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【ブルガリ】オムニア パライバ(アルベルト・モリヤス)

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©BVLGARI
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オムニア パライバ

原名:Omnia Paraiba
種類:オード・トワレ
ブランド:ブルガリ
調香師:アルベルト・モリヤス
発表年:2015年
対象性別:女性
価格:25ml/7,040円、40ml/9,790円、65ml/12,100円

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幻の宝石〝パライバトルマリン〟の香り

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「オムニア パライバ」を作るにあたり、私は実際にブラジルを訪れました。そして、ここでは海・ビーチ・森が切り離すことの出来ない三位一体のものであることを知り、大変驚かされました。

このイメージ・音・香りが混在とする中で、既存のコードにとらわれない〝フィーリング・オブ・ブラジル〟は形作られたのでした。

アルベルト・モリヤス

2015年10月に『オムニア』シリーズ第七弾として発売された「オムニア パライバ」は、「幻の宝石」パライバトルマリンとアマゾンとビーチからインスパイアされた香りとして、アルベルト・モリヤスにより調香されました。

それは、2014年に開催されたブラジルのFIFAワールドカップと、2016年に開催された南米初のオリンピックであるリオ五輪の間に発売された香りでした。つまりは、空前のブラジルブームを反映して生み出された香りでした。

〝明るさだけではないトロピカルな香り〟であるこの香りは、小麦色に日焼けした肌の女性が、パライバトルマリンカラーの海が見えるプライベートヴィラの木陰でゆっくりと寛いでいるような、大人のリラックス感漂うラグジュアリーでエフォートレスな、肌にそっと寄り添うような〝デリケートな南国フルーツ〟の香りです。

ビター・オレンジとカカオとパッション・フルーツが南国の太陽の明るさを、ガーデニアと洋梨とピーチがまろやかさを、そして、天蓋カーテンが風で揺れるようなエアリーでムスキーな香りです。それはまるでそれぞれの絵の具で「オムニア パライバ」という絵画を描いているようです。

キャンペーン・モデルは、「オムニア」シリーズの顔であり、スーパーモデルのエディータ・ヴィルケヴィシュッテでした。マート・アラス&マーカス・ピゴットによって撮影されました。

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世界三大希少石のひとつ・パライバトルマリン




1カラットがとても高価な宝石パライバトルマリン(1カラット、卸価格で2万ドル以上、ダイヤモンドは通常1万5,000ドル、世界一高い宝石レッドダイヤモンドが100万ドル)。日本の鳩間島や波照間島、中国の九寨溝、バハマのキャット・アイランド等で見られる湖や珊瑚礁の海の色=ネオンブルーの輝きを持つ宝石。

かつて地球上に存在する如何なる宝石にも見られなかった、光がほとんどなくても光を放ち輝く発色の良さは、内包された酸化クロムと銅によるものです。本来は拒絶しあうこの2種類の元素が、奇跡的に調和することにより、独特な色合いと発光が生まれるのです。

ブラジル北東部の州パライバ州。

ブラジルのパライバ州バターリャ鉱山にて、ブラジル人探鉱者エイトール・ジマス・バルボーザが行った、執念ともいえる5年半の採掘活動により、1987年、世界初のパライバトルマリンの結晶が掘り出されました。

そして、1989年2月にアメリカで開催された世界最大の天然石の見本市ツーソン・ジェム・ショーにおいて公開されたのでした。当初その価値が不明確だったため、破格の安値(1カラットが数千円)で販売されました。しかし、その美しさと珍しさから話題になり、一躍世界の宝石業界の脚光を浴びたのでした。

1991年以降、採掘権をめぐる裁判によって、10年間採掘活動が行なわれず、原石の供給が止まり、価格は高騰することになりました。2002年初頭から本格的な採掘が再開されましたが、最初の3年間で発見されたような透明度の高い大きな結晶は発見されていません。

産出国は、ブラジル、ナイジェリア(2001年~2005年まで)、モザンビーク(2001年、農夫により偶然発見)の僅か世界の3国(スリランカやアメリカでごく小さな結晶が採掘される)であり、現在は、人気が高い一方で年々入手が困難になっていることから、「幻の宝石」と呼ばれるようになっています。

