なぜ、ブラッド・ピットは衣装に着られている感がないのか?
ブラッド・ピット扮するタイラー・ダーデンのサイズ感(ジャケットの着丈、袖丈、シャツインするかしないか、パンツの裾丈、動きに伴う素材の揺れ具合)を見てください。
本作の全ての衣装をブラッドは見事に着こなしています。彼の映画に対するプロ意識の高さは有名で、撮影に入る前から、使用する衣装をプライベートにおいても着て、自分に溶け込ませて役作りするタイプの俳優です。
だからこそ、どの衣装も、その場で、そのシーンのために着ている感が全くないのです。それがファッションに全く興味のない男子でさえも、そのスタイルを真似したいと思わせる〝説得力〟を生み出しているのです。
そして、男性にとってファッションとは、自身の肉体の管理も重要だということを教えてくれます。この作品の影響は今も根強く、ブラッドのような肉体になりたいと肉体改造に励み鏡を愛する〝ミラーマン〟達を多く輩出しています。それはブルース・リー以来の影響力ともいえます。

すべての仕草が、キザの極みであるタイラー・ダーデン。
タイラー・ダーデンのファッション4
アイコニック・レザージャケットPART2
- ラストレッド(錆赤)のシングルレザージャケット
- モトクロス・シャツ
- ウェスト・ポイント(陸軍士官学校)風カデット・パンツ
- グッチのビット・ローファー
タイラー・ダーデンを象徴するこの赤いレザージャケットは、「乾いた血のような色合い」と、これから起こる暴力を視覚的に予感させるために、意図的に劣化させました。
彼はお金を持たない人なので、すべて古着屋で服を買っているという設定です。しかし、非常に目の肥えた人であることも観客に分かってもらうように考えました。
マイケル・カプラン

モトクロスのイラストがプリントされたシャツ。

この写真では、ホッジマンのレイクストリーム・ウェーディング・ブーツを履いています。

マイケル・カプランのデザイン画。

このブラッド・ピットのヘアスタイルも当時大流行しました。

シャツの絵柄がよく分かる写真。

ほんの一瞬だけ着ている〝ミツバチシャツ〟。Eat Your Honeyとプリントされています。
タイラー・ダーデンのサブリミナル効果
「僕」がタイラー・ダーデンと出会う前に、4つのシーンにおいて、サブリミナル効果でタイラー・ダーデンは現れています。
タイラー・ダーデンのファッション5
アイコニック・レザージャケットPART3
- ラストレッド(錆赤)のシングルレザージャケット
- 紫×ピンク×グレイのシルク・ボタンアップシャツ、ウエスト丈
- ウェスト・ポイント(陸軍士官学校)風カデット・パンツ
- グッチのビット・ローファー
- オリバー・ピープルズのOP-523

このサングラスが似合う人はなかなかいないはず。

とても素敵なラストレッドのレザージャケット。

ブラッド・ピットにしか似合わないアンサンブルです。

撮影の合間に来ているこの黒のトップスがかなりカッコいい。

黒のトップスとグレーのトラウザーの絶妙な配色。

グッチのビットローファーの色合いが最もよく分かる写真。
タイラー・ダーデンのファッション6
スターダストシャツ
- 星が散りばめられている半袖ネイビーシャツ
- バーガンディ・トラウザー

こういうアイテムがさらりと着こなせるのは、やはり肩と腕の筋肉がしっかりついているからです。

このシャツ欲しいです。伝説のビョルン・アンドレセン・ポーズ。
ミート・ローフの胸で泣きたい
この作品で強烈な存在感を放つ大きな胸を持つ男ボブ。彼は元ボディビルダーでステロイドの使いすぎで睾丸ガンになってしまい、睾丸を失い胸が大きくなってしまったのでした。
そんなボブを演じるのは、ミート・ローフ(1947-)というロック・シンガーです。1993年に「愛にすべてを捧ぐ (I’d Do Anything For Love (But I Won’t Do That))」が全米No.1位ヒットとなり、40代にしてロックスターになった苦労人です。
「Rock and Roll Dreams Come Through」(1994、アンジェリーナ・ジョリーが出演!)と併せ、両ビデオクリップを撮影したのは、1995年に『バッドボーイズ』で映画監督デビューすることになるマイケル・ベイです(『アルマゲドン』、『パール・ハーバー』、『ザ・ロック』、『トランスフォーマー』シリーズを監督した人)。
作品データ
作品名:ファイト・クラブ Fight Club (1999)
監督:デヴィッド・フィンチャー
衣装:マイケル・カプラン
出演者:エドワード・ノートン/ブラッド・ピット/ヘレナ・ボナム=カーター/ミート・ローフ/ジャレッド・レト