分は熱による影響を免れません。そこで熱による変性をほとんど無くす方法として超臨界二酸化炭素抽出法(超臨界CO2抽出法)が使用されます。

超臨界CO2抽出法は、ジンジャーやスパイス、ホップなどの乾燥した素材には最適だったのですが、天然の花に含まれている水分との相性が悪いため、今までこの抽出法が、天然の花の香料を抽出するために使用されたことはありませんでした。

この抽出方法のすごい所は、二酸化炭素が唯一気体でも液体でもない、両方の性質を奇跡的に持つ瞬間となる温度が31℃で、圧力が75バールの状態=超臨界流体の状態を生み出すことにより、芳香成分を抽出する所にあります。

そのため、溶剤由来の不純物も含まず、低温かつ非酸化で処理できるため、芳香成分が最も理想的な状態で抽出されます。

ただし、この抽出法は、冷却と加圧を行う必要があるため装置が大きく、設備投資に莫大なお金がかかるため、精油の価格も高くなってしまいます。

元々は、1963年にクルト・ゾセル(Kurt Zosel)によって、コーヒーからカフェインを抽出するために発明されたものであり、ジャック・キャヴァリエとアルベルト・モリヤスが香料に活用出来ないかを1993年から94年にかけて共同研究しました。

そして、二人はピンクペッパーの精油の二酸化炭素抽出に成功し、モリヤスはエスティ・ローダーの「プレジャーズ」(1995)で使用したのでした。一方、キャヴァリエは、イヴ・サンローランの「オピウム プールオム」(1995)を調香するためにこの装置による香料をはじめて使用しました。

かくして、超臨界二酸化炭素抽出法の装置が、『レ フォンテーヌ パルフュメ』に設置され、最大300バールの圧力をかけて精油を抽出されることになったのでした。フィルメニッヒ社によるこの装置は同じ抽出方法であっても、マン社やロベルテ社のものとは全く違います。

ルイ・ヴィトンはグラース産メイローズとグラース産ジャスミンの精油をこの技術で抽出する独占使用権を獲得しています。つまりこの二つの精油が使用された香りは、「ルイ・ヴィトンでしか使うことが許されない香り」「門外不出の香り」となるのです。

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〝星が輝く砂漠〟が〝バラ色に染まる砂漠〟に変わる時。

©LOUIS VUITTON

このコレクションは、中東のために作られたコレクションではなく、ウードを中心とした香水を愛する文化が成熟している中東の人々に受け入れられる基準で生み出された全世界に向けた香りのコレクションなのです。

つまり、本物の原材料を愛し、品質とブレンドの匠の技を見極める人たちに向けて生み出されているのです。

ジャック・キャヴァリエ

漆黒の闇が砂漠を覆いつくしていくように肌の上にウードが広がっていく中、サフランが星々の煌きの如くスパイシーさを際立たせるようにしてこの香りははじまります。すぐにウードとサフランの中に、大海原のように甘やかなアンバーグリスが注ぎ込まれ、獣が解き放たれます。

かくして〝星が輝く砂漠〟が肌の上に再現されてゆくのです。

すぐに広大な砂漠の上で、幾多のバラの花びらがなおやかに開花していくように、グラース産のローズ・アブソリュートとブルガリア産のローズ・エッセンスが、ふんわりと淡い紅色を、朝焼けのように広がらせてゆきます。

やがて、ローズが中心となり、ウードを静かに翻弄するように、煌びやかな高雅さの中に秘めた獣のような官能性を解き放ってゆきます。そして、伏し目がち、恥じらいの微笑みを感じさせるローズウードがそこに佇むのです。

ちなみにこの香りで使用されているウード・アッサムは、インド北部アッサムが原産のウードです。その中でも最高級のものをジャック・キャヴァリエ自身が数ヶ月かけて探し、ついにバングラデシュにあるウード・アッサム農園を探し出したのでした。この家族経営の農園で、何百年もかけて栽培されたアガーウッドが使用されています(ルイ・ヴィトンが独占契約しています)。

ここに、(肌の上でローズが生き生きと咲き誇るような香り立ちが特徴である)二酸化炭素抽出されたグラース産ローズが、ただ重いのではなく、黒い情欲を掻き立てる繊細なウードと、決してひとつになることなく、〝情熱と冷静のあいだで〟肌の上でお互いの魅力を引き立たせあい、翻弄しあうように香り立つのです。

アニマリックという言葉を突き抜けた、乾いた人肌の上に、淡い紅色の朝の光を輝かせてゆくような、まるで古代に失われた秘宝が肌の上で蘇えるような甘やかなローズウードの余韻に満たされてゆくのです。

ジャック・キャヴァリエは「オンブレ ノマド」との重ね付けを推奨しています。

私自身もこの香りを「オンブレ ノマド」とレイヤリングしてプライベートで愛用しているのですが、中東の女性は、微妙な誘惑の駆け引きが好きなのです。

ひとつの香水を通して語ることが出来ないことを、ふたつの香水によって語ってゆくのです。つまり、中東の女性はレイヤリングの王者であり、幼い頃から自然にそうしてきたのです。

10種類くらいの香水を用意して、朝、気分によってあれこれ香りをレイヤリングしていくという、卓越したテクニックを持っています。こうして、本当にユニークなものに生命を与え、自分たちのシグネチャーを創り出すことができるのです。

ジャック・キャヴァリエ

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香水データ

香水名:レ サーブル ローズ
原名:Les Sables Roses
種類:オード・パルファム
ブランド:ルイ・ヴィトン
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:2019年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/53,900円
公式ホームページ:ルイ・ヴィトン


シングルノート:グラース産メイローズ・アブソリュート、ブルガリア産ローズ・エッセンス、ウード(アガーウッド)、サフラン、ブラックペッパー、アンバーグリス

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