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『007/ドクター・ノオ』Vol.5|ユーニス・ゲイソンとゼナ・マーシャル

ボンド ガール
ボンド ガール
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忘れ去られていた二人の初代ボンドガール

本作と次作『007/ロシアより愛をこめて』(1963)において連続出演を果たすことになるユーニス・ゲイソン(1928-2018)。彼女の娘のケイト・ゲイソンも『ゴールデン・アイ』(1995)にエキストラ出演しました。

当初ユーニスが、マネーペニー役で、ロイス・マクスウェルがボンドの恋人シルヴィア・トレンチを演じる予定でした(ちなみにイアン・フレミングの原作には彼女は登場しない)。しかし、監督のテレンス・ヤングは、ユーニスを見るとセックスの匂いがするのに対し、ロイスは石鹸の匂いがすると言い、配役を入れ替えることになりました。

ユーニスは、次作にも登場し、以後レギュラー出演のプランもあったのですが、実現しませんでした(6作目で結婚する予定でした)。

元々はオペラ歌手になるための訓練を受けていた人なので、イブニングドレス姿にまったく違和感がありません。ボンド初登場のカジノシーンのドレスとしてブラウンとゴールドのものが用意されていました。しかし、カジノの背景にうもれるため、撮影当日、急遽近くの毛糸屋に掛かっていたサイズ20(ユーニスはサイズ8)の真紅のドレスを20ポンドで買い、裁断し、洗濯バサミで後ろをはさんだ状態でユーニスが着ることとなりました。

そのためすべてのシーンは右側だけ撮影されることになりました。ユーニスは、撮影当時、ブロードウェイ・ミュージカルの『サウンド・オブ・ミュージック』の英国上演(1961年から67年にかけて2,385回上演された)に、エルザ・シュレーダー役で出演していました。

3人のボンドガールに囲まれるショーン・コネリー。左からユーニス・ゲイソンとゼナ・マーシャル、ウルスラ・アンドレス。

このドレスが伝説の洗濯バサミドレス。

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ボンドガールのファッション3

レッドドレス
  • ボンドガール:ユーニス・ゲイソン
  • 真紅の古代ギリシア風ドレープドレス。ワンショルダー。肩にメドゥーサのようなブローチ
  • 金のクラッチバッグ
  • ブラウンの毛皮のコート
  • 金のハイヒールパンプス

真紅が似合うオリエンタルな雰囲気の英国美女です。

ブラウンの毛皮のコート。

ドレスとファーとクラッチの似合う女性でありたい。

ドレスのバックシルエット。

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ボンドガールのファッション4

ボーイフレンド・シャツ
  • ボンドガール:ユーニス・ゲイソン
  • メンズのパジャマシャツ
  • 金のボウ付きハイヒールパンプス

シリーズを通してボンドガールを象徴する有名なシーン。

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男物のシャツを着てパターする美女の図


ボンドムービーがファッション業界に与えた影響として、忘れてはならないのが、女性蔑視とも指摘されかねない女性の役割をスタイリッシュに描いたところにあります。その姿勢が、80年代~90年代にかけて、進歩的な女性の目を背けさせ、ボンドムービーを過小評価させるきっかけとなりました。

しかし、21世紀に入り、ストリッパーのようなパフォーマンスを行うポップスター達の映像とイメージが氾濫するようになり、ボンドガールの影響がいかに強かったかということを思い知らされるようになりました。かくしてボンドガールは、女性にとっての、ある一面のファッション・アイコンへと復権したのでした。

その典型的イメージが、メンズシャツ(現実には、ホテルのメンズパジャマのトップス)を着て、ピンヒールを履き、生足を見せ、パターゴルフをして、男を待つ美女です。

パターゴルフのホールの役割を果たすのは、ドアを開けた男性なのです。さぁ、ボールは放たれた。その瞬間、ユーニス・ゲイソンは、その名を失い、60年代を象徴するセックスアピール満点の女性のアイコンとなり、男性のセックスシンボル、さらに言うなら、このシーンでパットゴルフをしていたのは、ウルスラ・アンドレスと記憶違いされるほどの強烈な印象を与えることになりました。

