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その他の男優たち

『シティ オブ ゴッド』Vol.3|「こんなシーンに意味があるのか?胸糞悪い」

その他の男優たち
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「こんなシーンに意味があるのか?胸糞悪い」

「手か?足か?どっちが撃たれたい?」と年端もゆかない少年に恐怖の選択を強要し、「ステーキ。どっちか一人撃ち殺せ」と仲間の少年にも悪魔に魂を売る選択を強要する。

そして、足を撃たれて泣きながら逃げる少年に「足をひきずるな!」と言い放つ鬼畜な青年リトル・ゼ。リトル・ゼを演じたレアンドロ・フィルミノ・ダ・オーラは、このシーンの撮影にあたり、「こんなシーンに意味があるのか?胸糞悪い」と異議を唱えました。

しかし、このシーンがあるからこそ『シティ オブ ゴッド』は神話となったのです。他の国の映画では絶対に出来ない描写。子供が殺されるシーンが続出する映画。

こういう風に記載するとどうしようもない作品だと思うかもしれませんが、犯罪とテロと戦争の低年齢化は現実の問題なのです。

「早く殺さねェ~と、日が暮れるぞ」と少年にはじめての殺しを強要するリトル・ゼ。

あまりにもリアルすぎる少年(当時7歳だった)の泣きの芝居。

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リトル・ゼ スタイル5

リトル・ゼの最強ファッション=サイケ・シャツ
  • サイケデリック柄の半袖シャツ
  • 赤の短パン
  • 金のネックレス

短パンにビーチサンダルをはいた少年ギャングたち。

リトル・ゼのすべてを一枚に集約した最も有名な写真。

トレンチコートのようにカッコよくひるがえるシャツ。

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『シティ オブ ゴッド』のその後。

コマンド・ベルメーリョとは<赤いコマンド>という意味です。そして、彼らの最も重要なカラーは赤です。

短パンにビーチサンダル。最も高価な持ち物は拳銃です。

ファヴェーラでは、常にドラッグパーティーが行われ、少年たちを運び屋としてスカウトしています。

今では拳銃ではなく、戦争で使う規模の銃器を所持しています。

2024年現在のリオデジャネイロは、ワールドカップ、オリンピックを最低な経済状態の中で強行したツケを払うかのように、経済の悪化と犯罪の増加を招いています。3人に1人が、身内を殺害された経験を持ち、2016年以降、ブラジル全土において、犯罪率は鰻上りに上がっています。

ブラジル第二の犯罪組織コマンド・ベルメーリョを結成する三人のモデルは、リトル・ゼを殺害したガキ軍団です。純粋悪の世代交代は行われてゆき修羅の国は、益々悪の低年齢化と生存競争の激しさに包まれているのです。

上の写真は、本物のファヴェーラのギャングのファッションです。

ブラジル・リオのギャングたちが写真に納まるときは、皆、Tシャツやスカーフ、キャップで、顔を覆っています。これは組織的なルールによるものであり、構成員は顔出しを禁じられているのです。そして、顔を出せないということ自体が彼らの中でのステータスであり、ポーズなのです。そういう意味においては、彼らが写真に撮られている姿は、ある種の様式美を兼ね備えています。

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リトル・ゼ スタイル6

カーキシャツ
  • 光沢のあるカーキ色のドレスシャツ
  • インディゴブルーのデニムジーンズ

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リトル・ゼ スタイル7

ジャージ
  • 2ライン入りのジャージ

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リトル・ゼ スタイル8

黄土色のシャツ
  • 肩にカラシ色と白のラインの入った黄土色の長袖Tシャツ
  • インディゴブルーのデニムジーンズ

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リトル・ゼ スタイル9

アフリカン・シャツ
  • アフリカン・パターンの半袖ボタンダウンシャツ
  • ダークネイビーの短パン

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最後に本物の登場人物たち

本物のリトル・ゼ

リトル・ダイス時代の本物の写真

本物のベネ

本物のマネ

逮捕時のニュースペーパー。左にアイウトン・バタータと右にリトル・ゼ。

エンドクレジットに、本当のリトル・ダイスとリトル・ゼとベネの写真とマネの動画が登場します。これが本作の最後を引き締める役割を見事に果たしています。

実物のセヌーラ(人参)は、白人ではなく黒人でバタータ(じゃがいも)と呼ばれていました。実際に、リトル・ゼはベネと共に、麻薬ディーラー達を裏切って虐殺し(誰もが友人だったので、誰も彼がそんなことをするとは思っていなかった)、シマを乗っ取り、最後にアイウトン・バタータ(1958-)との戦争に突入しました。

そして、1978年から4年間続いた“神の街”戦争は、1000人以上の死者を出す壮絶な戦争になり、結果的にリトル・ゼは逮捕され、賄賂で釈放された後、のちのコマンド・ベルメーリョの創設者たちに殺害されました。

一方、バタータも首、頭、腕、胸を撃たれながらも生きながらえ、タクシー運転手として、逃亡生活を送っていましたが、1989年12月に捕まり36年の刑を宣告され、15年後に保釈されたのでした。その時、彼だけがこの戦争の生き残りでした。

彼は2017年のインタビューで『シティ オブ ゴッド』について、現実とは全く違う映画だと答えています。実際は、それほど子供は巻き込まれず、ギャングたちは、金が沢山有ったので、きちんとした身なりをしていて、ビーチサンダルやショートパンツを履いて強盗に出かけたりはしなかったと答えています。

ブラジル映画史上、世界中の市場に最も流通し、空前の興行売上を上げたこの作品が、世界に与えたインパクトは、21世紀のブラジル・イメージの三大インパクトの一つとなりました。

一つ目は、サッカー
二つ目は、ジゼル・ブンチェンをはじめとするスーパーモデル
そして、三つ目が、危険なファヴェーラ

危険な果実を含む国だからこそ、人々はこのブラジルという国にますます惹きつけられるのです。かつて、1960年代から70年代の高倉健の犯罪映画で「ブラジルに移住する」という夢が何度も語られたように、日本人にとってのブラジルは、真裏にあるシャングリ・ラのような国であり、だからこそ、なぜか深い憧憬と親しみを感じるのです。

本作は、2002年に製作されたにも関わらず今もなお、昨日作られたかのような輝きに満ち溢れています。その理由は、私たちはファヴェーラというものに対して嫌悪を抱きながらも惹きつけられる、今の日本人が失っている、たくさんの新しい感情が湧きあがるからなのかもしれません。

それはブラジル人モデルをファッション・モデルとして使いたがるハイブランドと同じ感覚とも言えます。私たちは、自分のテイストの中に、明らかに、生命力と躍動感とちょっぴり非人道性を求めている、それはつまり、ファッションも人生も、綺麗な水では生きていけない魚と同じということなのです。

作品データ

作品名:シティ・オブ・ゴッド Cidade de Deus(2002)
監督:フェルナンド・メイレレス、カティア・ルンド
衣装:ビア・サルガド、イネス・サルガド
出演者:レアンドロ・フィルミノ・ダ・オーラ/ドゥグラス・シゥヴァ/フィリップ・アージェンセン