作品データ
作品名:8人の女たち Huit Femmes (2002)
監督:フランソワ・オゾン
衣装:パスカリーヌ・シャヴァンヌ
出演者:カトリーヌ・ドヌーヴ/イザベル・ユペール/エマニュエル・ベアール/ファニー・アルダン/ヴィルジニー・ルドワイヤン/リュディヴィーヌ・サニエ
ダニエル・ダリューの素敵な年の重ね方。
振り返ってみると、私の女優としての最高の10年間は、40歳から50歳の間でした。40歳になったときが、女優としての私の転換期でした。
カトリーヌ・ドヌーヴ
人間は必ず年を取ります。そして、必ず死にます。女性にとって(男性にとっても)重要なこと。それはいかに、年を重ねるかということです。この作品の面白さは、あらゆる年齢層の女性が出てくるので、それぞれの年の重ね方が見えてくるところにあります。
何よりもダニエル・ダリューは別格として、カトリーヌ・ドヌーヴとファニー・アルダン、そして、イザベル・ユペールの年の重ね方が美しいです。特にドヌーヴの貫禄。あれほど美しかったドヌーヴが、50代においても美しかったらそれは化け物です。アンチ・エイジングという言葉に踊らされることは、結局は虚しさに支配されるだけであり、より脳内老化を早める要因にも成りかねません。
さて、20代の1才が洗練の1才であるとするならば、40代の1才が老化の1才であることは否定しようもなく、50代の1才はさらに加速する老化なのです。つまり、エイジングに対して抗うよりも、全てを受け入れ、魅力的な年を重ねることが重要なのです。そんな女としての生きる姿勢を教えてくれるのがこの作品なのです。
だからこそ80代のダリューは別格なのです。この人こそフランスの伝説の美男子ジェラール・フィリップを知り、シャルル・ボワイエの最もダンディな季節を知る人なのです。そんなダリューが30~40代を駆け抜けた1950年代(本作の舞台設定)に、80代の女性として映画の中で転生し、女のかわいさ、おそろしさ、そして、おろかさを見せつけてくれるのです。
大人の映画の鉄則。それは若者だけで物語は完結しないこと。
リュディヴィーヌ・サニエ・ルック1 パジャマゲーム
- サックスカラーのパジャマ、ラウンドカラー、大きめのポケット2つ、7分丈のパンツ
この作品の最大の魅力は、年齢がまったく違う8人の女たちそれぞれのファッションが交錯する所にあります。同年代の若者が集まる物語に、漬物程度に添えられた脇役→中高年の物語の方が、スピード感があって面白いというその感性は、一言で言えば、〝スピード感たっぷりに忘れ去る〟日々を生きている証拠とも言えるでしょう。
立ち止まってゆっくりと考えることの大切さは、若い季節に、いかに多くの年上の男女と交流したかによって生まれます。深みのない上っ面だけ整えられたAKB的なスピード感とは真逆の魅力をこの作品から感じることが出来るのは、あらゆる年齢層の女性が作品の中で生き生きとしているからなのです。
シェイラの「パパは流行おくれ」
ミュージック・ビデオ的なものよりも、女優が歌い踊るシーンは長回しで映した方が心に響く。
フランソワ・オゾン
唐突に始まるダンス。そして、最も踊りが似合わなさそうな女優カトリーヌ・ドヌーヴまでが踊りだすのです!曲は、1963年のシェイラのヒット曲「パパは流行おくれ」。
パジャマ・スタイルのリュディヴィーヌ・サニエ(1979-)がとても愛らしいです。当初、リュディヴィーヌはオーディションに落ち、ヴァイナ・ジョカンテが出演予定でした(妊娠のため降板)。その経緯に対してオゾンがさらりと言うコメントがとてもカッコ良いです。「君は、一度オーディションで落ちている。そのことによって、君は強くなり役柄をつかんだ」。