現在のモード界は、昔の映画から大きな影響を受けています。
1950年代のハリウッド映画において、ファッション・デザイナーのデザインした衣装を使うことは、オードリー・ヘプバーン以外は極めて稀なことでした。各スタジオには、衣装部門が存在し、そこで、その映画の時代背景、登場人物の設定に合せて作っていました。もちろん、それらの衣装デザインの過程で参考にしていたのは、当時のパリモードでした。
やがて、時代が進むにつれて、(ビデオ、DVDの出現により)過去の映画の中で使用されていた衣装から、人々はスタイリングの影響を受けるようになりました。そして、今ではファッション・デザイナーも、逆に過去の映画から大いなる影響を受けるようになっています。
時代は完全に逆転しました。ファッション・デザイナーの最新モードを、映画の衣装にアレンジしていた50年代の流れが、今では、ある時代のある映画で使われた衣装からインスパイアされデザイナー達がコレクションを形成するようになっているのです。
本作の衣装を担当した、ドロシー・ジーキンス(1914-1995)は、1936年に、ウォルト・ディズニー社で、週16ドルでミッキー・マウスを描くことからキャリアをスタートした女性でした。そして、最終的には3回アカデミー賞を受賞しました(『ジャンヌ・ダーク』(1948、)『サムソンとデリラ』(1949、イーディス・ヘッドらと共に)『イグアナの夜』(1964))。本作は歴史劇の衣装を得意としたドロシー初の現代劇の衣装でした。
当時、監督のヘンリー・ハサウェイがいくつかのシーンで、マリリン・モンローに自前の服を着てくれと要求しました。
しかし、当時の彼女は、お世辞にもセンスが良いと言えないパンツとセーターしか持ってなかったので、結果的に全ての衣装がスタジオが用意したドレスかスーツになりました。なぜなら当時週給750ドルだったマリリンは、精神病院に入院している母親の入院費と家賃と演技のレッスン代を支払うためにほとんど自由になるお金を持っていなかったのでした。
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1953年に全米公開された時の映画界の巨大ディスプレイ。
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『ジャンヌ・ダーク』で1948年度アカデミー衣装デザイン賞(カラー部門)を受賞したドロシー・ジーキンス。エリザベス・テイラーと。
リバイバルして欲しいもの① モンロー専用レインコート
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ナイアガラの滝で着ているこのレインコートが素敵です。
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今リバイバル発売して欲しいくらいキュートなデザインです。
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このマリリンの姿がとてもキュートです。
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衣装合わせのためのコスチューム撮影。
リバイバルして欲しいもの② モンロー専用シャワーキャップ
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シンクロナイズドスイミングのようです。
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マリリンのプラチナブロンドをがっちりガードしています。
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サイドから見たシャワーキャップ。
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どこまでもマリリンです。
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マリリン・モンローとジョセフ・コットン。
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クールビューティなマリリンのこの退廃的な表情。
ファッションを知るということは、50年代の映画を知ることです。
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撮影時マリリンは、クラウンプラザ・ナイアガラフォールズの801号室に滞在していました(昔はスイートルームでした)。そこで脚本を読むマリリン。
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ヴァレンティノのロックスタッズを思わせるサンダル。
純粋で、傷つきやすく、迷子になった子供のような眼をしていたかわいそうなマリリン。彼女はこれまでも粗野で卑しい模倣の対象となってきたし、これからもそうなるだろうが、誰一人として彼女に取って代わることはできなかったし、今後もできはしないだろう。
ブリジッド・バルドー自伝
1つの映画が作られる過程で多くの衣装がその女優のそのシーンに合うかどうかフィッティングされていきます。その作業に最もお金がかけられた時代が、1940年代から50年代のハリウッド映画でした。だからこそ、アパレル販売員を含めファッションに関わる仕事をしている人々にとって、この年代の映画を徹底的に見る必要があるのです。
それは映画とファッションの距離感が、最もうまくいった時代だからです。この時代のエッセンスは、反逆精神のない基本に忠実な女性美の探究にありました。そして、その基本を知るために避けて通れないのが、マリリン・モンローという巨大な存在です。
