90年代のマリリン・モンロー=アラバマ・ウォリー
パトリシア・アークエット(1968-)が演じたアラバマ・ウォリーというキャラクターが90年代以降のファッション・シーンに与えた影響は絶大です。
そのファッションは、1950年代のマリリン・モンロー・テイストと、1980年代のマドンナ・テイストをミックスしたものでした。そして、このスタイルが、1990年代から2000年代に大流行する日本のコギャル・ファッションのはじまりのきっかけの一つとなったのでした。
それは、このスタイルがモデル体型の女性が似合うスタイルではなく、156cmのパトリシアのような日本ではごく平均的な体型の女性が似合うスタイルだったからなのです。
アラバマ・ルック3
カウボーイルック
- ターコイズブルーのブラトップ、フレデリックス・オブ・ハリウッド
- 水色サングラス、ウェイファーラー
- ブルーポルカドットの入ったホワイト・オフショルダーシャツ、バルドートップ
- ホルスタイン柄のタイトハイウエストミニ
- 水色のパテントの太ベルト
- 水色のハートイヤリング
- ブルーのカウボーイブーツ
パトリシア・アークエットのすごさが分かる瞬間。
何よりもネチネチとアラバマをいたぶるジェームズ・ガンドルフィーニ(1961-2013、皆様、ソプラノズをご存知でしょうか?)がリアルに恐ろしいです。こんなイタリアン・マフィアに尋問されたら、男でもびびってしまうことでしょう。
でも、アラバマは違います。
「コークならここにはないわ。ペプシの自動販売機ならあっちにあるけど」なんて言って、健気に夫をかばおうとするのです。
そして、ボコボコにされても、血まみれになりながら、中指を立てるのです。このシーンの迫力は、デニス・ホッパーとクリストファー・ウォーケンのシーンに匹敵する迫力に満ち溢れています。こんなコギャル・チックなチャラチャラしたファッションで、女の強さを演じる事が出来るパトリシア・アークエットという女優の恐ろしさを感じることが出来るシーンです。
この作品は、まさにこのシーンのために存在している作品かもしれません。〝血まみれになりながら、夫への100パーセントの愛を誓う女アラバマ。その時、夫はハンバーガー屋でエルヴィス・プレスリー語りに夢中になっていた〟というこのシーン。
お金があって、ステイタスの高い男に、100パーセントの愛を誓う女なぞ見ていても、何も面白くありません。女という生き物は、どうしようもない男に愛情を注げることが出来てこそ、クールなのかも知れません。
だから、アラバマ・・・あなたはあんなに血だらけになっても、雄叫びをあげながら、ショットガンを振り落としても、ツンと済ましてラグジュアリーブランドで決めた女よりも、遥かにクールでカッコいいのです。
ちなみに、二人の格闘シーンの撮影は、5日間かけて行われました。あのガンドルフィーニが放つセリフ「さぁ、ダディと遊ぼうぜ!」という台詞が妙に脳裏にこびりついて離れません。
アラバマ・ルック4
バービールック
- ターコイズブルーのブラトップ、フレデリックス・オブ・ハリウッド
- 水色サングラス、ウェイファーラー
- 水色のシフォンのオフショルダートップ、バルドートップ、蟹の刺繍
- ピンクのヒョウ柄のレギンス
- 水色のパテントの太ベルト
- 水色のハートイヤリング
- 水色のオープントゥハイヒールパンプス
- ピンクのボックスバッグ
作品データ
作品名:トゥルー・ロマンス True Romance (1993)
監督:トニー・スコット
衣装:スーザン・ベッカー
出演者:クリスチャン・スレーター/パトリシア・アークエット/ブラッド・ピット/ゲイリー・オールドマン/デニス・ホッパー/クリストファー・ウォーケン/マイケル・ラパポート
- 【トゥルー・ロマンス】獰猛なファッションだけが生き残る
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.1|バート・レイノルズを愛する女、パトリシア・アークエット
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.2|パトリシア・アークエットの元祖コギャル・ファッション
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.3|ナイスボディじゃない女のためのパトリシア・アークエット
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.4|クリスチャン・スレーターとエルヴィス・プレスリー
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.5|クリスチャン・スレーターとM65フィールドジャケット
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.6|クリスチャン・スレイターとオタク主導型ファッション文化
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.7|ブラッド・ピット=なんの役にも立たない男
- 『トゥルー・ロマンス』Vol.8|ゲイリー・オールドマンの狂気