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【パルファンサトリ】桜 Sakura(大沢さとり)

パルファンサトリ
©PARFUM SATORI
パルファンサトリ
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桜 Sakura

原名:Sakura
種類:オード・パルファム
ブランド:パルファンサトリ
調香師:大沢さとり
発表年:2004年
対象性別:女性
価格:50ml/17,600円
公式ホームページ:パルファンサトリ

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谷崎潤一郎の『細雪』の平安神宮の桜の香り

『細雪』©東宝

『細雪』©東宝

あの、神門を這入って大極殿を正面に見、西の廻廓から神苑に第一歩を踏み入れた所にある数株の紅枝垂、── 海外にまでその美を謳われていると云う名木の桜が、今年はどんな風であろうか、もうおそくはないであろうかと気を揉みながら、毎年廻廓の門をくぐる迄はあやしく胸をときめかすのであるが、今年も同じような思いで門をくぐった彼女達は、忽ち夕空にひろがっている紅の雲を仰ぎ見ると、皆が一様に、

「あー」

と、感歎の声を放った。この一瞬こそ、二日間の行事の頂点であり、この一瞬の喜びこそ、去年の春が暮れて以来一年に亘って待ちつづけていたものなのである。

『細雪』谷崎潤一郎

最初に、パルファンサトリ様のこの香りほど、谷崎潤一郎の『細雪』の平安神宮のお花見の場面を見事に再現し、さらには、1983年の市川崑監督の『細雪』のお花見のシーンで、五人の登場人物が嗅いでいる香りを再現してくれるフレグランスはないと思います。

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世界に評価された〝日本人の生み出した桜の香り〟

©PARFUM SATORI

「娘子らがかざしのためにみやびをが縵のためと敷きませる国のはたてに咲きにける桜の花のにほひはもあなに」(少女たちがかざしにするように、また風流の士がかずらにするように、大君の統治なさる国の果てまで咲いている桜の花の、美しさよ、ああ。)『万葉集』若宮年魚麿

万葉の時代から、日本のアートの中に描かれ続けてきたさくら。雅やかに春を告げ、散りぎわも美しいこの花を、私たちはこよなく愛してきました。花びらが風に舞うごとく、より軽やかに匂い立つように、日本特有の美意識を香りに託し、丁寧に処方を組みました。

公式ホームページより

現在日本で活躍する最も偉大なる調香師は、大沢さとり様だということに異論がある人はほとんどおられないと思います(2020年には、ザ・ペニンシュラ東京のルームアメニティの調香師に)。そんな彼女が2003年に創業したフレグランス・メゾン『パルファンサトリ』から2004年に発売された〝日本の花=桜〟をテーマにしたのが「桜 Sakura」です。

この香りは、2018年に出版された「Perfume the Guide 2018」(『世界香水ガイドⅢ☆1208』)にも取り上げられルカ・トゥリンにより以下の評価を受けました。

Sakura (Satori) ★★★★ minty fruity
I naturally expected a sentimental cherry-blossom floral in the manner of Shiseido’s Ever Bloom (2015), but that would be underestimating perfumer Satori Osawa. Instead, this is a lovely, transparent accord of perilla mint and a watery, quiet cherry fruit note against a smooth floral background. European perfumers guilty of garish fruity-florals would do well to study this one and repent.

ミンティフルーティ
私は当然のことながら、資生堂の「エバーブルーム」 (2015年)のようなセンチメンタルなチェリーブロッサムフローラルを期待したのだが、それは調香師大沢さとりを軽く見すぎていたようだ。それどころか、滑らかなフローラルを背景に、シソと水々しく静やかなチェリーフルーツノートが、可愛らしく透明感のあるアコードを奏でています。

派手なフルーティフローラルに罪悪感を抱くヨーロッパの調香師は、この作品を研究して悔い改めたほうがいいのではないだろうか。

『世界香水ガイドⅢ☆1208』ルカ・トゥリン

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身に纏う女性の個性を引き出してくれる〝桜の香り〟


成人式のために母のピンクの振袖を仕立て直したような〝気高き桜の香り〟。それがさとり様の〝桜の香り〟です。それは古来からずっとその場所で、花を咲かせ続けている桜の、昔と今を軽やかに往き来する、趣き深い花びらの表情を全身で受け止めていくようです。

新しい時代と世代に向けて、伝承する桜の心が、この香りの中にはあります。

チェリーの涼しげな甘酸っぱさに、潔いシソの香りが混じり合う中、凛とした和服美女のアップスタイルのうなじのような、キリっとしなやかなインセンスが静かに流れるように広がってゆきます。

すぐにパウダリーなチェリーブロッサムが、華やかに開花するローズとジャスミンの花の甘さを付け加えてゆきます。とても素晴らしいピンク色に満たされるようです。それは身に纏う女性の個性を引き出してくれるピンク色の香りです。

その人が持つ輝きの上にピンク色の桜を散りばめるのではなく、輝きにほんのりアクセントを加えていくように桜煌めくのが〝さとりざくら〟の唯一無二の華やぐ香り立ちの秘密なのです。

ドライダウンは、桜花爛漫な平安神宮が過ぎ去った後に、苔寺がやって来たかのような静謐な木と苔の余韻を残してくれます。ここで完全にこの香りは〝潔さで着る香り〟であるということを教えてくれるのです。

桜の香りは、花の中でも特にユニークで、ひとそれぞれ感じ方が違います。だからこそ、この香りは、潔くもはんなりとも着こなすことの出来る〝桜〟が生み出されています。さらに、さとり様の香りは、どの香りも年齢を味方にしてくれる香りのような気がします。

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香水データ

香水名:桜 Sakura
原名:Sakura
種類:オード・パルファム
ブランド:パルファンサトリ
調香師:大沢さとり
発表年:2004年
対象性別:女性
価格:50ml/17,600円
公式ホームページ:パルファンサトリ


トップノート:シソ、チェリー
ミドルノート:チェリー・ブロッサム、ジャスミン、ローズ
ラストノート:モス、ムスク、ウッディ、インセンス