ランスタン ド ゲラン プール オム
原名:L’Instant de Guerlain pour Homme
種類:オード・トワレ
ブランド:ゲラン
調香師:ベアトリス・ピケ
発表年:2004年
対象性別:男性
価格:100ml/17,820円
公式ホームページ:ゲラン
オンナの背後を取るオトコの香り
モーリス・ルーセルがゲランに招かれ、2003年に生み出した香り「ランスタン ド ゲラン」は、フランス語で「ゲランの瞬間」の意味であり、「恋に落ちる瞬間」の香りでした。
発売当時、香りの世界に新たなる香調「クリスタル・アンバー」を生み出した(まるで太陽の光のようにまばゆく輝く香りが、ダブルピラミッドというコンポジションにより生み出された)この香りの男性バージョンとして、2004年に発売されたのが「ランスタン ド ゲラン プール オム」でした。
「ランスタン」の成功により、正式にゲランのクリエイティヴ・ディレクターに就任したシルヴェーヌ・ドゥラクルトは、この香りを男性ではなく女性の調香師であるベアトリス・ピケに委ねました。
何よりも印象的なのが、キャンペーン広告の写真です。通常、恋に落ちる瞬間と言えば、向かい合う男女であるべきなのですが、こちらは、女性の背後を取る男性の構図なのです。どこか不意打ちを連想させる〝恋の手管〟を連想させる写真です。
もしかしたらこの恋は、誰からも祝福されない恋なのかもしれない。だからこそ、この香りから女性はとてつもない包容力を嗅ぎ取るのです。
「冷静と情熱のあいだ」の香り
この香りのテーマは〝冷静と情熱のあいだのコントラスト〟です。ベアトリスは、〝獅子の乳〟という別名を持つ中近東の伝統的な蒸留酒アラックの香りこそ、このテーマを反映させる香りだと感じていました。
ブドウを原料とした蒸留酒に、香辛料のアニスシードを加えて再蒸留したアラックの原液は、本来は無色透明です。しかし、水で割ると一変して白濁になるので〝獅子の乳〟と呼ばれているのです。
このアラックのスゥーっとしたフレッシュスパイシーなアニスの香りが、煌くようなレモンを中心としたベルガモット、グレープフルーツといった柑橘類と絡み合う、スパークリング感溢れるトップノートからこの香りははじまります。
すぐにスパークリング感が落ち着くに従い、ジャスミンとラベンダーがグリーンかつハーバルな側面をアニスに与えていきます。そして、この香りのもうひとりの主役ともいえるココアがパチョリと共にビタースウィートな香りを携えながら登場するのです。
アニスの冷たさとココアの温かさがこの香りの〝冷静と情熱のあいだのコントラスト〟なのです。やがて、ベースのサンダルウッドとムスクがミルキーで仄かに苦いミルクティーのようなドライダウンへと香り全体を導いてくれます。
ボトル・デザインは、ジェローム・ファイアン・デュマによるものです。
ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「ランスタン ド ゲラン プール オム」を「グリーンシトラス」と呼び、「この作品は、欠点を見つけるのがむずかしい。まず、パッケージがため息がでるほど美しい。ようやくゲランが三拍子(特徴、高級感、統一感)そろったものに目を向けた(若干シャネルにインスパイアされているが、誰が気にするだろうか?)」
「次は香りだ。肌にのせると、オリンピックで10mの台からみごとに飛び込む姿を見ているようだ。「シャリマー ライト」風の新鮮な柑橘系から「サムサラ ライト」を思い起こす上品なサンダルウッドに移り、その間に2種類のハーフツイストが組み込まれている。アニスとベチバーだ。肘をきちんと折りたたみ、しぶきがまったく上がらない完璧な演技だ。すぐにスローモーションで再生動画を見たくなる。その場合は布地に吹きかけるといい。すばらしさに驚嘆するはずだ。」
「サミュエル・バーバーの弦楽のためのアダージョのようだ(映画『プラトーン』で流れていた曲)。うまく演奏されている。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:ランスタン ド ゲラン プール オム
原名:L’Instant de Guerlain pour Homme
種類:オード・トワレ
ブランド:ゲラン
調香師:ベアトリス・ピケ
発表年:2004年
対象性別:男性
価格:100ml/17,820円
公式ホームページ:ゲラン
トップノート:レモン、ベルガモット、アニス、グレープフルーツ、ジャスミン
ミドルノート:カカオ、パチョリ、サンダルウッド、ティー、シダー、ラベンダー
ラストノート:ナチュラル・ムスク、ハイビスカス・シード、エレミ樹脂