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ロバート・レッドフォード2 『華麗なるギャツビー』6(2ページ)

ロバート・レッドフォード
THE GREAT GATSBY, Bruce Dern, Lois Chiles, Mia Farrow, Robert Redford, 1974
ロバート・レッドフォード
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作品データ

作品名:華麗なるギャツビー The Great Gatsby (1974)
監督:ジャック・クレイトン
衣装:セオニ・V・アルドリッジ
出演者:ロバート・レッドフォード/ミア・ファロー/ロイス・チャイルズ/サム・ウォーターストン/ブルース・ダーン/カレン・ブラック

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伝説のG・Gルックその一、オールホワイト・スタイル

ギャツビーの大邸宅をバックにオールホワイトスタイルのレッドフォード。

ベストのウエスト位置とトラウザーのプリーツの入り方に注目したい。

そして、尋常ではない美しいメタリックブルーのドレスシャツ。

さらに、尋常ではないマスタードゴールドのネクタイ。

レッドフォードのギャツビーを超えるギャツビーはもう出ないだろう。

どんなに熱くても、汗でじとじとしても、ボタンさえもゆるめない男のやせ我慢の美学。

積み重なるターンブル&アッサーの空箱。

良くも悪くも伝説的なシャツをばら撒く=シャツの舞いシーン。

唐突にピンクのシャツの美しさに涙するデイジー。

ジェイ・ギャツビー・ルック3 オールホワイト・ルック
  • 白のリネンの3ピーススーツ、ラペルは20年代風ではなく、70年代風の広めのノッチラペル、2つボタン
  • ベストはダブルでピークラペルあり、20年代的2×3ボタン、4つのポケット
  • ダブルフォワードプリーツパンツ
  • ラルフ・ローレンのマスタードゴールドのシルクネクタイ
  • ラルフ・ローレンの白いボタンのメタリックブルーのシルクのドレスシャツにカラーピン
  • ゴールドカフスリンク
  • メタリックブルーのカーチーフ
  • 白のレザーのプレーントゥ・オックスフォード

「英国に、わたしの衣類を買ってくれる男がいましてね。春と秋と、シーズンのはじめごとに、いいものを見立てては送ってよこすのです」

彼はワイシャツの一束をとりだすと、一枚一枚ぼくたちの眼前に投げてよこした。薄麻のワイシャツ、厚手の絹のワイシャツ、目のつんだフランネルのワイシャツ、投げ出されるがままに広がって、テーブル一面に入り乱れた色とりどりの色彩を展開した。ぼくたちが感嘆の言葉をはくと、彼はさらに多くをとりだしてくる。・・・「なんだか悲しくなっちゃう、こんなにきれいなワイシャツって、見たことないんだもの」

『華麗なるギャツビー』F・スコット・フィッツジェラルド

原作において、ギャツビーとデイジーが再会するシーンのギャツビーのスーツは、「白のフランネルスーツ、シルバーシャツ、ゴールドタイ」と書かれていました。しかし、本編においては、若干変化が加えられています。

この再会のシーンで、映画を見ている人々のほとんどが理解できない(原作に忠実な)「シャツの舞い」のシーンが登場します。なぜギャツビーはこれほどシャツをばら撒く必要があったのでしょうか?そして、なぜデイジーはピンクのシャツが美しいからと涙したのでしょうか?このシーンをメンズファッションのハイライトシーンと捉えることも出来ますが、私は、このシーンは、高価なファッション・アイテムを見せびらかすことの野暮ったさと、そんな姿に感動する女性の滑稽さを描いたシーンと捉えます。

ちなみに、このシーンでターンブル&アッサーのシャツの、たくさんの空箱がギャツビーの背景に写し出されます。これはショーン・コネリー時代のジェームズ・ボンドが着用したイギリスのシャツメイカーです。

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ラルフ・ローレン見参!

ラルフ・ローレンと妻のリッキー・レイン。

若き日のラルフ・ローレンと妻のリッキー・レイン。

トミー・ヒルフィガーはデザイナーとして一流だとは思えない。彼がやっているのはぼくから学んだことばかりだ。なんの新しさもない。

ラルフ・ローレン 1997年4月

ラルフ・ローレンとトミー・ヒルフィガーは、ファッションを学んだことのないファッション・デザイナーでした。両者共に、デザイン画を描かず、縫製もできず、一から何かをデザインすることはありません。だからこそ彼らから独創的な服が生まれることはないのですが、ポロシャツ、イギリスのカントリールック、アメリカのアイビールックといった上流階級のトレードマークを見事に取り入れ、ブランドスタイルを構築していきました。

ポロ・ラルフ・ローレンの17年後に登場したトミー・ヒルフィガーは、ただそのスタイルをポロから引き抜いた幹部を雇い複製し、そこに、スラム街の(パーカーなどの)ストリート・ファッションをアメリカで初めて取り入れたのでした。

ラルフ・ローレンという男を説明するとき以下の3点を示せばその本質が見えてきます。

ひとつは1957年の卒業記念アルバムに書いた将来の夢「大富豪」。そして、もうひとつは、はじめてのアパレルの仕事がブルックス・ブラザーズでスーツを販売していたということ。さらにもうひとつは、ネクタイを売り、1967年にエンパイア・ステート・センターにネクタイ屋をオープンし、その名をポロと名づけたこと(いかにも上流階級を連想させるネーミングを選ぶ)。そして、そのネクタイの値段を競合する高級ネクタイの二倍にしたということ。

この3点の先にあったのが、本作『華麗なるギャツビー』のG・Gルック=ラルフ・ローレンという幻想を生み出す一大広告キャンペーンだったのです。そして、彼は本作のイメージを見事に乗っ取り、ブランドイメージを完膚なきまでに構築したのでした。