今では男物のシャツ=ボーイフレンドルックは、最強にカッコいいスタイルとして、永遠のスタンダードになっています。

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元祖魔性の女・ゼナ・マーシャル

中国美女ミス・タロのチャイナドレス姿が素晴らしい。

ケニア・ナイロビ生まれのフランス系英国美人。

実際の彼女。

徳川家康ではありませんが、結局は、長く続けるということが、勝利への道なのです。007もその好例です。

もし、ブルース・リーの『燃えよドラゴン』が、ブルースが生きていて、『ドラゴンシリーズ』になっていたならば、これはこれですごかったはずです。4代目ドラゴンがドニー・イェンだったりするはずです。継続は力であり、その継続力によって、過去のボンドガールもリスペクトされることになるのでした。

西欧人とチャイナドレス。シャーリー・マクレーンの蝶々さんではありませんが、異文化の交流は、まずは内面より外見から始まります。そして、その文化は、独自の感性で、オリジナルと全く違った輝きを発光する瞬間があります。

ウルスラのチャイナ服と、ゼナのチャイナドレス。異文化の交流に失敗したファッションと成功したファッションの例として非常に興味深いです。

それにしてもこの三人目の初代ボンドガール・ゼナ・マーシャル(1926-2009)。ミス・タロという中国系美女の役柄でしたが、本当は、全くアジアの血は入っていないケニア・ナイロビ生まれのフランス系イギリス人です。

王立演劇学校で学んだ本格派で、その演技力をユーゴスラビアのアレクサンダル王子や、アルゼンチンのペロン大統領などの、セレブとの浮名を流すところに使用した元祖魔性の女でした。

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ボンドガールのファッション5

秘書ルック
  • ボンドガール:ゼナ・マーシャル
  • クリーム色のシルクのブラウス
  • クリーム色のペンシルスカート
  • 茶色のレザーベルト
  • 白のハイヒールサンダル



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ボンドガールのファッション6

シルクのペニョワール
  • ボンドガール:ゼナ・マーシャル
  • アイボリーのシルクのペニョワール
  • ゴールドのヒールミュール

このファム・ファタールな存在感が、ボンドムービーの全体像に与えた影響は計り知れません。ある意味、彼女の存在はウルスラ・アンドレスを凌駕するポテンシャルを秘めていました。

ケン・アダムのプロダクション・デザインもまた素晴らしい。

ボンドガールにはベッドで横たわる姿がとても似合う。

チャイナドレス風シルクのナイトガウン。

かなり不思議なムードがある、魔性の人です。

素晴らしいシルクガウンです。

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まさにボンドガールのアイコニック・ショット。ボンドを色仕掛けで騙すダブルスパイの図。

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ボンドガールのファッション7

チャイナドレス
  • ボンドガール:ゼナ・マーシャル
  • 水色のチャイナドレス

チャイナ・ドレスが似合う黒髪美女。

世界中が東洋の神秘に惹きつけられた60年代。

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007のさくら<フロム・男はつらいよ>

マネーペニーを忘れてはならぬ。彼女こそ007の<さくら>なのです。そして、彼女の衣装は予算がなかったので自前でした。

そして、最後に、マネーペニーの誕生をしるしておきましょう。007の母とも言えるマネーペニー。その役柄は、ボンドの上司であるMの秘書であり、女ったらしのボンドが唯一寝ない女性であり、親友。

演じるのはロイス・マックスウェル(1927-2007)。いかにもイギリスの美人お母さんタイプの女優さんです。セクシーな女性だけでなく、こういう知的なお母さんタイプ=マギー・スミス・タイプの女優も出演しているのが、007シリーズの侮れないとこです。

まさにジェームズ・ボンドにとっての、さくら(「男はつらいよ」の寅さんの妹)であり、一種の清涼剤である彼女の普遍の存在感は、ボンドが変わろうとも、いつもそこにいてくれる安心感にありました。そう!女性の最大の美徳とは何か?それは、「清涼感」なのです。グラマラスもいいけど、それだけじゃ男性は疲労するということを常に思い起こさせてくれる人。それがロイス・マックスウェルなのです。

作品データ

作品名:007/ドクター・ノオ Dr. No (1962)
監督:テレンス・ヤング
衣装:テッサ・プレンダー ガスト
出演者:ショーン・コネリー/ウルスラ・アンドレス/ジョセフ・ワイズマン/ユーニス・ゲイソン