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【ディオール】ソヴァージュ オー フォルト(フランソワ・ドゥマシー)

クリスチャン・ディオール
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クリスチャン・ディオール
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ソヴァージュ オー フォルト

原名:Sauvage Eau Forte
種類:パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2024年
対象性別:男性
価格:60ml/18,370円、100ml/25,080円
公式ホームページ:ディオール

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クルジャンと共に「帰ってきたソヴァージュ」

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なぜ新たに「ソヴァージュ」以外のメンズ・フレグランスを加える必要があるのでしょうか?世界でナンバーワンになると、継続しなければならないと思うんです。歌手でも同じです。世界一の売り上げを誇る歌手なら、歌うことを止めない。パフォーマンスを続け、アルバムをリリースし続けます。基本的にフレグランスも同じです。

フランシス・クルジャン(以下すべての引用は彼からのもの)

フランシス・クルジャンディオールの関係は、2021年にディオールの二代目調香師になる10年以上前に、2001年(2001-2002秋冬のパリコレクションから)よりディオール初のメンズ・ライン、ディオール・オムをスタートさせたエディ・スリマンが、ディオール・ラ・コレクシオン・プリヴェの「ボア ダルジャン」、「オー ノワール」、「コロン ブランシュ」の3つのうちのふたつの香りを創造した時からはじまりました。

そして、次のクルジャンとディオールの関係は、2007年に「ディオール オム コロン」によって再開しました。以後、フランソワ・ドゥマシーが専属調香師になり、空白期間が生まれます。

つまりメンズ・フレグランスを入り口として、ディオールのフレグランスを生み出してきたクルジャンが「帰ってきたソヴァージュ」を生み出すことになったのでした。

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オードトワレのようにフレッシュで、パルファンのように力強いフゼア

2015年に発売された「ソヴァージュ」(オード・トワレ版)の名の意味はフランス語で〝野生の、人の手の入っていない〟という意味です。

キャンペーン・モデルとしてジョニー・デップが出演し、発売と同時に、フレグランスをじっくり試して購入することはない世界中の男性のハートを一瞬にして鷲掴みにしました。2019年までに三作品が発売され、これで『ソヴァージュ帝国がメンズ・フレグランスの覇権に立つ物語』は、完結したと思われていました。

そんな中、2024年9月27日に、ディオールの革新的なテクノロジーである〝ナノエマルジョン〟によるアルコールフリー処方により帰ってきたのが、フレグランスとスキンケアの境界線をまたぐ「ソヴァージュ オー フォルト」でした。オードトワレのようにフレッシュで、パルファンのように力強いフゼア〝新しいソヴァージュのカタチ〟です。

それは「ソヴァージュ」に必須だったベルガモットのクラシックな爽やかさを取り除き、代わりに水そのものの特性に頼ることで、その遺伝子を感じさせるが、どの香りとも異なる滑らかでクールなフレッシュさを生み出しています。

※ちなみに市販されているメンズコロンのほとんどは、約70~90%のアルコールを含み、そこに香料が注入されています。

ディオールがもともとスキンケア製品の技術として日本の研究所から取得したナノエマルジョン技術を駆使して生み出した香り。これは特許を取得している、香水業界で初めて作られた全く新しいプロセスです。 水とフラワーオイルを超高圧でブレンドしており、柔らかくまろやかなミストとしてスプレーされ、肌の上に座るのではなく肌に溶け込むという点では、古典的なオードパルファムとは異なる感触を持っています。まず最初に2022年の「ジャドール パルファン ドー」で使用されました。
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ディオールの〝ナノエマルジョン〟によるアルコールフリーの効果

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水もまた、非常に「ソヴァージュ」的な存在になり得ます。ある意味では、そして様々な側面においても、水は非常にワイルドです。湖もその一つです。あるいは、広告に登場する滝もまた、その一つです。確かに過去10年間「ソヴァージュ」は砂漠をテーマにしてきましたが、砂漠にも雨は降ります。そして砂漠における雨の力はさらに強力です。なぜなら、希少なものは貴重だからです。

香水の世界では、アルコールを除去すると、その香水は油と水を混ぜたようなものになります。油と水は全く触れ合うことなく、重なり合います。混ぜ合わせるには、素早く振る必要があります。しかし混ぜるのを止めると、油滴はくっつき、水滴もくっつきます。そして、再び分離が起こります。

そこで、ディオール独自のナノエマルジョン技術が駆使されます。化粧品に用いられる技術を応用したこの技術により、水と香料の成分が混ざり合うのです。唯一の違いは、化粧品添加物が一切入っていないことです。香料と水だけです。

