ジャスミンの香り
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ジャスミンの香りについて
ここで香水の世界におけるジャスミンについておさらいしてゆきましょう。それはジャスミンの花についてインドの詩人が「地上の月光」と呼んだように、「素肌を照らす月光」のような役割を果たす、人間の体臭とよく合う、実にミステリアスな香りを生み出してくれる存在です。
まるで素肌にとろけて匂い立つ甘いフローラルの香りでありながら、その奥から閃光のようなアニマリックな匂いと、酔わせるようなリッチな果実の成熟した温かい薫りが同時に感じ取ることが出来る、捉えどころのない、夢中にさせる〝魔性〟があります。
白い花の精油の中では間違いなく〝女王〟の風格があり、花の精油で張り合えるのは他にはローズだけです。そんなジャスミンの〝魔性〟の秘密は、有機化合物インドールを含んでいるところにあります。
ジャスミンの品種が200種以上ある中で、香水のために使用される品種は2種のみです(ジャスミンの近縁種には、オリーブ、ライラック、オスマンサスなどがある)。ジャスミングランディフローラム(ロイヤルジャスミン)とジャスミンサンバック(アラビアンジャスミン)です。
ちなみに花の収穫は、太陽の熱により香気成分が損なわれないように、夜明けに、ひとつひとつを手摘みで摘んでいかなければなりません。そして、数時間以内に精油を抽出しないと、花がしおれて香りを失ってしまいます。主に溶媒抽出、アンフルラージュ、二酸化炭素抽出によって精油を製造してゆきます。
サンバック(Sambac)とは、サンスクリット語で〝酔わせる香り〟を意味するcampakaに由来します。かつて70年代まではエジプトでも生産されていましたが、今ではほぼインドと中国で生産されています。
中国ではマツリカ(茉莉花)と書くジャスミンサンバックは、アラビアンジャスミンとも呼ばれ、中国でジャスミンティーとして使用されています。
ストロベリー、アプリコット、アップル、ラズベリー、そしてほのかにブラックカラントのニュアンスも感じられるフレッシュでクリーミーなフルーティ・フローラルな香りが特徴のジャスミングランディフローラムに比べ、ジャスミンサンバックは、インドールが多く含まれるだけでなく、青葉アルコールによりオレンジブロッサムに近い、グリーンとアニマリックが繊細なバランスで、フレッシュで官能的な香りを広がらせるのが特徴です。
全体的な香り立ちは、スズランの爽やかさと青み、オレンジブロッサムのすっきりした甘さ、そしてチューベローズの艶やかな甘さが、フローラルブーケとしてひとまとめになり、ラズベリージャムやストロベリージャムのような陶酔感を与えてくれます。
ちなみに中国産のジャスミンサンバックは、インド産のように、インドールが多く含まれておらず、ジャスミン グランディフローラムよりもインドール臭が感じられません。
ゲランの「サムサラ」「ランスタン ド ゲラン」やトム・フォードの「ジャスミン ルージュ」、エルメスの「シダー サンバック」「ヴァンキャトル フォーブル」、ディオールの「ヒプノティック プワゾン」「ジャドール」、キリアンの「インペリアル ティー」、グッチの「グッチ ブルーム」にジャスミンサンバックの魅力が強く感じられます。
ジャスミングランディフローラムは、現在ではインド、エジプト、モロッコ、イタリアのカラブリア州、フランスで栽培されています。5枚から9枚の長い花びらが特徴です。
ジャスミンの収穫は、白い花びらが太陽に焼けるのを防ぐため、夜明けの早朝に行われます。ジャスミンサンバックの開花は5月から6月ですが、ジャスミングランディフローラムはそれより遅く開花し、8月から11月にかけて収穫されます(日本では6月から9月にかけて咲く)。


