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『シティ・オブ・ゴッド』2|ブラジルのファベーラというファッションシーン

その他の男優たち
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作品データ

作品名:シティ・オブ・ゴッド Cidade de Deus(2002)
監督:フェルナンド・メイレレス
衣装:ビア・サルガド、イネス・サルガド
出演者:レアンドロ・フィルミノ・ダ・オーラ/ドゥグラス・シゥヴァ/フェリピ・アージンセン

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重要なことは、丹念に準備すること。

デニム・スタイル。通称「囚人デニム」スタイル。

囚人シャツのようなデニムシャツ。

リトル・ゼ・スタイル4
  • オレンジ色のステッチの入った半袖のデニムシャツ

本作は、メイレレス監督にとっても、もう二度と作ることが出来ない環境の中で生み出された奇跡と言えるでしょう。スラム街に住む若者を集めるというかなり危険な試みの中から、一つの作品の形にする作業はとてつもない情熱と行動力を必要とするものです。それは、日本において芝居に素人な芸能人(アイドル)を集めて撮っている作品とは、同じ素人映画というジャンルであっても、目指している次元が果てしなく違います。

本作を見ると、私たちは恐ろしい真実に気づかされます。「こんな怖い現実がブラジルという国にあるんだ」と最初に感じ、さらに「こんな作品は、ブラジルじゃないと作れないよね」という真実に到達します。それは、それだけ創作に対する生命力に彼らが満ち溢れているのであり、私たちの国は、AKBを筆頭にしたストリップ・チルドレンが蔓延り、もはやそんな創作に対する生命力さえも失っていると言う真実なのです。

それは、もはやファッションという分野において、会計士の絶対支配が蔓延り、ただ利益を上げることに躍起になっているラグジュアリー・ブランドにも当て嵌まる感覚です。製造の過程を販売員に伝えないことの唯一無二の事実は、その過程を伝えるといかにこの製品が、ブランドのロゴに頼りきったクズであるかを悟らせてしまうからなのです。象牙の塔で、そのブランドを身につけることの出来ない給与体系で販売員を雇い、それを売らせるラグジュアリー・ブランドの本質にあるのは、失われた生命力であり、内実は、アマチュアの芸能人の集まった映画のごとく、即席で、他のブランドやアーティストとの薄っぺらなコラボに終始する程度のものに成り果てているのです。

生命力が失われるということ。それは何事においても、サイクルが早くなり、計画的になることです。それはこの作品の制作姿勢とは全く逆の姿勢なのです。

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70年代のリオとハンテン。

麻薬中毒になり、最後はリトル・ゼの戦闘員として射殺されるチアーゴ(写真左)。

ベネ(写真右)は、麻薬を買いに来た彼のオシャレさに眼をつける。

ハンテンのシャツを着るチアーゴに大金を与え、オシャレなシャツとスニーカーを購入させる。

若者がボーダーに夢中になった70年代。

チアーゴが買い出ししてくれたハンテンを・・・

大切に着ているベネ。本当にイイ奴なのです。

1960年にアメリカのサンディエゴにて、サーファー青年のデューク・ボイドが、耐久性の強いサーフトランクスの縫製をドリス・ペックに依頼したことがきっかけとなり、創業されたサーフ・ファッション・ブランド〝ハンテン〟。足の裏のロゴは、サーフィンの高難度な技であるHANG TEN(ロングボードの先端に足指10本揃えて波に乗るテクニック)からインスパイアされたものです。

1967年よりライセンス事業が開始され海外展開がスタートし、70年代にはブラジルにおいても大流行しました。

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ベネのティアドロップ・サングラス。

かなり特徴のあるベネのティアドロップのサングラス。

さらに超絶似合っているアフロヘアー。

ただし、頑張りすぎると、ちょっと微妙な時もあります。


〝神の街一のイイやつ〟ベネのファッション・センスも実に魅力的です。特にティアドロップのサングラスが最高にカッコ良く、個性的で、今ではなかなか見つけることの出来ない形であり、人を選ぶデザインです。

そんなベネを演じるフェリピ・アージンセン(1984-)自身も、この作品に出演する前は、本作に出演した兄ジョナタン・アージンセン(カベレイラ役)と共に、〝神の街〟の丘の頂上にあるリビングルームしかない小さな家で母と共に生活していました。食事も睡眠もこの一室で家族全員で過ごしていたとフェリピは回想しています。そして、この作品に出演後、ベッドルームのある家に引越しました。

この作品の熱気は、作られたものではなく、出演者のバックグラウンドにより生み出されたものでした。こういう言い方はかなり語弊があるのかもしれませんが、ひとつの感覚として言うならば、貧困の中のイケメンほど魅力的なものはありません。