【リベルタパフューム】代表・パフューマー山根大輝さんインタビュー
毎年同時期に伊勢丹新宿店で開催されていたサロンドパルファンが、2021年10月27日(水)~11月9日(火)にかけて遂に伊勢丹新宿店メンズ館においても本館と同時開催されることになります。それに伴い開催期間も大幅に長くなります。
そして、その「目玉イベント」として2週間の限定店舗を出店することになるのが新進気鋭の日本のフレグランス・ブランドであるリベルタパフュームです。
さらに、10月21日(木)~27日(水)にかけて行われるGINZA SIXの世界中の上質な香水を集めた「La touche finale parfumee(ラ・トゥーシュ・フィナル・パフュメ)」にも参加されるということを知り、2021年~22年にかけて台風の目になることは間違いないリベルタパフュームの代表兼パフューマーの山根大輝さんに徹底インタビューさせていただくことになりました。
リベルタパフュームについて
この一年の間に、20代~30代の香水初心者の女性の心を掴み、SNSにおいても話題になっているリベルタパフュームのことをよく知りたいと常々思っていました。
そして、完成度の高いホームページを読み進んでいくうちにこのブランドが当時20代の若者達により立ち上げられたユニークなブランドであることを知るに至りました。以下、リベルタパフュームを知る上で、6つの重要なことがらを箇条書きしてゆきます。
- ブランド・テーマは「香りの民主化」。それは既製品ではなく、「あなたのための一本」を生み出すこと。
- パーソナライズ香水。ジャック・キャヴァリエやマチルド・ローランが500万円以上のお金を頂いてやっていることを、手に届く値段でしてくれる画期的なサービス。
- 45万件のデータをもとに構築された、独自のアルゴリズムを元に、20の質問に答えるだけで、ぴったりの香りがわかるパーソナル診断を提供している。
- 自分だけの香りを作ることを、香水愛好家だけでなく、香水初心者の「はじめの一本」にも順応させていること。
- 日本人パフューマーによる日本人向けのプレタポルテ・コレクションが存在すること。それも「香りのないものに、香りを与える」シリーズという発想の面白さ。
- メイン・パフューマーである山根大輝さんは、今最も世界で認められている日本人パフューマーである大沢さとり様から調香を学んだという事実。
私が何よりも惹きつけられたのは、弱冠30歳にして、それまで閉鎖的だった日本の香水市場に新しい風を起こし、「香りのないものに、香りを与える」というコンセプトで本格的なオリジナル香水を発表している山根さんという方が、大沢さとり様の弟子であるということです。
かくして、9月某日に、新作発表会をされているTOM DIXON SHOP / REAL Style 青山店に山根さんに本格インタビューする機会が訪れたのでした。
2021年日本の香水市場はどのように変わったのか?
――― まず最初に、ここ一年で、20代から40代までの日本人の香水に対する考え方が大きく変わっていったように感じます。「香りの民主化」を推し進めてきた山根さんにとって、この一年(2020年9月~)はリベルタパフュームさんと日本の香水環境にとってどういった一年だと考えますか?
この一年で、非常に多くのブランドが「香水」の盛り上がりを体感したのではないかと考えています。いわゆるニッチフレグランスを取り扱うお店も増えましたし、私自身もそのようなブランドのディレクターや関係者の方々との交友が深まりました。そしてラグジュアリーブランドもプレステージ価格の香水を多く出す一方で、SHIROやAux Paradisといった国産のリーズナブルなブランドもとても成長しています。日本の香水市場全体が盛り上がっている印象は受けます。
――― ここ一年の香水産業の盛り上がりを、リベルタパフュームさんも実感されましたか?
実際には「リベルタパフューム」という名にリニューアルしたのは2020年5月末なのですが、この瞬間、注文が殺到し、リリースから3日で約1000本の在庫が消えました。オンラインで香りを嗅ぐことができないにも関わらず、こんなに期待を寄せていただけるのかと非常に驚きました。
――― それではリベルタパフュームさん=山根さんが最初にはじめた誰の目にも触れないような小さな活動を教えて下さい。これをはじめたからこそ今があるというようなことをひとつ教えて下さい。
友人100人に香りをクリエーションしたことから始まります。「香水ブランドを始めようと思う」と家族・友人・同僚に話をした時に、ほとんど全員が「え?なに言ってるの?」と驚いていました。それは香水という存在が、いまだ身近なものではないということを象徴しているように思います。まずは自分の大切な人たちに魅力を伝えられないことには、世の中の人に受けて入れもらうことはできないと考え、全く香水に興味のなかった友人も含めて、100人にオーダーメイドで香りを作ることから始めました。当時まったく実績も持たない私を信じて注文をしてくれた方々のおかげで、今のリベルタパフュームがあると思います。
――― ちなみにリベルタパフュームさんが、今注目している日本の香水販売店や、香水ブランドを教えて下さい。特に、ブランディングの参考にされている香水ブランドはございますか?
