ジャドール インフィニッシム
原名:J’Adore Infinissime
種類:オード・パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランソワ・ドゥマシー
発表年:2020年
対象性別:女性
価格:30ml/12,540円、50ml/18,040円
公式ホームページ:ディオール
未知なるチューベローズとの遭遇
オリジナルの「ジャドール」に、グラース産のチューベローズを加えることで、ロマンティックなランデブーを演出しました。あたかも「ジャドール」がチューベローズを誘惑し、抱きしめ、抱擁し、彩りや輝きを与えるかのように…そしてこの香りは、力強く自信に満ちたフェミニニティの象徴となるのです。
フランソワ・ドゥマシー
1999年にディオールが、アン・ゴットリーブの指揮の下、カリス・ベッカーにより生み出した「ジャドール」は、ノストラダムスの大予言を覆しました。それは恐怖の大王ではなく、世紀末の世に、愛を生む〝愛の女神の降臨〟として、ディオールの世紀末救世主伝説と呼ばれるほどのセンセーショナルなデビューを飾りました。
そして時が経ち、メゾン創立60周年、ジョン・ガリアーノ就任10周年を記念して、2007年に作られた≪完全無欠の≫ジャドール「ジャドール アブソリュ」が、ディオールの初代専属調香師に就任したてのフランソワ・ドゥマシーにより調香されました。その名の〝アブソリュ〟の通り、チューベローズ、イランイラン、ダマスクローズ、サンバックジャスミンといった4つの花々のアブソリュートがふんだんに使用されている実に華やかな香りでした。
さらに2010年には、黄金の輝きを与えた「ジャドール ロー」が、オード・パルファムよりさらに濃厚なエッセンス・ドゥ・パルファムとして誕生しました。その3年後の2013年に登場したのが、「ジャドール ヴォワル ドゥ パルファン」でした。その名も〝ジャドールのヴェール〟。香りのヴェールを身に纏うようなパウダリーなジャドール。このジャドールのディーバはアイリスでした。
そして、4年後の2017年に「ジャドール イン ジョイ」が発売され、さらにその3年後の2020年9月にパンデミックの最中に発売され、日本上陸は2021年10月29日にまで延期された新作が「ジャドール インフィニッシム」でした。〝インフィニッシム〟とは、〝無限〟という意味です。
アンフルラージュで抽出したグラース産チューベローズ
パンデミックの間、私はグラースで2か月間一人で誰にも邪魔されず、ラボを独り占めしました。 好きなことをすることができました。 そして、まだ日の目を見なかったプロジェクトの新しいアイデアも思いつきました。 家族はパリに滞在していたので、私は本当に自由そのものでした。
フランソワ・ドゥマシー
2006年にディオールの初代専属調香師に就任したフランソワ・ドゥマシーは、自分の生まれ故郷であるグラースを香水の聖地として蘇らせるために、まず最初に、キャロル・ビアンカラーナが率いる農園ドメーヌ・ドゥ・マノンとの独占契約を結ぶことにしました。
グラースで失われつつある香水のための花々を栽培するこの農園は、三代続いてきた〝グラースの最後の光〟でした。この光を失わないようにセンティフォリア・ローズやジャスミンなどの栽培の安定に協力したのでした。
さらに、1950年代までグラースは、チューベローズの産地だったのですが、今ではすっかり全滅し、インド産やメキシコ産が主流となっていました。そこでキャロルと協力し、再びチューベローズを育てていくことになりました。
チューベローズは、すぐに土壌の栄養素を枯渇させるため、継続して栽培することが非常に難しく時間のかかる花として知られており、最初の花が咲くまでに3年かかりました。
そしてチューベローズの供給が安定した後、ディオールはとんでもない方法で最高品質の精油を得ることを決めたのでした。19世紀から伝えられる精油製造方法である、アンフルラージュ(冷浸法・温浸法)という、溶剤を一切使用せずに、完全な手作業を必要とする、恐ろしく手間とコストのかかる方法でした。
このアンフルラージュにより抽出された、チューベローズの(失われがちなグリーンノートをしっかりと残した)グラン・クリュ(1キロ30万ユーロ)を、インド産のアニマリックなチューベローズとブレンドし、この香りが生み出されたのでした。
無限大ジャドールの光臨
チューベローズの花の香りはとても情熱的で官能的です。つまり避けることの出来ない麻薬のような花です。だからこそすべてを支配してしまいがちなこの香りの、フレッシュで一緒に過ごしやすい一面を強調していきたいと考えました。
フランソワ・ドゥマシー
〝無限大ジャドール〟は、爽やかなベルガモットとビターなブラッド・オレンジが、ピンクペッパーにより、弾き出されたシャンパンのように天空を舞い、ピリリと素肌に舞い落ちるようにしてはじまります。すぐに花の蜜を湛えたジャスミン・サンバックとローズのフローラルブーケに包まれてゆきます。
この香りが〝無限大〟であることは、太陽の光を思わせるイランイランが、生き生きとすべてを明るく照らしていく中、真夜中にその香りを強く放つ「夜の女王」チューベローズが、まるで太陽を飲み込んでいく満月のようにその妖艶な甘さを際限なく広がらせていくことから感じられます。
そして厳かに満ち広がるミルキーでまろやかなサンダルウッドが、火と熱さが切り離すことが出来ないように、ジャドールの無限大のしずやかな輝きをあなたと切り離すことが出来ないように結び付けてくれるのです。
(イランイランとジャスミン・サンバックの愛の証のような)キャンディーのような甘さに極めて近い、人々を魅了し、心を深く揺さぶるエレガンス。そんな甘さと優雅さの絶妙なバランスの中で身も心もよろめかされるのです。
〝無限大のジャドール〟それは、ジャドールの甘やかさが魂を覚醒させ、温かく鼓動し、行動する衝動を湧き起こさせてくれます。つまりはひとまとめになっていた花束が、解き放たれ、自由を謳歌していく感覚を、素肌と心で感じ取る香りなのです。
さらに、この香りを形容すると、それは性的魅力に恵まれる女性が、男性をギラつかせるオーラをしばし封印することにより、一緒に過ごしていて、温かく包み込まれるような、心地よさを与えてくれる、そんな〝無限大の安らぎ〟を与えてくれる香りとも言えます。
香水データ
香水名:ジャドール インフィニッシム
原名:J’Adore Infinissime
種類:オード・パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランソワ・ドゥマシー
発表年:2020年
対象性別:女性
価格:30ml/12,540円、50ml/18,040円
公式ホームページ:ディオール
トップノート:ブラッド・オレンジ、ピンクペッパー、ベルガモット
ミドルノート:チューベローズ、ジャスミン・サンバック、イランイラン、スズラン、センティフォリアローズ
ラストノート:サンダルウッド