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『トゥルー・ロマンス』Vol.2|パトリシア・アークエットの元祖コギャル・ファッション

その他の現代の女優たち
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90年代のマリリン・モンロー=アラバマ・ウィットマン

パトリシア・アークエット(1968-)が演じたアラバマ・ウィットマンというキャラクターが90年代以降のファッション・シーンに与えた影響は絶大です。

そのファッションは、1950年代のマリリン・モンローと、1980年代のマドンナをミックスしたものでした。そして、このスタイルが、1990年代から2000年代に大流行する日本のコギャル・ファッションのはじまりのきっかけの一つとなったのでした。

それは、このスタイルがモデル体型の女性が似合うスタイルではなく、156cmのパトリシアのような日本ではごく平均的な体型の女性が似合うスタイルだったからです。

アラバマの名は、脚本を書いたクエンティン・タランティーノが、『女体拷問鬼看守パム(Women in Cages)』(1971年)で主役を演じたパム・グリアの役名に敬意を表して選びました。

寒いデトロイトから温かいハリウッドに向かう途中の砂漠で、ターコイズカラーのブラ姿で解放感を満喫するアラバマ。

それはまさしく80年代のシンディ・ローパーとマドンナ・スタイルの再現でした。

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寒い土地から、温かい土地に向かい、変身する二人。

アラバマ・ウィットマンと言えばこのカウボーイルックでしょう。

ラスベガスのショップで購入したばかりなので、まだタグがついたままです。ホルスタイン柄のミニスカート。

アラバマとクラレンスがパープルピンクのキャデラックに乗り込み、寒いデトロイトから温かい西部に向かうにつれ、二人の服装はどんどんカラフルになってゆきます。

そして、二人が人生で初めて見る砂漠で、電話ボックスの中ではしゃぎ回ります。衣装デザイナーのスーザン・ベッカー曰くこの電話ボックスのシーンはとても重要で、人生ではじめてのロードトリップを通して、その道中でヴィンテージショップやリサイクルショップに立ち寄り、新しい外見への変身を見せていくのです。

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アラバマ・ウィットマンのファッション3

カウボーイルック
  • ターコイズブルーのブラトップ
  • 水色サングラス、ウェイファーラー
  • ブルーポルカドットのホワイト・オフショルダーバルドートップ
  • ホルスタイン柄のタイトハイウエストミニ
  • 水色のパテントの太ベルト
  • 水色のハートイヤリング
  • ブルーのカウボーイブーツ

そして、ブルーのカウボーイブーツ。15~20年位前まで人気のギャルブランドだったd.i.a.を彷彿とさせます。

このチープなヴィンテージ・サングラスがとてもいい!

この少年が女装したような雰囲気がアラバマの魅力です。ちなみにパトリシア・アークエットは、撮影終了後、監督からこのキャデラックをプレゼントしてもらいました。

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パトリシア・アークエットのすごさが分かる瞬間。

部屋に戻るとヤツが居た!

ジェームズ・ガンドルフィーニ登場!この2人の絡みがサイコーです。

デカハートのイヤリング。このモーテルは、バーバンクに現存するサファリイン。

映画史上ここまでボコボコにされた女性はいただろうか?

何よりもネチネチとアラバマをいたぶるジェームズ・ガンドルフィーニ(1961-2013、皆様『ソプラノズ』をご存知でしょうか?)がリアルに恐ろしいです。こんなスーパーヘビー級イタリアン・マフィアに尋問されたら、男性でもびびってしまうことでしょう。

でも、アラバマは違います。

コークならここにはないわ。ペプシの自動販売機ならあっちにあるけど」なんて言って、健気に夫をかばおうとするのです。

そして、ボコボコにされても、血まみれになりながら、中指を立てるのです。このシーンの迫力は、デニス・ホッパーとクリストファー・ウォーケンのシーンに匹敵する迫力に満ち溢れています。こんなコギャル・チックなチャラチャラしたファッションで、女の強さを演じる事が出来るパトリシア・アークエットという女優の恐ろしさを感じることが出来るシーンです。

