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ロイス・チャイルズ1 『華麗なるギャツビー』8(3ページ)

その他の現代の女優たち
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作品データ

作品名:華麗なるギャツビー The Great Gatsby (1974)
監督:ジャック・クレイトン
衣装:セオニ・V・アルドリッジ
出演者:ロバート・レッドフォード/ミア・ファロー/ロイス・チャイルズ/サム・ウォーターストン/ブルース・ダーン/カレン・ブラック

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ハリウッド女優の世渡り講座。講師ロイス・チャイルズ

1974年11月ニューヨーク、イヴ・サンローラン・ファッション・ショーにて。

共演者サム・ウォーターストンとヴォーグのための撮影。1973年6月1日。

恐ろしいほどクールな二人。同じくヴォーグ。

「ロイス、きみにすばらしいクリスマス・プレゼントがあるんだ。きみにジョーダンの役がついたぞ、ロイス。おめでとう」屈んでキスしようとするわたしから、彼女は身を引いた。その声はこれまでに聞いたことのないものだった。「ジョーダンですって?わたしがジョーダンだっていうの?わたしはデイジーをやりたいの、聞いてる?デイジーをやりたいのよ!」

瞬く間に色女から魔女に変身だ。ショックだったかって?ああ。「ありがとうよ、おかげでカレッジを卒業できた。きみには役がついた。自分で勝ち得たんだ」わたしはドアの方に歩いていき、開いた。「さあ出てうせろ!」ロイスは意味がつかめなかった。「だって明日アカプルコに発つんじゃないの・・・」

氷山ほどのあたたかさで口をつぐませる。「エレベーターが近くて運がよかったな。よおく聞け。おれはもう過去の男だ。わかったか?同じ部屋にいたとしてもおれを見るな。わかったか!さあ、おれの人生から消えてうせろ。わかったか!」

ロバート・エヴァンス

ロイス・チャイルズ(1947ー)を見ていると、ハリウッド女優の世渡り術がよく見えてきます。テキサスの石油王の弟の娘として生まれたロイスは、大富豪の娘です。

171㎝の抜群のスタイルで、ファッション・モデルとして成功し、知性と嗅覚の鋭さで、プロデューサーに取り入り、『追憶』(1973)でロバート・レッドフォードと競演するという大役をつかみます。更にロバート・エヴァンスに取り入り、本作のジョーダン・ベーカー役を手にします。この時、彼女はスター街道をまっしぐらに走っていました。持てる武器を臆面もなく使い勝ち取ったのでした。

しかし、すぐ後に、弟が非ホジキンリンパ腫になったことを知ります。そして、イーグルスのドン・ヘンリーとの恋愛も始まりました。ハリウッド女優の世渡り術の果てに彼女は、本当に大切なものを知ったのでした。そして、キャリアの絶頂期に、4年間女優業を休業して、弟の闘病生活を支えたのでした。

弟に説得されて、女優に復帰した後に、『ナイル殺人事件』(1978)で犠牲者を演じ、ミア・ファローと再び競演します。そして、翌年、『007/ムーンレイカー』で、ジェームズ・ボンドと宇宙遊泳した唯一のボンドガールになります。当初彼女は『007/私を愛したスパイ』(1977)に出演予定でした。

ボンドガール後、ロイスは、末期状態の弟の看病を優先し、再び休業します(『ムーンレイカー』が世界的に大ヒットしている最中に弟は死にました)。弟の死に対するショックが彼女の人生観を更に変えました。そして、彼女は、ハリウッドのキャリアを重要視しなくなりました。

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イーディス・カミングス

イーディス・カミングス、1920年。

ロイス・チャイルズが演じた、プロゴルファーでデイジーの親友である、中性的な美女ジョーダン・ベーカーのモデルは、イーディス・カミングス(1899-1984)です。デイジーのモデルであるシカゴの大富豪ジネヴラ・キングの友人であり、1923年のUS女性アマチュア選手権で優勝した彼女は、1924年8月25日に、タイム誌の表紙を飾る最初の女性アスリートになりました。

パーティ好きなイーディスは、〝フェアウェイ・フラッパー〟と呼ばれました。彼女の華やかなファッションセンスが、スポーツ着をよりお洒落なものにしました。そして、多くの女性がスポーツに関わる事によって、男性のアスリートのファッションも彼女たちに感化されるように華やかでカラフルなものになっていったのです。

ミリタリー・ファッションとは、戦争着に女性が袖を通したことによって、洗練されて生み出されたように、スポーツ着も、女性が袖を通したことによって、洗練されて、スポーティ・ファッションが生み出されたのでした。

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ココ・シャネルのようなギャルソン・ルック

作中ではほとんど分からないジョーダンのパンツルックの全容。

東洋的なカルティエのアクセサリー。

黒髪にマルセルウェーブが神秘的です。

邪馬台国の卑弥呼のような・・・

セオニ・V・アルドリッジのデザイン画。

ジョーダン・ベーカー・ルック1 パンツルック
  • ホワイトシルクのパンツルームウェア、首元にサテンのパイピング、浅いVカット、帯
  • 真珠とエメラルド・ビーズのソトワール、カルティエ
  • エメラルドとダイヤモンドのブローチ、カルティエ
  • 白のアンクルストラップ・ハイヒールパンプス

ジョーダン・ベーカーのファッションは、デイジーとは全く違う20年代のファッションを示してくれます。それは、ココ・シャネルが自身で示したアンドロギュヌス的なシルエットの、いわゆる〝ギャルソン・ルック〟です。無言で微笑む神秘的な存在感で、ミア・ファローを完全に喰っている瞬間が少なくありません。


ジョン・ガリアーノ2011年SS。モデル:ミシェル・アルヴス。ジョーダン・ベーカーのパンツルックよりインスパイアされています。