ナイスボディじゃない女性が10倍増しするスタイル
この作品におけるファッション史における偉大なる記録。それは1990年代のバービースタイルの記録です。それは低身長で、スタイルが抜群に良いわけではない女性にとってのバービースタイル=10倍増し美人になるための実践方法としてのアラバマ・スタイルでした。
ファッション誌があまり語りたがらないファッションの真実。それは、ヴィクシーエンジェルのようなスーパーボディの女性がストリート・ファッションに身を包んでいても、生活観が感じられず、ただマネキンが歩いているようにしか見えないという真実です。
それはインスタなどで、そういった連中が、「さぁ私を褒めて~!」と浅ましく投稿している自意識過剰女子(カジョシ)ぶりにも共通しているのですが、「いいね」を100万個集めようとも、それは陳列された見栄えの良いマネキンに過ぎず、すぐに忘れ去られるものなのです。
スタイルを創造するということは、物語性を伝えることなのです。両親はろくでなしで、栄養状態も良くなく低身長で、喫煙者で、人が良くて騙されやすく、幸運から見放され、コールガールにまで身を落としたアラバマ・ウィットマン。彼女は、そんな不幸の中でも、雪のデトロイトでトゥルー・ロマンスを夢見て生きていました。
ファッションとは、恵まれた容姿とステイタスを持つ人々の特権ではないと言うことを、私たちは忘れがちです。その忘却の終着駅が、ラグジュアリー・ストリートだった訳です。10万円も越えるスニーカーなんて自慢げに履くことがファッションなのですか?それはトリプルS級にダサいと私は感じます。
アラバマ・ルック5
ウエスタンルック
- 赤のウエスタンジャケット
- ターコイズブルーのブラトップ、フレデリックス・オブ・ハリウッド
- 水色サングラス、ウェイファーラー
- ホルスタイン柄のタイトハイウエストミニ
- 水色のパテントの太ベルト
- 水色のハートイヤリング
- ブルーのカウボーイブーツ
フーディとミニワンピのコンビネーション
アラバマの最後のファッションこそが、彼女の特筆すべき3つのスタイル(1.カウボーイルック、2.バービー・レギンスルック)の中の完結編です。
キャンディピンクのポルカドットミニワンピースに白のハイヒールサンダル。そして、ターコイズブルーのフーディ・パーカーというストリート・スタイルがとてもアイコニックです。90年代とは、パステルカラーの10年間だったのです。
当時の日本の女子高生たちも、ブリジット・バルドーのようなブラウンヘアー+濃いメイク+長いネイル+ミニスカートに、パステルカラーの小物を手にして街中を闊歩していました。
あの時代、日本には、そういった若者達のストリートが存在したのです。
アラバマとは、90年代に10代~20代を過ごした当時のチョイワルギャル達にとっての、甘酸っぱい思い出の象徴であり、現在の30歳までの女性にとっては、ファストファッションをキュートにアレンジするヒントを教えてくれるヨーダなのです。
若いうちにパステル&キャンディ・カラーを攻略しよう!なぜなら、大人になって、いつまでもそういったカラーに縛られていると、とんでもないことになるからです。
アラバマ・ルック6
ポルカドットワンピ
- ターコイズブルーのフーディ・パーカー
- キャンディピンクの白ポルカドットホルターネックワンピ
- 水色のハートイヤリング
- ボーイフレンド・サングラス
- 白のハイヒールサンダル
アラバマ・ルック7
ビーチルック
- ストローハット
- トロピカル柄のホルターネックシャツ
- アースカラーのサーフパンツ
クエンティン・タランティーノの脚本では、最後にクラレンスが死に、アラバマは未亡人になる予定でした。しかし、監督のトニー・スコットが両者にハッピーエンドを迎えさせる決断をしたのでした(後日タランティーノはハッピーエンドで良かったと回想しています)。
全撮影が終了し、リラックスしているクラレンスとアラバマ
最初にアラバマ役は、ドリュー・バリモアで予定されていました(当時ドリューはスランプからの脱出を図っていたが、スケジュールの都合が合わず)。そして、候補として、ブリジット・フォンダ、ダイアン・レイン、キーラ・セジウィック、ジュリア・ロバーツが候補に挙がっていました。
ドリュー・バリモアは兎も角として、ダイアン・レインが演じるアラバマを見てみたかったです。
作品データ
作品名:トゥルー・ロマンス True Romance (1993)
監督:トニー・スコット
衣装:スーザン・ベッカー
出演者:クリスチャン・スレーター/パトリシア・アークエット/ブラッド・ピット/ゲイリー・オールドマン/デニス・ホッパー/クリストファー・ウォーケン/マイケル・ラパポート
- 【トゥルー・ロマンス】獰猛なファッションだけが生き残る
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.1|バート・レイノルズを愛する女、パトリシア・アークエット
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.2|パトリシア・アークエットの元祖コギャル・ファッション
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.3|ナイスボディじゃない女のためのパトリシア・アークエット
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.4|クリスチャン・スレーターとエルヴィス・プレスリー
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.5|クリスチャン・スレーターとM65フィールドジャケット
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.6|クリスチャン・スレイターとオタク主導型ファッション文化
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.7|ブラッド・ピット=なんの役にも立たない男
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.8|ゲイリー・オールドマンの狂気