この作品は、まさにこのシーンのために存在している作品かもしれません。〝血まみれになりながら、夫への100パーセントの愛を誓う女アラバマ。その時、夫はハンバーガー屋でエルヴィス・プレスリー語りに夢中になっていた〟というこのシーン。

お金があって、ステイタスの高い男に、100パーセントの愛を誓う女なぞ見ていても、何も面白くありません。女という生き物は、どうしようもない男に愛情を注げることが出来てこそ、クールなのかも知れません。

だから、アラバマ・・・あなたはあんなに血だらけになっても、エルヴィスの胸像でマフィアの頭を殴り、雄叫びをあげながら、ショットガンをぶっぱなしても、ツンと済ましてラグジュアリーブランドで決めた女よりも、遥かにクールでカッコいいのです。

ちなみに、二人の格闘シーンの撮影は、5日間かけて行われました。あのガンドルフィーニが放つセリフ「さぁ、ダディと遊ぼうぜ!」という台詞が妙に脳裏にこびりついて離れません。

2014の『6才のボクが、大人になるまで。』でパトリシアは、アカデミー助演女優賞をはじめとするあらゆる賞の助演女優賞を総ざらいしました。
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アラバマ・ウィットマンのファッション4

バービールック
  • ターコイズブルーのブラジャー
  • 水色サングラス、ウェイファーラー
  • ターコイズブルーのシフォンのオフショルダーバルドートップ、蟹の刺繍
  • ピンクのヒョウ柄のレギンス
  • 水色のパテントの太ベルト
  • 水色のハートイヤリング
  • 水色のオープントゥハイヒールパンプス
  • ピンクのボックス型ハンドバッグ
ポイントは、かなり挑発的で妖艶なピンクパンサー柄のレギンス以外は、すべてスカイブルーで統一することにより、キュートなバービーワールド感を出しているところです。2色のネオンカラーのみの潔いスタイリングです。

もうひとつのアラバマ・ルックと言えば、このレギンス・ルックです。ちなみにキャデラックはエルドラド1974年型です。

外に跳ねるショートボブが今見ても新しい。

何気にブルーとピンクでカラーバランスを整えています。

一瞬、ドリュー・バリモアかと思わせるショット。恐らくドリューでもアラバマ役は素晴らしいものになったでしょう。

よく見るとバルドートップには、蟹の刺繍が施されています。

ピンクパンサー柄のレギンスが似合う女になりたい!

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3ドルの衣装のために、1万ドルかける。

ほとんどの衣装がリサイクルショップで調達されました。

衣装デザインを担当したスーザン・ベッカーは、『セント・エルモス・ファイアー』(1985)でブラット・パックが演じた大学生や、『ロストボーイ』(1987)のスタイリッシュな吸血鬼、『赤ちゃんはトップレディがお好き』(1987)のダイアン・キートンのビジネススーツなどを手がけていました。

GUESSの1993年の広告のドリュー・バリモア。

GUESSの1992年の広告のエヴァ・ハーツィゴヴァ

ホルスタイン柄のミニスカートは、スーザンが当時のゲス・ジーンズの広告からインスピレーションを得て手作りし、ヴィンテージショップで購入した赤いウエスタンシャツを組み合わせました。

さらにピンクのヒョウ柄のレギンスも自作し、リサイクルショップで3ドルで手に入れたカニの刺繍が施された透け感のあるターコイズブルーのバルドートップと合わせました。しか想定外なことに監督のトニー・スコットがこのスタイルをとても気に入り、格闘シーンでアラバマに着せることにしました。

そのため大量に同じ衣装が用意されることになり、結局、3ドルで手に入れたバルドートップのコピーをいくつか作るために1万ドルかかることになりました。

さちなみにゲイリー・オールドマンが着ていたレオパルド柄のロングガウンも彼女が手作りしたものでした。

作品データ

作品名:トゥルーロマンス True Romance(1993)
監督:トニー・スコット
衣装:スーザン・ベッカー
出演者:クリスチャン・スレーター/パトリシア・アークエット/ブラッド・ピット/ゲイリー・オールドマン/デニス・ホッパー/クリストファー・ウォーケン/マイケル・ラパポート