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【ボッテガ ヴェネタ】ボッテガ ヴェネタ(ミシェル・アルメラック)

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©Bottega Veneta
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ボッテガ ヴェネタ

【特別監修】カイエデモードが崇拝するフレグランス・スペシャリスト様

原名:Bottega Veneta
種類:オード・パルファム
ブランド:ボッテガ・ヴェネタ
調香師:ミシェル・アルメラック
発表年:2011年
対象性別:女性
価格:30ml/9,936円、50ml/13,176円、75ml/15,768円

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ボッテガ・ヴェネタのファースト・フレグランス

トーマス・マイヤー ©Bottega Veneta

1966年にイタリア北東部のヴェネト州で創業されたボッテガ・ヴェネタ(〝ヴェネト州の工房〟の意味)は、「イントレチャート」と呼ばれる特徴的なレザーの編み込み技法を開発し、1970年代には、ジャクリーン・ケネディ・オナシスなど世界中のセレブに愛されるレザー・ブランドとなりました(この頃ジョルジオ・アルマーニが一躍脚光を浴びたハリウッド映画『アメリカン・ジゴロ』にも登場していた)。

しかし、1980年代には早くも顧客離れが深刻化し、倒産寸前の所を2001年2月にグッチ・グループ(現ケリング・グループ)に買収されました。そして、トム・フォードにより、クリエイティブ・ディレクターとして任命されたのがトーマス・マイヤー(1957-)でした。

元々9年間エルメスでレディースのプレタポルテ及びレザーグッズやアクセサリーのデザインを1999年まで担当していた彼は、17年間の在任中、見事にブランドを復興させ、ボッテガ・ヴェネタをケリングでも最有力のブランドに変えました(2001年から2011年までの間で売り上げを800パーセント増大させた)。

カバ(Cabat) ©Bottega Veneta

2001年6月にディレクターに就任し、僅か3ヵ月後のファースト・コレクションで発表されたトートバッグ「カバ(Cabat)」は、現在もブランドを代表するバッグです。

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イントレチャートのように肌に編み込まれるレザーの香り

©Bottega Veneta

(ボッテガ・ヴェネタの誕生の地である)緩やかな緑の丘のあるヴェネト州の美しい田園地帯の古い家にある、古いウッドの床の部屋、革表紙の本がぎっしりと並ぶ書斎の開け放たれた窓、草、干し草、コケ、庭園の花々の全てがそよ風とともにやってきて部屋の中を満たす。そんなイメージから、ボッテガ・ヴェネタの初フレグランスのイメージは膨らんでいきました。

トーマス・マイヤー

私はこの香りを調香するにあたってシプレに注目しました。シプレはリッチでエレガント、さらに時代を超越しており、繊細なレザーのトーンに加え、トーマスが香りの中で望んでいた、抽象的な花の香りを生み出す役割を果たしてくれました。

ただし、このようなシンプルな処方の場合、香料の選択と品質がより重要になります。この香りには、現代では珍しい天然香料がかなり多く使用されています。

ミシェル・アルメラック

2011年にボッテガ・ヴェネタは、コティと提携し、トーマス・マイヤー自身の宿願ともいえるブランド初のフレグランスを発表しました。ブランド哲学である〝見えない、プライベートなラグジュアリー〟を表現したレザーフローラルシプレの香りは、ミシェル・アルメラックにより一年かけて調香されました。

ちなみにこの香りの創作にあたり、トーマス・マイヤーは上記のイメージだけをアルメラックに示し、特にレザー・ブランドとして、レザーの香りにして欲しいというリクエストは示しませんでした。

しかし、アルメラック自身の判断により、〝新しいレザー、でも懐かしいレザー〟つまりは、〝記憶に残るずっと捜し求めていたレザー〟の香りこそボッテガ・ヴェネタのファーストに相応しいと考え、トーマスにその試作品を提示し、一瞬で彼のハートを鷲掴みにしたのでした。

砂糖漬けされたベルガモットとピンクペッパーの組み合わせからはじまるオープニングでありながら、弾けるように爽快ではなく、スパイシーローズのようなノスタルジックなムードを運んでくれます。この香りには、はじまりから終わりまで徹頭徹尾、エレガンスと媚びない凛とした静謐なる空気が流れています。

ここで使用されているピンクペッパーは二酸化炭素で抽出されたロベルテ社特製のものです。

ファースト・フレグランスにして、明らかに目指すレベルが違うことを教えてくれるトップノートです。つまりこの香りは、一般的にフレグランス市場に投入されるファッション・フレグランスとは一線を画した、「ボッテガ・ヴェネタ」のブランド・フィロソフィーに忠実に、それを称えるために生み出された〝真のラグジュアリー・フレグランス〟なのです。

そんな淡いシトラスに、華やかなジャスミンサンバックが注ぎ込まれる中、すぐにアプリコット/ピーチのようなオスマンサスの香りに乗って、ピリっとスパイシーかつクリーミーなレザーが滑らかに全体に広がってゆきます。

