『第2形態』ダイアナ元妃にインスパイアされたベリーショート
「パパ・ドント・プリーチ」 1986年6月リリース。全米1位、全英1位
この作品のミュージック・ビデオにより、マドンナは見事に従来の自分のイメージを打ち壊したのでした。その曲のタイトルは「お父さん、どうか説教しないでね」という可愛いタイトルでした。ショートカットで現れたマドンナは、今までのアクセ盛りにボーイトイ・ベルトの派手なファッションとは無縁なトムボーイスタイルで登場します。『勝手にしやがれ』のジーン・セバーグのように「捨てられた子猫」のような(1950年代のオードリー・ヘプバーンやシャーリー・マクレーンのような)雰囲気を漂わせ、革ジャンに、ボーダーシャツにブルージーンズ、そして、ダニー・アイエロという最強のアクセサリーを伴い登場します。
曲の所々で、オールブラックの60年代のイタリアン・ガール・スタイルに身を包み、プラチナブロンドをアップにして踊るマドンナのボディラインは、明らかに変化しています。そう、彼女は、この時、はじめて肉体改造した自分のボディラインを披露したのでした。ただ踊るだけでなく、ティーンエイジャーの妊娠という社会に対するメッセージと、ファッション感度の高さという、アンバランスなバランスを成し遂げた奇跡によってマドンナの第2形態は始まったのです。
この作品には、マドンナという完全主義者の天才性が、多分に見えてきます。彼氏とのシーンにおける表情よりも、ダニー・アイエロとの空間におけるマドンナの等身大の女性らしさが、「黒いダンス」シーンに入ると、別人格のようにとてつもないスター性に包まれるのです。このふり幅が、マドンナという女性の「変身するシンガー」像を、「戦う女性」像へと昇華させていったのでした。
コニー・アイランド辺りをイメージしているレベッカの『MOON』(1988)のビデオクリップ。NOKKOの歌は素晴らしいのですが、ファッションセンス、振り付けは、とんでもないレベルで残念な作品です。しかし、「パパ・ドント・プリーチ」を上手くアレンジした作品となっています。
安っぽいっていう自分のイメージを自慢に思うわ。あたしの服装はストリート発なのよ。
マドンナ
マドンナ・スタイル11 トムボーイ・スタイル
- ラムレザーのダブル・ジャケット
- ボートネックの白地にブルーのマリーンボーダーシャツ
- ブラックベルト
- リーバイス501
- 黒のバレリーナシューズ
マドンナ・スタイル12 ダンシング・スタイル
- 60年代風ブラック・ビスチェ
- 黒のベルト
- 黒のカプリパンツ
- 黒のバレリーナシューズ
『パパ・ドント・プリーチ』ライブ・パフォーマンス
フー・ザット・ガール・ツアー、1987年。
ブロンド・アンビション・ツアー、1990年、横浜。