ボンド・ガール

オルガ・キュリレンコ1 『007 慰めの報酬』3(2ページ)

    作品名:007 慰めの報酬 007 Quantum of Solace (2008)
    監督:マーク・フォースター
    衣装:ルイーズ・フログリー
    出演者:ダニエル・クレイグ/オルガ・キュリレンコ/ジェマ・アータートン/マチュー・アマルリック



    「13歳までボロボロの服を着て生きてきました」

    野性味溢れる独特な佇まいが彼女の魅力です。

    かなり長い脚に、親しみやすく愛くるしいルックスのギャップ。

    ウクライナの貧民窟から抜け出したドリームガール。

    2013年『オブリビオン』の台湾プレミア。ドレスはバルマン

    屈託のない笑顔でバルマンを着こなせる女優はそういません。

    子供の頃、お母さんはお金が全くなかったのですが、愛情で私を包みこんでくれました。それが何よりも私の財産なのです。

    オルガ・キュリレンコ

    21世紀において、これからのファッション・アイコンとして、そして、女性のライフスタイル・アイコンとして只者ならぬ活躍をしていくであろうと思われる存在の筆頭に挙げられるのが、〝オルガ・キュリレンコ〟です。彼女には、2018年において、もはやウンザリしたムードに包まれている、〝生まれながらセレブ達〟に影響されたSNS盛りに対して、〝そんなことは忘れて、鏡の前の自分の現実と向き合って生きましょう〟というリアル・スタイルを牽引していくだけの説得力を持っています。

    自分の力で、人生を切り開いてきたものにだけ見られる、芯の強さが美とファッションに直結する姿がそこにはあります。それは、生まれながらにして美貌と財力で保護されている女性が、暇つぶしによって、ファッションの一側面を生み出しうる事実の遥かなる対極に位置しています。

    オルガ・キュリレンコ(1979-)は、ノーメンクラトゥーラ(特権階級)に支配されたソ連時代のウクライナの極貧家庭で生まれました。母は、オルガを生んですぐに夫と離婚しました。シングルマザーとして芸術を教える教師の母と、叔母、叔父、祖父母と共に狭いフラットで生活し、ボロキレのような服装で生活していました(1986年のチェルノブイリ事故を見るまでもなく、当時のウクライナは、政治は腐敗し、貧富の差は、アフリカの独裁国家並みに拡大していた)。

    そんな極貧生活の中で、オルガの母は、娘だけは、この生活から抜け出せるようにと、絵画と他国語を勉強させ、更に、13歳までバレエとピアノまで習わせたのでした。「私のお母さんは、全てを私のために捧げてくれた人なのです」。そんな二人が、はじめて旅行に出かけたのが、オルガ13歳の時のモスクワ旅行でした。その時に、地下鉄の駅でモデル・エージェンシーで働く女性にスカウトされたのでした。そして、15歳の時に、モスクワに移りモデルの勉強をすることを決意し、オルガのキャリアは始まるのです。

    16歳の時に、フランスに渡り、6ヵ月間フランス語を勉強し、18歳にして、その175㎝のスタイルと、感性豊かなエキゾチックな容姿を生かし、エル、マリー・クレール、ヴォーグのカバーを飾るようになります。更にクラランス、ヘレナ・ルビンスタインの顔にもなります。他にも、ロベルト・カヴァリとケンゾーのモデル(モデリングではケンゾーが特に有名)、ヴィクトリアズ・シークレットのカタログのモデルもつとめました。

    私が考えるに、モデリングは、偽りを人々に対して創造し、アクティングは、真実を人々に対して創造します。

    オルガ・キュリレンコ

    2005年に『薬指の標本』で映画デビューし、2007年のクリスマス・イブに、本作のボンドガールに選ばれたことを知りました(本人はオーディションで間違いなく落ちたと思っていました。ちなみに順序的には、ジェマ・アータートンが最初に本作のボンドガールとして選ばれています)。2007年に公開された『ヒットマン』のニカ・ボロニナ役が評価された結果でした。ちなみに最終選考には、『ワンダー・ウーマン』(2017)のガル・ガドットと争い、そして、2016年にオルガは逆にワンダー・ウーマン役のオーディションでガルに破れたのでした。



    ジャスパー・コンランを着るボンド・ガール。

    どこかチグハグな印象を与えるオルガ・キュリレンコ扮するカミーユのオープニング・ファッション。

    マチュー・アマルリックがつけているサングラスはカトラー・アンド・グロスの0425ブラウン・ストライプ。

    『トゥモロー・ネバー・ダイ』のミシェル・ヨーを目指したというアスリート体型のオルガ。

    かなり微妙なセンスのオーバーサイズのアクセサリー。

    ボンドガール・スタイル1 リゾート・ルック
    • デザイナー:ジャスパー・コンラン(2008年SSコレクション)
    • オレンジのタンクトップ(ジンジャー・ジャージー・バンドー)
    • 派手なゴールドのオーバーサイズ・チェーンネックレス、魚のペンダント
    • ブロンズのシルク・プリーツ・ミニスカート。ハイウエスト
    • 白のサンダル

    私は、モデルの仕事で、最初に給与を得たときに、一組のトップスとジーンズを購入しました。そして、その日以降、給与は母への仕送りと、貯金に回し、ずっと同じ服を着ていました。ついにたまりかねたモデル・エージェントが、私に、他の服をもっと買うべきだとアドバイスしたのです。つまり私はそれまで人生で余分なお金を持ったことがなかったのでした。

    オルガ・キュリレンコ

    オルガはボンドガールの新しい形を作っていきたいと考えていました。そして、そのベースには、ミシェル・ヨーが『トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997)で演じた、身体能力的にも男性に劣らない強い女性の要素を組み込みたいと考えていました。だからこそ、ダニエル=ボンドとの甘ったるいラブシーンがない、全く新しいタイプの、孤高ともいえるクールな〝ニュー・ボンドガール〟の役柄がとても気に入ったのでした。

    自分の肉体を武器にして、両親の復讐を果たすべき目標に近づいていくカミーユという女性の物語は、ボンドとはまた違った時間軸で展開しており、同じくらいに魅力的でした。本作に違和感を感じるのは、ボンドと同等の存在感を誇る、カミーユというボンドガールの存在感によって感じさせられたものなのです。

    だからこそ、カミーユは、明らかに今までのボンドガールとは違う、どこか活発な少女のようなファッションに身を包み、登場するのです。その褐色の健康美溢れる身体つきが与える印象は、まさに21世紀のソフィア・ローレンのような強い生命力なのでした。



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