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【リベルタ パフューム】ソルテッラ(山根大輝/武宮志昌)

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ソルテッラ

原名:Solterra
種類:オード・パルファム
ブランド:リベルタ パフューム
調香師:山根大輝、武宮志昌
発表年:2021年
対象性別:ユニセックス
価格:8ml/6,000円、50ml/18,500円
公式ホームページ:リベルタ パフューム

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日本中の人々に〝元気を分けてくれる〟香り

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2021年に伊勢丹新宿店で開催された『日本最大の香水の祭典』サロンドパルファンは、今後の日本の香水文化を激変させる一手を打つことに成功しました。

それは、本館と一緒に、伊勢丹新宿店メンズ館ではじめてサロンドパルファンが開催され、大成功を収めたことでした。つまり、日本の香水文化と男性のライフスタイルを、はじめて本格的に結び付けることに成功したのでした。そんな歴史的な祭典の「目玉イベント」として2週間の限定店舗を出店したのがリベルタパフュームでした。

結果的に、この2週間は、「リベルタの2週間」と香水業界内で囁かれるほどに、全国の香水愛好家の心を一瞬にして鷲づかみにすることになりました。

一方、2022年を迎え、終わりが見えないパンデミックが続き、日本中の人々は、歴史上かつてないほど、より深い癒しを香水に求めるようになっています。つまり人々は、日本人特有の「目に見えないものにこだわる」という観点で、香水と向き合いはじめているのです。

そんな未曾有の『香水文化の盛り上がり』の中、リベルタパフュームが2021年3月から発売しているLIBERATION(リバレイション)コレクションが、香水愛好家のみならず香水に興味を持ち始めた人々の間でも、注目を浴びているのは当然の成り行きでした。

このコレクションのテーマは「香りのないものに、香りを与える」です。それは「香り本来の良さを引き立てながら、鼻あたりが良くていつまでも嗅いでいたくなる香り。 どこか心の琴線に触れるけれども、新しさを感じるような香り」というフィロソフィーの下、あらゆる既成概念を取っ払い、自由な発想とアコードでクリエーションするというコンセプトで生み出されています。

その第一弾の香りとして発売されたのが「サクラ マグナ」(=偉大な桜)でした。そして、続く第二弾として2021年6月に発売されたのがこの香り「ソルテッラ」です。この香りは前作と同じく山根大輝氏と武宮志昌氏により調香されました。

公式サイトのジャーナルでも紹介しているのですが、いちど完成と決めた香りを、シニアパフューマーにコテンパンにダメ出しされたんです。アコードを取ることばかりに目を向けると、自分たちの視野が狭くなってしまい、俯瞰すると完成度の低いものになってしまっていました。そこから再構築をはじめ、構想期間を含めると1年くらいかけて、25回の試作を経て出来上がりました。

山根大輝

〝地上に咲いた太陽の香り〟をイメージした「ソルテッラ」は、調香師でありブランド創業者でもある山根氏が、2020年6月に、LIBERATIONコレクションの構想を開始したときに真っ先に頭に浮かんだ〝ひまわり〟を題材にした香りです。

ひまわりが連想させる三つの力強さ

  1. 夏を生き抜くエネルギーを感じさせる
  2. 青空に向かい、まぶしいほどに堂々とまっすぐに生きる(咲く)
  3. その力強さに照らされて、生き物たちは目を覚ます

つまり〝みんなに元気を与える〟香りを生み出そうと考えたのでした。

何よりもこの香りが素晴らしいのは、「香りのないものに、香りを与え、ただ身にまとうだけで、言葉は必要のない香り」を生み出そうとしたところにあります。

本来「ソルテッラ」には、詳細な記事は不要かもしれません。でもカイエデモードは、日本人の若者が作り上げた〝元気を与えてくれる夏の香り〟について徹底分析したくてしょうがないのです。

それくらいこの香りには、〝日本人の心を打つ〟たくさんの要素が存在するのです。

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世界中でほとんど存在しない『ひまわり』の香り

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私にとってひまわりは、元気を与えてくれるものの象徴です。バラも、サクラも、そしてキンモクセイも大好きな花々ですが、いつも気持ちをポジティブにさせてくれる花としては、ひまわりに並ぶものはありません。そんな私の、私たちの、心を掴んで離さない花であるひまわりを、どうして香水として表現する人がいないのだろうと、いつの日からかずっと考えていました。

リベルタパフュームのジャーナルより

山根氏が「香りがないものに、香りを与える」というテーマを考え出した時に、真っ先に頭に浮かんだのは、〝さくら〟ではなく、〝ひまわり〟でした。

〝ひまわり〟とは、その学名をHelianthusと申します。これは古代ギリシャ語の〝太陽〟と〝花〟のふたつの単語を組み合わせたものです。つまりは、ひまわりとは〝太陽の花〟の意味なのです。

16世紀までひまわりは栽培されることなく北米で野生で咲いていました。そんなひまわりの珍しさにスペイン人の探検家が、1510年にヨーロッパに持ち帰ったことから、はじめてひまわりがヨーロッパに伝わることになりました(ちなみに日本伝来は1666年と言われています)。

やがて時は過ぎ、オランダでひまわりを見て感動したピョートル大帝(在位1682-1725)が観賞用としてロシアに持って帰り、ひまわりはロシア上陸を果たすことになります。以後、ひまわりは19世紀半ばまでに〝ひまわり油〟〝ひまわりの種〟として食用で消費されることになり、ロシア全土で栽培されるようになりました。