それはまるでしなやかで妖艶なボディラインを、エレガントなドレスで隠しながら強調していくようです。

やがて、パチョリがオスマンサスレザーのフルーティさと結びつき、フルーツパチョリの温かくも柔らかな甘いレザーの余韻で包み込んでくれます。

野生のレザーとは対極に位置する育ちの良いレザーの香りがそこにはあります。ほんのひとさじのベンゾインの甘さとオークモスの苦みが心地よい控えめな50年代風のクラシカルなエレガンス(グレース・ケリーのような)を付け加えています。

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憧れで心を揺さぶる〝究極のレザー・フレグランス〟

©Bottega Veneta

©Bottega Veneta

何年か前に2つの材料の組み合わせ偶然発見したレザー・アコード。このレザーの香りがなければ、この香水は思いつかなかったでしょう。レザーの香水を作ることはとても難しく、あまり売れません。また、強いレザーの香りは、かなり頑固です。

そこで、レザーのエッジをシプレで丸くし、ソフトにしました。アプリコットのフルーティなシプレにしたのです。

ミシェル・アルメラック

ファースト・フレグランスにして〝究極のレザー・フレグランス〟とも言えるこの香りの最大の魅力は、ラグジュアリー・ブランドが望みうるひとつの感情を着用者に生み出させることに成功しているところにあります。

つまりは、イントレチャートが、見事な手捌きで編み込まれていくサヴォアフェールを肌の上で感じることにより、実際にボッテガ・ヴェネタのレザー・グッズを所有したいという心を抑えきれないほどの憧れで静かに揺さぶり続ける香りなのです。

大きな声ではなく、静かな心地よい声音で伝えてくれるからこそ、この〝香りのイントレチャート〟は心に染み込むのです。

セルジュ・ルタンスの「ダンブロン」やアルマーニ・プリヴェの「キュイール アメティスト」とよく比較される香りです。

キャンペーン・モデルとして、イネス・ドゥ・ラ・フレサンジュの長女ニーヌ・ドゥルソが起用され、サウス・フロリダで、ブルース・ウェーバーにより撮影されました。

ムラーノ・ガラス(ヴェネツィアン・グラス)をイメージして作られたボトルは、トーマス・マイヤーによりデザインされました。ブルニート加工を施したメタルキャップとレザータイで飾られ、そのボトルの底面には、イントレチャートが刻まれています。

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ルイ・ヴィトンの「ダン ラ ポー」との比較

©LOUIS VUITTON

最後にブルーベルのチーフ時代にこの香りを取り扱っていたカイエデモードが崇拝するフレグランス・スペシャリスト様にルイ・ヴィトンのレザー・フレグランス「ダン ラ ポー」と比較して頂きました。以下、彼女のお言葉となります。

「ボッテガ ヴェネタ」はいわゆる〝レザーの香り〟の中でも、格好良さやマニッシュな女性に傾倒せず、肌に当たる上質なレザーの滑らかで人肌のあたたかさを感じるノーブルな香りだったと記憶しています。

発売当時「クロエ」旋風真っ只中でした。そして、ジミー・チュウも華やかな女性らしい香りを発表し、スワロフスキーからもそのような香りが発売されていました(キラキラと輝くようなパウダリーな香りでした)。特に「デイジー・シリーズ」は、当時の「クロエ」に次ぐ人気の香りでした。

つまり、レディースフレグランスといえば、〝明るく華やかな〟香りが主流だった中、彗星のように現れたのが「ボッテガ ヴェネタ」だったのです(同じく大人の香りとして「バレンシアガ パリ」も発売されました)。

光と影で言えば、後者のフレグランス。どこか謎めいていて影を感じる、まさに〝内に何か秘めた〟翳のある面影を思わせる香りです。

一方、「ダン ラ ポー」は言わずもがな、〝天然のヌメ革〟のレザーインフュージョン × 二酸化炭素で抽出したグラース産ジャスミンにより生み出された、ルイ・ヴィトンのフレグランスの中でも特に個性的な香りです。

淡いベージュの滑らさと、手に触れた時に感じるヌメ革のしっとりとした質感までも感じさせる香りです。そして、〝時の経過とともに飴色に変わっていく、自分の持ち方一つで色の変化の仕方も変わる〟そんなしなやかさまでも香りから感じるほど、味わい深い香りです。

二つの香りを色の彩度で比較するなら、「ダン ラ ポー」は、窓から入ってくる木漏れ日のような明るさを感じるようなイメージで、「ボッテガ ヴェネタ」は、その木漏れ日を部屋の奥から見ているようなイメージなのです。

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香水データ

香水名:ボッテガ ヴェネタ
原名:Bottega Veneta
種類:オード・パルファム
ブランド:ボッテガ・ヴェネタ
調香師:ミシェル・アルメラック
発表年:2011年
対象性別:女性
価格:30ml/9,936円、50ml/13,176円、75ml/15,768円


トップノート:イタリアン・ベルガモット、ブラジル産ピンクペッパー
ミドルノート:インド産ジャスミンサンバック
ラストノート:インドネシア産パチョリ、オークモス、レザー