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エマニュエル・ベアール/ヴィルジニー・ルドワイヤン 『8人の女たち』1(3ページ)

その他の現代の女優たち
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作品データ

作品名:8人の女たち Huit Femmes (2002)
監督:フランソワ・オゾン
衣装:パスカリーヌ・シャヴァンヌ
出演者:カトリーヌ・ドヌーヴ/イザベル・ユペール/エマニュエル・ベアール/ファニー・アルダン/ヴィルジニー・ルドワイヤン/リュディヴィーヌ・サニエ

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「女性が最も美しかった時代は1950年代です」F.オゾン

フランスを代表する女優であるカトリーヌ・ドヌーヴ。そして、圧倒的に美味しい役柄のエマニュエル・ベアール。

21世紀のフランス映画の中で、最もファッション感度の高いもの(=ファッションに関わる仕事に従事する人々の感性を高める作品)を上げよと言われたならば、間違いなく筆頭に上がるのがフランソワ・オゾンの『8人の女たち』です。

「フランスの女性が最も美しかった時代と私が考える1950年代に舞台を設定した」というフランソワ・オゾン監督が、2002年当時最も魅力的なフレンチ・アイコンともいえるフランス人女優8人を召喚したのでした。何よりも、カトリーヌ・ドヌーヴ(1943-)、そして、もう一人カトリーヌ・ドヌーヴ、更にカトリーヌ・・・。彼女の存在があればこそ成立し得た作品であることは間違いありません。

そこに、かつて、フランソワ・トリュフォーという二人が愛した映画監督に対する愛憎劇により、決してカトリーヌが共演しなかったファニー・アルダン(1949-)が現れ、さらにイザベル・ユペール(1953-)というフランス映画界究極の演技マシーンが現われたのでした。そんな濃すぎる3人の存在感に対して、爽やかな空気を運んでくれるのが、21世紀のフランス映画界のみならずフレンチ・モード界をも引っ張っていくであろうリュディヴィーヌ・サニエ(1979-)とヴィルジニー・ルドワイヤン(1976-)の御二人でした。

しかし、何よりもこの作品において、圧倒的な存在感を示したのは、オートクチュール・メイド服姿で、当時の秋葉原の子供だましなメイド文化をあざ笑ったエマニュエル・ベアール(1963-)だったのです。それはまさに、京都の町で、ペラペラの着物を着て、歩く外国人観光客の前に、颯爽と現われる祇園の女のようでした。「これがホンモノ。そして、ホンモノの女の魅力は、二次元では収まりきらないもの」というメッセージに包まれていました。

「男優8人が、女装して演じることも考えていた」というオゾンだけあって、そのセンスは、ファッションもカラフルならば、インテリアも見事なまでにカラフルであり、総天然色が人々の心の太陽だった1950年代の色彩感覚の魔法を、21世紀に生きる私たちに教えてくれるものでした。

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オードリー・ヘプバーンのようなヴィルジニー・ルドワイヤン

オープニングに、ヴィルジニー・ルドワイヤンの素晴らしいコートとベレー帽が登場する。

ヴィルジニーは、意識してスカートのドレープを誇示した動きを終始見せてくれます。

そして、ダニエル・ダリューが登場します。

シャネル役のフィルミーヌ・リシャールは、レストランで働いている所をスカウトされ、40歳で女優デビューした変わり種。

まず最初に登場するヴィルジニー・ルドワイヤンのファッションが実に魅力的です。そして、この作品の成功は、1947年のクリスチャン・ディオールのニュールックに、現代的な要素を組み込んだジョン・ガリアーノによるディオール・ファッションをヴィルジニーが見事に着こなした瞬間に確約されたのでした。

現代において、一歩間違えば、安っぽさの象徴、もしくは自己満足の権化になりえるのがオールピンク・スタイルですが、ここではオールピンクが、ヴィルジニーの颯爽とした若々しさを祝福する役割を見事に果たしています。

1950年代のファッションにおいて、ディオールのニュールックというのは、私はファッションの中でも一番女性を美しく見せる。特に女性の身体を美しく見せるものだったと思うんです。

フランソワ・オゾン

彼女をはじめとする本作の8人の登場人物のスタイルは、1950年代のハリウッド女優のスタイルをそれぞれ当てはめていったものです。そのことは、結局のところ、1950年代に、ファッション・シーンの主導権は、パリからハリウッドへと移行していったことを教えてくれます。

さて、ヴィルジニーのスタイルは、『麗しのサブリナ』(1954)においてパリに行き洗練される前のオードリー・ヘプバーン。もしくは、『戦争と平和』(1956)のオードリー・ヘプバーンのようでもあります。その外見的なイメージに、『パリの恋人』でモード化していくオードリーのイメージが重ねられています。