伝説のG・Gルックその二、ピンクスーツ
スペクテイター・シューズ(白と黒または白と茶色のバイカラー・ブローグシューズ)を3ピースに合わせている三人が並ぶシーン。このシーンこそが、メンズファッション史に残るアイコニックなシーンです。
ジェイ・ギャツビー・ルック9 ピンクスーツ
- ピンクのリネンスーツ、シングル、幅の広いノッチラペル、2つのホワイトボタン、ベントレス
- 白のリネンのカーチーフ
- ダブルのウエストコート、ピークラペル、3×2ホワイトボタン、4つポケット
- ホワイト・ドレスシャツ、クラブカラー
- ゴールドカフリンクス
- ライトブルーのネクタイ、黄色い花柄、ウィンザー・ノット
- ピンクのダブルフォーワード・プリーツ・トラウザー
- 白のベルト
- 白のプレーン・トゥ・レザーのオックスフォード・シューズ、ダークブラウンラバーソール
- 白のニュースボーイキャップ
映画史上はじめて、主人公がピンクのスーツを着て現れた瞬間でした。そして、この映画におけるこの瞬間に、メンズスタイルの幅は、それまでの3倍以上は拡大したのでした。カラフルなカラーをダンディズムに変換する美学。更には、クラシカルなファッションを現代風に蘇らせて遊ぶという感覚。
メンズ・ファッションに色彩と遊び心を与えた男。それが、ロバート・レッドフォードであり、ラルフ・ローレンだったのです。それまでは、ごくごく一部のお洒落な男性だけのスタイルだった色彩と遊び心の精神が、この時解放されたのでした。メンズ・スタイルの解放は、この作品によってなされたのでした。
男性用水着の歴史
ジェイ・ギャツビー・ルック10 水着
- ボーダーのタンク・スーツ
そうしてぼくは、そこに坐って、神秘の雲につつまれた昔の世界について思いをはせながら、ギャツビーが、デイジーの家の桟橋の突端にかがやく緑色の灯をはじめて見つけたときの彼の驚きを思い浮べた。彼は、長い旅路の果てにこの青々とした芝生にたどりついたのだが、その彼の夢はあまりに身近に見えて、これをつかみそこなうことなどありえないと思われたにちがいない。しかし彼の夢は、実はすでに彼の背後になってしまったことを、彼は知らなかったのだ。・・・ ギャツビーは、その緑色の光を信じ、ぼくらの進む前を年々先へ先へと後退してゆく狂騒的な未来を信じていた。あのときはぼくらの手をすりぬけて逃げて行った。しかし、それはなんでもない-あすは、もっと速く走り、両腕をもっと先までのばしてやろう・・・・・・そして、いつの日にか- こうしてぼくたちは、絶えず過去へ過去へと運び去られながらも、流れにさからう舟のように、力のかぎり漕ぎ進んでゆく。
『華麗なるギャツビー』F・スコット・フィッツジェラルド
19世紀半ばの最初期の男性用水着は下は膝上丈、上は半そでのセパレートでした。そして、男女が肩を剥き出しにするタンク・スーツへの変化は1920年代までかかります。
1932年に『類人猿ターザン』でジョニー・ワイズミュラーが、上半身裸で登場してから、男性水着からいっせいにトップスが消えました(この作品にはミア・ファローの母親モーリン・オサリヴァンが主演しています)。そして、男性の肉体も女性から批判に晒されるようになったのでした。
そして、二人は、20年代のタイムレス・アイコンになる。
ロバート・レッドフォードは、念願のギャツビーを演じたことについて「銀行強盗をやって逃げ延びたところで、間違った袋を奪ってきたことに気づいたような」ものと結論づけました。
1974年3月にニューヨークの最高級ホテル・ウォルドルフ=アストリアで、盛大に行われたプレミア晩餐会には、レッドフォードとミア・ファローは欠席しました。この作品は、『華麗なるギャツビー』の世界からは、最も程遠いライフ・スタイルを愛する二人の俳優によって演じられた作品だったのです。