オードリー、はじめてのジーンズ・スタイル。

さりげなくオシャレな着こなしのアルバート・フィニー。

フィニーの衣裳を担当したのは、ハーディ・エイミスです。

有名な工事用標識の真似をするシーン。

赤が大嫌いだったオードリー。自宅の庭園のバラも赤だけは育てなかったと言う徹底振りであるにもかかわらず赤に挑戦します。

スコットランド北にあるシェットランド諸島産の羊毛(シェットランドウール)で作られたセーター。

そして、太ベルトはグッチです。

オードリーがはじめてブルージーンズ姿でスクリーンに登場した作品。
オードリー・ルック4 赤セーター×ジーンズ・ルック<第一期 1954年>
- 赤のシェットランドセーター、ラウンドネック、フランスのカジュアル・ブランド、ティムウェア、1962年購入の私服
- グッチの茶の太ベルト
- リーバイス(マリテ+フランソワ・ジルボーとも言われる)のジーンズ
- ケッズのキャンバス・スニーカー
二人の<出会いの旅>は、貧乏であっても、決してお金では買えないものに包まれた旅でした。オードリーの夫を演じるアルバート・フィニー(1936-)が実に素晴らしいです。50年代風のかざりっけのない芝居。最初はオードリーには全く興味がなく、重そうな荷物をまったく持ってあげないのですが、やがて時間を共有するにつれて、彼女の荷物を持つことによって、その変化していく恋愛感情のプロセスが実に明快に描かれています。
オシャレな服で着飾る60年代よりも、カジュアルなスタイルの50年代の方が遥かに輝いて見える二人。ここにファッションが抱える恐ろしい本質が見え隠れするのです。オードリーがジバンシィを脱ぎ、ジーンズに身を固める姿のみずみずしさを見ていると、ファッショナブルなことは、時に人間の魅力を奪いがちであることを思い出させるのです。
オール・イエロー・スタイル
オードリー・ルック5 シャツドレス・ルック<第ニ期 1955~56年>
- イエローシャツドレス、サーキュラースカート
- マスタード色のアスコット
- 太ベルト
ジバンシィの衣裳と妖精的な冷たい殻から抜け出したオードリーは、女心の痛手を表現する役割を見事にやってのけた。
1967年公開当時のタイム誌
『ビニールの女王』ミシェル・ロジェ

本作のハイライト・コスチュームの一つ。

キャシャレルのストライプシャツが実に60年代。

夫と口論になり車を飛び出し歩く湖のほとり。ここは『パリの恋人』で使用された教会の湖のほとりでした。
オードリー・ルック6 ビニール・パンツ・ルック<第五期 1965年>
- 黒いエナメルのパンツスーツ。ミシェル・ロジェV de V。66SS
- テーパード・レッグ・センターフリーズ・パンツ
- ブッチャーズ・ストライプブラウス、スタンドカラー、黒とピンクのシルク、キャシャレル。66SS
- 黒のレザーブーティ、ローヒール、レネ・マンシーニ。ミシェル・ロジェV de V。66SS
オードリーならどの店に連れて行ってもいい。大衆百貨店シアーズでも、高級服飾店ジバンシィでもラルフ・ローレンでも、軍の放出物資店だってかまわない。彼女が何か着たのを見たら、みんなが「ああ、オードリーらしい!」と感嘆するのだ・・・衣服は、着る人によって良くも悪くも見える。
ラルフ・ローレン
本作の最大の魅力は一言で言うならば、〝オードリーの映画に必ず存在した普遍的なファションとは無縁な作品〟ということです。
ミシェル・ロジェ(1930-2017)は、1960年代に「ビニールの女王」と呼ばれた前衛的なデザインで話題を呼んだファッション・デザイナーです。『エル』の創刊者ピエール・ラザレフとエレーヌ・ラザレフ夫妻の娘であり、1970年代からは、映画監督にもなった女性です。
1967年のラクエル・ウェルチの作品『空から赤いバラ』のパラシュート・ジャンプスーツのデザインもしました。
マクドナルド・スタイル

本作の中で最も<センスの悪い>と評価されるスタイル。

パコ・ラバンヌのゴーグルスタイル・サングラス。

ラグビーシャツ・ワンピースの赤と黄のボーダーの不思議さ。

女優に合わせてイエローを配置する巧みさ。
オードリー・ルック7 マクドナルド・ルック<第五期 1965年>
- 黄と赤ボーダーのジャージーワンピ。ネックには長めの襟。ジョン・ベイツ・フォー・ジーン・バロン。マーク・ジェイコブスが後に発表したラグビーシックシャツドレスの元祖
- 黄色の近代的なバイザーサングラス。パコ・ラバンヌ66SS
- 白のハンドバッグ。グッチ、レザー、66年に購入したオードリー私物
- 白のパテントレザーパンプス、チャンキー5cmくらい