36才で死んだこの伝説の女性。女性としてここまで痛みの中でもがき苦しみ、恐らく他人にも痛みを与えてきただろう彼女の生き方に、多くの女性がシンパシーを感じるはずです。
彼女は、まだこの作品に出演した時点においては、手当たり次第に男性と寝て、役柄を獲得する軽蔑すべき存在として見られていました(そいう類の女優は、チャンスを与えられる代わりに、低額のギャラで我慢させられる)。
そんな彼女が、反旗を翻すのは2年後の1955年のことです。自分でプロダクション(マリリン・モンロー・プロダクション)を運営し、ギャランティーで泣くことはもうなくなったのです。しかし、このあたりから彼女の映画における状況は、『お熱いのがお好き』を除いて、下降線を辿ることになりました。
映画の中で使用されなかった衣装 その1
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マリリンの少女っぽさが垣間見えるワンピース。
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本作のプロモーションで最も有名な衣装のひとつ。
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背景はナイアガラの滝です。
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ゴールドリングイヤリングとのアンサンブルも素晴らしい。
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衣装合わせのためのテスト写真。
マリリン・モンローを本当に愛した男、ジョー・ディマジオ
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オフショルダーのトップスからのぞくマリリンの胸の谷間が眩しい。
プロダクションを作り、見事女優としての地位を獲得したマリリン・モンローなのですが、その頃には、彼女の精神と肉体は、繊細な演技力が求められる芝居がもう出来ない状態になっていました(マリリンは、セックスシンボルではなく、女優として認められたかった人です)。
男たちに食い物にされ、死に追い込まれたという形容の仕方もあります。彼女の葬儀委員長をつとめた昔の夫ジョー・ディマジオ(『ナイアガラ』の撮影中が、まさに二人が大恋愛中でした。死の直前に2人は再婚を誓っていた。ディマジオは1999年に死ぬまで独身を貫き、死の言葉は、「これでマリリンのところに行ける」だった)は、ハリウッドとケネディ家を生涯憎みました。
それにしてもマリリン・モンローという女性は素晴らしいです。たとえ、志し半ばで死を遂げたにせよ、絶望の中で死を遂げたにせよ、彼女は戦い、多くの価値あるものを後世に残してくれたのです。彼女は、少なくとも、暇つぶしで、美貌をひけらかすような器用さは持ち合わせていなかったのです。
多くの女性が、彼女に惹き付けられるのは、この不器用さにあるのだと思います。不器用だからこそ、ずっと同じヘアスタイルを続け、自分の創造を貫く。やがて、容貌の衰えや、蓄積した精神と肉体の疲労により、自滅していく。しかし、その勝ち取ったものの一部は芸術として日を追うごとに価値が高まるのです。それは現在におけるマリリン・モンローの人気を見れば十分に分かります。
映画の中で使用されなかった衣装 その2
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足もとは真っ赤なオープントウサンダルです。
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赤いトップスと白(グレー)のスカートのコントラストが素晴らしい。
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マリリンがオフショルダーを着ると、健康的です。
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背後には壮大なナイアガラの滝です。
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膝下丈のラップスカートが50年代です。
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チューリップのようなラップスカートのシルエット。
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走るマリリン・モンロー。
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マリリン・モンロー初のカラー映画だけあって、念入りに衣装合わせが行われました。
映画の中で使用されなかった衣装 その3
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このファッションは、シャープでマリリンらしいスカートスーツです。
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シャーリーズ・セロンが如何にマリリンから強い影響を受けているか分かります。
映画の中で使用されなかった衣装 その4
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白い薔薇のような凛としたファッションです。
作品データ
作品名:ナイアガラ Niagara (1953)
監督:ヘンリー・ハサウェイ
衣装:ドロシー・ジーキンス
出演者:マリリン・モンロー/ジーン・ピーターズ/ジョゼフ・コットン