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『花と嵐とギャング』1 日本の美14(3ページ)

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作品名:花と嵐とギャング (1961)
監督:石井輝男
出演者:高倉健/鶴田浩二/小宮光江/新井茂子/江原真二郎/曾根晴美

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ボクたちは、こんな高倉健が見たかったんだ!


男は黙って背中で語るという寡黙なスタイルで、日本の男性にとって〝永遠のスタイル・アイコン〟となった高倉健(1931-2014)という映画スター。彼が最も光り輝いた作品は何だろうか?と考えたとき、それは間違いなく1976年に東映を辞め、フリーになった後の『幸福の黄色いハンカチ』(1977)『八甲田山』(1977)『冬の華』(1978)『野性の証明』(1978)『駅 STATION』(1981)『南極物語』(1983)『ブラックレイン』(1989)といった作品群だろう。しかし、そんな健さんの姿からは想像もつかないほどに、〝へらへら笑い〟〝女房の尻にひかれ〟〝どもる〟という実際に見るまではイメージすらわかない衝撃的な健さんの姿がこの作品には存在します。

まさに『仁義なき戦い』シリーズ(1973~1974)を見た後に、『トラック野郎』シリーズ(1975~1979)の菅原文太を見るようなインパクト、もしくは『男はつらいよ』シリーズ(1969~1995)を見た後に、『喜劇列車』シリーズ(1967~1968)の渥美清を見るが如く新鮮なのです。

しかし、「花と嵐とギャング」の魅力は、そんな健さんが見れるだけではありません。その脇役の全てに至るまで、見事なまでに〝愛すべきバカ〟であり、今までに存在しなかったスマートで欧米的な日本映画のムードを創造する一翼を担っていると言う点でした。そして、この作品は石井輝男(1924-2005)という後に高倉健と共に『網走番外地』(1965)を生み出す〝高倉健を創造した男〟が、倒産した新東宝から東映に移籍して第一作目として撮影した作品でした。

この作品には、1961年の東京オリンピック前夜に、恥もてらいもない欧米に対する純粋な憧れが反映された、泥臭いジャパニーズ・スタイルを排除した、スマートな和洋折衷が存在します。

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登場人物全員が愛すべきバカ

鶴田浩二と高倉健。そして、小宮光江。小宮に腕をつねられ、腹パンチされる健さん。でもヘラヘラして平謝りする情けないその姿が斬新過ぎる!

そして、「さあ、なにぼやぼやしてんの、こっちにいらっしゃい?」と女房に甘えられ、またまたニヤニヤする健さん。

結婚(1959年)したてのころ、生まれてはじめて買った新車、ベンツの230SLが届いたとき、ぼく待ってられずに保税倉庫まで行って見せてもらいました。まだサビ止めのグリスがついた状態だった。これがドイツからおれのために送られてきたのかと思ったら、思わず足が震えましたね。やっと自宅に届いた夜、当時住んでいた世田谷の等々力の街角であいつ(江利チエミ)と待ち合わせして、夜中の一時ごろでしたか、乗せて走ったんです。そしたら、途中でおろしてくれって言うんです。あなたが走ってるところを見たいから、って。で、ぼくがやつの目の前を行ったり来たり走るんです。そしたらあいつが拍手してくれるんですよ。かっこいいよ!って。可愛いなあと思いました。この女のためなら、なんでもできるなあと。

高倉健インタビューズ 野地秩嘉

高倉健は、スマイリー健という名前で登場します。とにかく妻には頭の上がらない男で、甘えられるとすぐにヘラヘラする名前通りの〝愛すべきバカ〟キャラです。しかし、一方で日本人離れしたモダンなファッション・センスも披露しています。スマイリー健の魅力は、上記の文章からも伺えるように、どこか等身大の高倉健をイメージさせるところにあると言えます。

それにしても登場人物全員が濃いメンツです。まずは迫力満点のゴッドマザー・清川虹子(1912-2002)を頂点に、その長男で、スーツが似合う東京ジョーこと鶴田浩二(1924-1987)、その妹で、着物もドレスも似合うスタイル抜群な小宮光江とその夫スマイリー健、そして、三男に小川守(当時期待されていた東映の新人)とその恋人で〝愛すべきバカ娘〟新井茂子です。更にその仲間として、ツンパ(パンツのこと)やら楽隊=江原真二郎(1936-)、ウイスパー=曾根晴美(1937-2016)という名のギャングたちが登場します。

そして、鶴田浩二がいる安定感。東映ギャング・モード

小宮の派手なペイズリー柄のデコルテドレスが、そのアップスタイルとマッチし、60年代モダンガールの魅力を発散させています。

歴代映画俳優の中で、丹波哲郎と並びスーツの着こなしが上手かった鶴田浩二。

衣装合わせのときからもう日活のポスターをパーッと貼ったんですね。たしか石原裕次郎のポスターかなんか。ともかくズボンの太さはこれと、そこからやらないとだめなんですよ。なんか、ニッカーポッカーでね、ねじり鉢巻きみたいな感じなんですね。だから、衣装もないんですね。それはだめだって感じで、全部そこからやんなきゃだめだったんですよ。だから相当抵抗感が東映の方にあったんじゃないでしょうか。

石井輝男

東京ジョーのスーツ姿がとても格好良く、この作品がギャング映画として成立しているのは、鶴田浩二のこの佇まいによる部分が大きいです。それまでの東映映画のスーツはラペルが太かったのに対して、細めのノッチドラペルのスーツに細めのレジメンタルタイがとても似合っています。以後シリーズ化されるギャング・シリーズの醍醐味は鶴田浩二のスーツの格好良さでした。

そして、そんなスーツを着るギャング達の背景に流れる音楽がとても良いです。日本映画において極めて稀なのですが、ジャズと映像が絶妙にマッチしています。ジャズ・ピアニストでもあり作曲家の三保敬太郎によるものです。この人は、11PMのタイトル曲でも有名なのですが、私的には、白黒バージョンの『おそ松くん』の妙にオシャレな音楽のほうが印象に残っています。この音楽があったからこそ、この作品はオシャレ・ムービーに格上げされたと言えます。

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