ロエベ 001 ウーマン
原名:Loewe 001 Woman
種類:オード・パルファム
ブランド:ロエベ
調香師:エミリオ・バレロス
発表年:2016年
対象性別:女性
価格:50ml/15,180円、100ml/21,120円
公式ホームページ:ロエベ
2015年と2016年のロエベ革命
フレグランスは、私たちがファッションでやっていることの重要な延長線上にあります。
ジョナサン・アンダーソン
1872年に、ドイツの革職人エンリケ・ロエベが、マドリードで1846年から創業されている革の工房を見学し、全ての工程のクオリティの高さに感銘を受け、その工房で働くことになったことからロエベの歴史は始まりました。やがて、1892年にロエベの初ブティックをマドリードにオープンし、1905年にはスペイン王室御用達にまでなりました。
時は経て、1965年に初代デザイナーとしてカール・ラガーフェルドが就任し、ウィメンズのプレタポルテをスタートしました。そして、1996年以降はLVMHの傘下に入り、97年、ナルシソ・ロドリゲスがデザイナーに就任しました。
しかし、すっかり低迷期に入っていたロエベに彗星の如く現れたのが、2013年にクリエイティブ・ディレクターに就任したジョナサン・アンダーソン(1984-)でした。彼は、2015年春夏メンズコレクションが最初のコレクションとなりました。
ロエベの最高の強味は、最高級のラムスキン(羊革)やカーフレザー(子牛の革)を独自のなめし技法で丁寧に加工し、出来上がった最高の革の中から厳選した1割にも満たない面積の革を使用するところにあります。
そのためその革の手触りは、レザーというよりも上質なシルクのようになります。しかもロエベのバッグには裏地が使用されません。つまり裏地をつけないバッグを作るためには、最上級の中の最上級の大きな一枚革と、熟練した職人の能力が求められるのです。
そういった素晴らしい素材と匠の技があればこそ、2015年春夏コレクションでデビューした「パズル」や2016年春夏コレクションでデビューした「ハンモック」という、今では世界中の女性の憧れの的であるバッグが生み出されることになったのでした。
それらがフリーザのように形態を変えていこうとも、その機能性とシルエットが、びくともしないのは、ロエベの世界最高品質のタングレインカーフレザーだからこそ成せることなのです。
第六形態(6WAY)まで形を変えることが出来る「ハンモック」こそ、ジョナサン・アンダーソンの伝統に対する深い愛情と造詣、新しい感性の融合が生み出したものでした。
一方、ロエベは1947年から香水を手がけてきました。しかし、ファッションと香水は全く別の会社で行っていました。そのため今回まで、ファッションと香水が厳密に融合されることはありませんでした。そして、2016年、ついに点と点が線でつながることになるのでした。
ジョナサン・アンダーソンのはじめての香水
これは、私にとってとてもパーソナルなプロジェクトです。私が香りに対して本当に実現したいことについて、長い時間をかけて向き合いました。何よりも、今日のロエベの大躍進をはっきりと体現した香りを生み出したかったのです。
ジョナサン・アンダーソン
ジョナサン・アンダーソンは、これまでの人生においてただひとつの香水だけを愛用してきました。2002年に発売されたカルバン・クラインの「クレイブ」でした。
お世辞にも香りに対して知識が豊富とは言えないジョナサンに対して、約25年間ロエベの専属調香師をつとめてきたエミリオ・バレロスがレクチャーを施し、ジョナサンは、〝男らしさと女らしさの間の転換点にあるような香水を生み出したい〟という目標を見い出したのでした。
そして、1年半の歳月をかけて、2016年8月にペア・フレグランスが誕生したのでした。その名も「ロエベ 001 ウーマン」と「ロエベ 001 マン」です。エミリオ・バレロスにより調香されたこの香りは、2つがひとつになることも考えられて生み出された〝香りのハンモック〟とも言えます。
つまりは男女それぞれ、コンバインしてさらに男女それぞれ、ジェンダーレスにお互いの香りをそれぞれといった具合に6WAYの香りを楽しめるのです。
男女がひとつになる緊張感を身に纏うことができます。一緒のものを身につけていても、まったく違う香りになり、でありながら、ふとした瞬間に、二つがひとつになっていることを体感させる〝夢のような瞬間〟が共有できるのです。
ジョナサン・アンダーソン
それは〝肌を愛撫した時の香りを、より深く、優しく、魅力的に再解釈した〟香りです。そして、はじめて出会った男女が迎える〝モーニング・アフター〟の香りでもあります。翌朝顔を合わせた二人のその後も関係が続いていくのかどうかわからない不確かな緊張感も感じさせるイメージで香りは調香されています。
つまりは、男女の愛の絶頂を描くという夢物語ではなく、男女の愛のはじまりの駆け引きを描いた香りであり、だからこそ、二つがひとつになる楽しみと怖さを感じさせる香りなのです。
タンジェリンとサンダルウッドが二人の愛を掻き混ぜてゆく
若いデザイナーに率いられ、飛ぶ鳥を落とす勢いであることを容易に感じさせるベルガモットとタンジェリンを、フレッシュなピンクペッパーが刺激する、明るいシトラスの輝きから「ゼロゼロロエベ」ははじまります。
すぐにインドールが抑えられたクリーンなエジプト産ジャスミンに、ピーチのようでココナッツのようなサンダルウッドがクリーミーに溶け合い、離れ合い、また溶け合うようにして、単独それぞれの香りとミックスした香りの3種類の香りを、肌の表面で走馬灯のように回りまわるように香り立つのです。
実のところこの香りの最初から最後まで、しっかりと酸味の効いたタンジェリンのジューシーな側面が存在します。このタンジェリンがジャスミンやサンダルウッドと溶け合い、そして、最後にあなたの素肌と溶け合うことを待ち望んでいるのです。
ドライダウンにつれて、この香りのために特別に作られた「アンバー001」と名づけられたアンバー分子が、バニラと結びつき、ムンムンとした甘さではなく、透き通るようなクリーンな甘さも加わっていくのです。
ルカ・トゥリンが4つ星をつけた香り
ボトルデザインもジョナサン・アンダーソンだけあって、凝りに凝ったミニマルなデザインです。トネリコの木製のキャップは、自然界とのつながりを示し、とてもミニマルな魅力があるのですが、M/M (Paris) によりデザインされたボックスの花の白黒写真も実に印象的です。
この写真は、20世紀初頭にドイツで植物学者兼写真家として活躍したカール・ブロスフェルト(1865-1932)によるものです。普段気づくことのない、植物の魅力的な形態を余すところなく伝える彼の白黒写真は、当時先駆的でしたルカ。そんな彼が1926年に撮影した写真が使用されています(2016年春夏ウィメンズ・コレクションのプリントにも採用された)。
ルカ・トゥリンは、『世界香水ガイド2018年版』で「今風のスイート・ウッディな香りに、突然、威嚇するような鋭い酸味のある美味しいトップノートが重なり合う。やややぼったいがスタイリッシュな香り」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:ロエベ 001 ウーマン
原名:Loewe 001 Woman
種類:オード・パルファム
ブランド:ロエベ
調香師:エミリオ・バレロス
発表年:2016年
対象性別:女性
価格:50ml/15,180円、100ml/21,120円
公式ホームページ:ロエベ
トップノート:イタリアン・タンジェリン、ピンクペッパー、ベルガモット
ミドルノート:サンダルウッド、エジプト産ジャスミン
ラストノート:バニラ、アンバー