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大人の女性に捧げられた〝デリケートな南国フルーツ〟の香り

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「オムニア パライバ」を一吹きすると、さぁ、美しいカーニバルの朝がやって来ます。ビター・オレンジの爽快な苦みが、目覚めたばかりのぼんやりした鼻腔に突き刺さるように香りを放ちます。また、ひとつ新しいトロピカルの香りが生まれるのです。

このビター・オレンジは少し不思議です。通常の柑橘っぽさが存在せず、木漏れ日のような温かさと明るさの要素を生み出す役割を果たしています。

すぐに甘酸っぱく、踊るように陽気でフルーティーなパッション・フルーツが、照りつける太陽の下、ジャミーになったビター・オレンジの心の隙間を埋めるように溶け込んでゆきます。そして、本当に食べることが出来そうなパッション・フルーツの香りが解き放たれるのです。

それはまるで、波の音と南国の鳥のさえずりに耳を傾ける女性の肌にそっと触れるような繊細なひと時のようです。ただ底抜けに明るい南国リゾートの開放感ではなく、木漏れ日を浴びながら甘くて心地よい風を感じているようです。

少しルイ・ヴィトンの「クール バタン」のとろけるような洋梨の要素を感じさせます。それでいてムスキーなまろやかさと温かさがあり、それがふんわりとしたピーチを感じさせるのかもしれません。

やがて、パッション・フラワーとガーデニアが、コルコバードの丘で夕陽を背に受け、大きく手を広げるキリスト像を思い出させる、包容力とスケール感のある円やかでクリーミーかつソーピィーなフローラルの香りで柔らかく包み込んでくれます。

この香りの特徴は、南国の香り特有の淡いクリーミーさを、ココナッツによって出すのではなく、フローラルのブレンドで表現しているところにあります。そこにあるのは、南米の人々が持つ、効し難いほどの突き抜けた野性と知性の絶妙なアンバランスなバランスなのです。

どこか、陽気なカリオカが、スーツやドレスを着て、自分の溢れんばかりの野性の魅力を抑え付けているような〝静止する獣の美しさ〟を感じさせます。

そして、「知性を感じさせる夜の大人」のビターなカカオの香りが、オープニングのビターオレンジの名残と共鳴し合い、クリーミーなフローラルに、独特な肌馴染みの良さを生み出していくのです。さらに、そんな艶やかになった肌の上にスモーキーに折り重なるベチバーが、〝肌の乾きと肉体の疼き〟の余韻を残してゆくのです。

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孤高のトロピカル・フレグランスの決定版

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今までのトロピカル系の香り(南国の香り)が連想させる、安っぽいボディソープの香りや、甘ったるい香り、バナナやイランイランのようなココナッツの香り、サルヴァトーレ・フェラガモのインカント・シリーズ、アナスイの(パッションフルーツの)「スイラブ」、エスカーダなどの『明るくて踊り出したくなるような南国のトロピカルな香り』とは一線を画した〝孤高のトロピカル・フレグランスの決定版〟です。

さすがブルガリと言いたくなる『大人の女性のエレガントな南国の趣き』を感じる〝大人のトロピカル〟を表現した香りです。

それは、開放感!明るい!というイメージを抑えて、ムスキーな香りが肌に日差しの余韻だけを感じさせるような香りです。

「オムニア パライバ」は、残念ながら、すぐに廃盤になりました。その理由は、あまりにも短期間でオムニア・シリーズを出しすぎたと言うことと、オムニア・シリーズの若者路線からはあまりにも外れた〝大人の香り〟だったためです。

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香水データ

香水名:オムニア パライバ
原名:Omnia Paraiba
種類:オード・トワレ
ブランド:ブルガリ
調香師:アルベルト・モリヤス
発表年:2015年
対象性別:女性
価格:25ml/7,040円、40ml/9,790円、65ml/12,100円


トップノート:パッションフルーツ、ビターオレンジ
ミドルノート:パッションフラワー、ブラジル産ガーデニア
ラストノート:ベチバー、カカオ