ノーズショップさん、ルシヤージュさん(京都)、アクアブーケさん(熊本)、あげたらもっとありますが、ニッチフレグランスやユニークな香水を取り扱うお店は、いち愛好家としてもお世話になることが多いです。
実はブランディングの参考にしている香水ブランドはありません。私たちは、別の分野で活躍してきた香水愛好家が集まって構成され、ただただ真っ直ぐに自分たちの香りへの愛を表現しているにすぎません。クリエイティブがオシャレですね、とか、マーケティングが上手ですね、とよく言われることがあるのですが、それは私たちの本質ではありません。
私たちは、何よりも”お客さまと深く繋がること”を最も大切にしています。診断データやSNSをはじめとして、デジタルに繋がる情報があるからこそ、一人ひとりにあった接客ができると信じています。既存の枠組みに囚われず、常識を疑い、されども伝統への敬意を持つ愛好家たちだからこそできることかもしれません。そんな私たちの姿勢自体が、いずれブランドという形になっていくのではないかと思います。
強いて参考にしている方をあげると、レストランSIOの鳥羽周作シェフです。分野は異なりますが、目指したい世界は近くとても刺激を受けています。
リベルタパフュームの大躍進について
――― 2020年は、リベルタパフュームさんにとって大躍進の一年だったと思います。そのきっかけとして思い浮かぶことは何ですか?さらに、はじめてのポップアップ・イベントが、2020年6月16日から22日にかけて渋谷モディで行われたのですが、オンライン販売から、対面販売もおこなうようになった理由を教えて下さい。
躍進のきっかけは、やはり診断を受けて香りを購入する、という新しいスタイルに注目が集まったことにあるかもしれません。ときに診断よりもプロダクトを見てくれ!と思うこともありましたが、どのような形であれ香りに触れていただき、世の中に知っていただくことは嬉しいことだと思います。
対面販売については、元々私たちはオンラインだけでやりたいわけではないんです。むしろ早く自分たちのお店を持ちたいとも思っています。ただ資金もありませんので、まずはポップアップという形で、実際に嗅いでいただく場を作っていきたいなと思いました。
――― どうして渋谷モディでイベントを開催されることになったのですか?
正直にいうと、はじめにお声がけをいただいたのが、渋谷モディだったからです(笑)ご担当の方が、私たちの未来を信じて応援してくれる方だったということは大きかったです。
――― ちなみにこのイベントでワークショップも行われたのですが、反響はどうでしたか?
コロナ禍でしたが、キャンセル待ちも多くて、とても忙しかったです。1人で同時に5人のワークショップを回していた時間帯もありました。初めて香水を買う人も、香水愛好家な方も入り混じったカオスなイベントでした。
――― 次に行われたポップアップ・イベントは、7月8日から14日にかけて阪急有楽町で行われたニッチフレグランスが集まる大きなイベントでした。このイベントは、海外で言うところのESXENCE(エクセンス)のような、日本ではじめてのニッチフレグランスの祭典と言ってよいですか?
そうですね、どうやってセレクションしたの?というくらいニッチなイベントでした。リベルタパフュームの前に、阪急有楽町でフルオーダーメイドのイベントをさせていただいたことがあったので、そのご縁でお声がけをいただきました。
――― 銀座は、渋谷よりも香水の聖地が多く、コロナウイルスの影響でイベントの規模は縮小したとはいえ、多くの香水愛好家の方々が来場したと聞きます。リベルタパフュームさんは反響を感じましたか?
土日は多くの愛好家がきてくださって、リベルタパフュームを知っていただく良い機会だったと思います。一方で平日は本当に人が来なくて暇だったんです。実はその時に出展者同士でお互いのブランドを説明しあって、嗅ぎあって、仲を深めることができました。今ではそのブランドの接客をできるくらいに、お互いのことを知っているくらいです(笑)
――― そして、リベルタパフュームさんは続けて都内でポップアップ・イベントを行うようになりました。次は?
GINZA SIXで2020年11月12日から18日にかけて行われたポップアップイベントでした。こちらもリキッドイマジネやエラケイなどが集まりました。香料ガチャというものを行いました。
――― 香料ガチャとは?Nose Shopさんが行っている香水サンプル・ガチャとはまた違うものですか?
香料ガチャは、実際にリベルタパフュームで使用している「香料原料」を嗅ぐことができるものです。希釈された状態の香料を、ムエットにスプレーして体験してもらいました。普通は手に入れることができない、イリスやネロリ、サンダルウッドなど、とっても高価な香料をプレゼントした”採算度外視な企画”でした。
――― そして、梅田阪急メンズで2020年12月16日~20日にかけて行われたポップアップイベントにより、いよいよ大阪上陸を果たされたのでした。今年8月25日から2週間、梅田阪急でポップアップも行われましたね。東京のお客様と大阪のお客様のリベルタパフュームさんの香水に対する捉え方の違いを何か感じられましたか?
大阪の方は購入するまでの判断が早いです(笑)これと、これと、それも!とパパッと感覚で決めていただく方が多かったです。あとは、やっときてくれたんか!と心待ちにしてくださる方も多かったです。
――― ちなみに山根さんは、大阪や京都は好きですか?大阪の香水の聖地もどこか廻られましたか?
大好きです。大阪はご飯が美味しいですよね。出張のたびにどこかで香水を購入し、美味しいものを食べて帰京します。京都は香りのインスピレーションになる場所が多い印象です。