とても興味深いのは、水ベースの「オー フォルト」と、アルコールベースの同じフォーミュラの香りの違いについての比較がとても興味深いです。

水ベースの方は、滑らかでクールに、より丸みのあるフレッシュさが、温かみのある力強いスパイスと滑らかなラベンダーへと溶け込んでゆきます。一方、アルコールベースの香りは、同じノートがシャープでピリッとした、まるで引き締まるような緊張感で鼻を刺激します。

水を飲んだ後の人間の感覚が、アルコールでは得られないのと同じです。水の水彩画のような仕上がりとは違い、アルコールはよりシャープな仕上がりで、少しメタリックなパンチのある仕上がりになります。

花を切るとき、つまり植物の生命力を奪うとき、つまり水を奪うとき、何かが失われます。それは、みずみずしさです。私は、そのみずみずしさ、あの湿り気を捉えようとしたのです。しかし、香りにおいて、湿り気という概念を再び呼び起こすには、通常、比喩的に表現しなければなりません。湿り気、つまり水っぽさを表現するには、みずみずしい果物や花を思い浮かべます。

水には香りはありません。でも、それは感覚なのです。そこで考えたのは、水と生命と露というイメージを表現するために必要な、特別な香りをどうやって手に入れるか、ということでした。結局、答えは水の中に見つかりました。

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水が生み出す最高のパフォーマンスを全身で受け止めていく香り

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スパイスは水により「飽和」することで、フレッシュさとその香りが高められ、予期せぬ方法で展開します。さらに驚くほど力強いエレミと贅沢に合わせられることで、フレッシュさをもたらす激しいバイブレーションが生まれます。

水の力強さを表現するために、レモンやベルガモットといった古典的なシトラスの香りから離れ、冷たさを感じるフレッシュでアロマティックなスパイスを際立たせることで、ソヴァージュの特徴的なフレッシュさを再構築しました。

ディオールの水をベースにしたテクノロジーのサポートにより、型破りな方法で、大自然の中でソヴァージュの美しさを引き出すことができました。心を澄ませるような香りは、かつてないほどフレッシュな雰囲気を醸し出します

〝帰ってきたソヴァージュ〟は、〝水が生み出す最高のパフォーマンスを全身で受け止めていく香り〟です。フランス語で〝強い〟を意味する〝フォルト〟と銘打たれた香りに相応しく、弾けるようなエレミが全身に降りかかるようにしてはじまります。

まさにエレミの持つ、フレッシュなスパイスとクリーミーなレモンの輝きと壮大なる森林の躍動に、カルダモンとペッパーが加えられ、濃密なスパイスの側面とひとまとめになるような贅沢な感覚を受け止めるようです。

とてもパワフルな森と大地の鼓動を全身で感じる、身体の中からエネルギーが漲るはじまりから、香り豊かなラベンダーが、天から降り注ぐ壮大な滝から流れる水のフレッシュさに高められたアロマティックな感覚に満たされてゆきます(あくまでこの香りのインスピレーションの源はオリジナルの「ソヴァージュ」と同じく〝砂漠の水〟です)。

「ソヴァージュ」のストーリーは幾重にも重なっています。まず第一に、鍵となる花としてのラベンダーの物語です。西洋の観点から見ると、ラベンダーは唯一の男性の花です。男性用香水に多く使われ、最も人気のある花です。

「ソヴァージュ」の成功の大きな理由の一つは、ラベンダーがスーツと同じように、象徴的な存在であることだと思います。フォーマルウェアといえば、スーツを着ますよね。つまりラベンダーは象徴的な花であり、象徴的な香水を作るのに役立つという重要な役割を担っているのです。

〝帰ってきたソヴァージュ〟にはアンブロキシドが存在しません。そのため、甘辛いミネラルの感覚は感じられず、水に洗われ、新たな力が漲る、より力強くなる、ソヴァージュとは全く違う世界の香りを身につけているようです。

やがて、スモーキーなフランキンセンスとミルキーなムスクが広がり、とても複雑なハーブとバルサミックな余韻に包み込まれてゆきます。

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香水データ

香水名:ソヴァージュ オー フォルト
原名:Sauvage Eau Forte
種類:パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2024年
対象性別:男性
価格:60ml/18,370円、100ml/25,080円
公式ホームページ:ディオール


トップノート:エレミ、カルダモン、ペッパー
ミドルノート:ラベンダー
ラストノート:ムスク、ウッディノート