そして、1917年のロシア革命により、ロマノフ王朝は打倒され、農民は大移動することになり、一気に都市部にもひまわりの種を食する習慣が定着することになりました。

今では、映画の中で、ロシアのマフィアの描写においてかならず出てくるほど、ひまわりの種は一般的なロシア人には切っても切れないものになっています(一例「イースタン・プロミス」のヴァンサン・カッセル)。

何よりも日本人にとって有名なひまわりは、リベルタパフュームがジャーナルでご紹介されているゴッホの『ひまわり』と、1970年にソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニ主演で、ヨーロッパ映画としてはじめてソ連(当時社会主義国家だった)ロケを果たした永遠の名作映画『ひまわり』(1970)でしょう。

ちなみに、あくまでも私見ですが私が「ソルテッラ」以外にひまわりを強く感じる香りは、ルイ・ヴィトンの「サン ソング」です。

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太陽と大地を結びつけるあなたの香り

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SOLTERRAのユニークさは、そのコンセプトにもありますが、少しテクニカルな話をさせていただくとオスマンサスアブソリュートの使い方にあると思います。オスマンサスはほとんどの香水でピーチ調のフルーティな香料と一緒に用いられています。SOLTERRAでは、柑橘とオスマンサスをメインとしていることから、既存のブランドが取り扱うことの少ない組み合わせになっています。そしてこの組み合わせは、他ブランドとの比較によって検討されたものではなく、純粋にひまわりのイメージを追った結果として誕生したことも、そのユニークさの一つです。

リベルタパフュームのジャーナルより

ラテン語で太陽を意味する「SOL」と、大地を意味する「TERRA」から名付けられた「SOLTERRA=ソルテッラ」。太陽の輝きを一身に集める香りの存在しない夏の花・ひまわりの香りです。

与謝野晶子の有名な和歌「髪に挿せばかくやくと射る夏の日や王者の花のこがねひぐるま」の世界観を見事に再現した、生命力にあふれるこの香りは、燃える夏の到来を告げるオレンジ色の釣鐘の音が鳴り響くように、オレンジビガラードとグレープフルーツが弾け、そこにガルバナムのグリーンな風が吹きぬけていく、ビターな余韻と共にはじまります。

すぐに太陽(=サン)とひまわり(=サンフラワー)を結びつける〝輝き〟をネロリとオスマンサスアブソリュート、そして、チューベローズが与えてゆきます。さぁ、太陽に愛される大輪の花びらは、黄金色に燃えながら火車のように情熱的に回転するのです。

「ソルテッラ」の非常に興味深い点は、ただ単に心地よいのではなく、〝生っぽさ〟を感じさせるところにあります。それは(水蒸気蒸留で抽出された)ネロリが生み出すフローラルの甘さとフレッシュな柑橘のコントラストが、オスマンサスアブソリュートだけが持つじっとりと湿り気を帯びた香りと合わさることにより生み出される効果です。

そんな〝生っぽさ〟=えぐみ、苦味、渋みなどネガティブな側面を肌で感じることにより、誰もが知っている日本の自然の情景を想い出させてくれるのです。それは、日本人の心の奥底に眠る〝ひまわり〟を、ひまわりではない香りで蘇らせるという大胆な試みなのです。

そして、全身で〝イエローとグリーンのひまわり畑のエクスタシー〟を感じながら、アーシィーなベチバーと、シャープでドライなシダーウッドが、オリバナムに溶け込むことにより、木と土が肌の上に結界のように張り巡らされ、ひまわりの輝きを取り囲む大地が作り出されてゆくのです。

通常の香水において天然香料の含有量は10%以下だと言われている中、「ソルテッラ」は80%以上の天然香料で構成されています。まさにこの香りは〝ひまわりの奇跡の輝き〟を本気で再現しようとした掟破りな香りなのです。

そのためこの香りには、サマー・フレグランスの概念を飛び越えて『365日、ひまわりの輝きを浴びる』=『毎日元気がもらえる』という要素が存在します。それはつまり「コロンのような軽さを持ちながら、オードパルファムとして成立させたい」(山根氏)というイメージで生み出された、日本ではじめてのルイ・ヴィトンで言うところのパルファン ド コローニュであるからこそ、実現できた奇跡なのです。

このような(コストを度外視した)思い切った香りを創造することが出来るのは、リベルタパフュームがディストリビューターに依存せず、自社販売網を確立しているからなのです。

だからこそ、優れた日本文化の継承とも言える、銀閣寺や竜安寺の庭に代表されるような<見る側に想像の余地を残す>ことが、この香りの正しい楽しみ方なのです。

さあ、カイエデモードの徹底分析を今すぐに忘れて、「ソルテッラ」を自分のスタイルで楽しんでください。この香りには、人々の多様性を受け入れるだけの〝スケールの大きさ〟が存在します。

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香水データ

香水名:ソルテッラ
原名:Solterra
種類:オード・パルファム
ブランド:リベルタ パフューム
調香師:山根大輝、武宮志昌
発表年:2021年
対象性別:ユニセックス
価格:8ml/6,000円、50ml/18,500円
公式ホームページ:リベルタ パフューム


トップノート:オレンジビガラード、グレープフルーツ、ガルバナム
ミドルノート:ネロリ、オスマンサスアブソリュート、オレンジフラワー、チューベローズ
ラストノート:オリバナム、ベチバー、シダーウッド