究極のフレグランスガイド!各ブランドの聖典ページ一覧にすすむ

【ゲラン】スー ル ヴァン(ジャック・ゲラン)

ゲラン
ゲランジャック・ゲランブランド調香師香りの美学
この記事は約4分で読めます。

スー ル ヴァン

原名:Sous Le Vent
種類:オード・パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:ジャック・ゲラン
発表年:1933年
対象性別:女性
価格:不明

スポンサーリンク

ブラック・ヴィーナスの香り



スー ル ヴァン」とは、フランス語で「風下」の意味ですが、この香りの名は、カリブ海にあるリーワード諸島を意味し、その島々の情景をイメージして生み出された香りです。シプレ・フローラルのこの香りは、1933年にゲランの三代目調香師ジャック・ゲランにより調香されました。

しかし何よりもこの香りが有名な理由は、ジャック・ゲランがこの香りをジョセフィン・ベイカー(1906-1975)のために創ったということからでした。そして、ジョセフィンは、晩年までショーが終わるとこの香りを全身に降り掛けることを習慣にしたのでした。

ジョセフィン・ベイカーという人は、アメリカ・セントルイスの黒人貧民窟で生を受け、13歳でストリートチルドレンになり色々な事をして生きてきたという波乱万丈の生い立ちを持つ黒人女性です。人種差別と戦い、貧困と戦いながらも、スラム街の大道芸人から、パリで公演を行うショーダンサーの地位にまで登り詰めた人でした。

特に1925年10月2日にパリののシャンゼリゼ劇場でチャールストンを披露した瞬間は、同年に開催されたパリのアール・デコ博覧会と共に、1925年を象徴する出来事となりました(ゲランはこの年「シャリマー」を発表した)。そして、彼女は一瞬にして、アーネスト・ヘミングウェイやパブロ・ピカソ、ジャン・コクトー、藤田嗣治などの著名人が賛辞を送るジャズエイジと狂騒の20年代のミューズとして祭り上げられていくのでした。

全裸にビーズネックレスとバナナを腰の周りにぶら下げただけという有名な衣装で踊る姿は、狂騒の20年代に相応しい躍動感とエロティシズムと野性味に溢れており、「ブラック・ヴィーナス」という異名で呼ばれるようになりました。

ジャック・ゲランが、彼女のためにこの香りを調香した1930年代前半のパリにおいてジョセフィンは〝世界一大金持ちの黒人女性〟としてまさに時の人だったのです。

スポンサーリンク

カリブ海で遭難し、小島に流れ着いた女性の香り

©GUERLAIN

この香りは、1930年代当時のフランス人が連想する〝カリブという未開の地〟の浪漫を運んでくれます。それはまず煌くようなベルガモットがタラゴン、バジル、バーベナというハーブ類と衝突する激しいフレッシュアロマティックな風に運ばれてやってきます。

どうやら私は遭難したようです。ガルバナムが更にこのトップノートにグリーンな側面を付け加えてくれます。それはまさに野生のエナジーです。

すぐにオークモスとカーネーションが現れ、香り全体が、温かさに包み込まれていきます。と同時に、南国の花々が次々に咲き始め、フローラルシプレとなります。遭難した私は魅惑のトロピカル・フローラルブーケに包まれ記憶は遠のいていきます。

そこに絶妙なタイミングで現れるパウダリーなアイリスが浮遊感をあたえてくれます。どうやら私は逞しい現地の男性の腕の中にいるようです。

南国の花と緑の香りに、ベチバー、パチョリ、サンダルウッド、ペルーバルサム、ムスクがブレンドされゲルリナーデの渦の中で目覚めた私は、無事フランスの商船に保護されたことを知り、ひと時の南国の遭難を懐かしむのでした。「ああ・・・もっともっと流されたかった・・・

オリジナル・ボトルのデザインは、植民地からフランス本国にラムを運んでくる樽をイメージしたもでした。

この香りは、1970年代に廃盤になりました。そして、2005年に、ゲラン本店のリニューアルを記念し、ジャン=ポール・ゲランによりオード・トワレとして再調香されました。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「友人の棚にあった古いサンプルを嗅いでからというもの、20年間にわたって、私はスー ル ヴァンの再発売を願ってきた。ロベール・ピゲの「フュテュール」に似た濃厚で鋭いグリーンシプレ。千鳥格子のジャケットをうまく着こなし、2色使いの靴をお洒落に履いた女優キャサリン・ヘプバーンを彷彿させるようなフレグランスだった。」

「(再発売された)新しいスー ル ヴァンは、吟味された独特な香調がそれぞれ際立っている。無駄のない、すっきりとしたフレグランスだ。ドライシトラス、グリーンガルバナム、オークモス、ドライウッド、そして意外にもいい味を出しているイランイラン。香りが展開していく中で、イランイランに焦点があったり、はずれたりする。スタイリッシュでゲランお決まりの、妖艶な表現はまったくない。つまるところ、とても端正であると同時に少し退屈でもある。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

スポンサーリンク

香水データ

香水名:スー ル ヴァン
原名:Sous Le Vent
種類:オード・パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:ジャック・ゲラン
発表年:1933年
対象性別:女性
価格:不明



トップノート:ベルガモット、タラゴン、ラベンダー、バジル、バーベナ、マートル、ガルバナム
ミドルノート:カーネーション、ジャスミン、イランイラン、ティアレ、オレンジ・ブロッサム、アイリス
ラストノート:オークモス、ベチバー、パチョリ、サンダルウッド、ペルーバルサム、ムスク

タイトルとURLをコピーしました