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【インダルト パリ 特集記事第二弾】いち香水販売員が、わずか半年で起こした奇跡

香水特集記事
©Indult Paris
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【インダルトパリ PART2】
新しい香水界の希望の星・西條さん
2025年、香水販売の現場で頑張っている皆様にお伝えしたいこと

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【催事出店情報】
2025年2月10日~2025年3月5日 横浜NEWoMan
2025年3月7日~2025年3月12日 丸井今井札幌本店3階

2024年新年を迎え、いち香水販売員だった二人の女性は、日本に新しい香水をもたらすべく、夢と野望に燃えていました。そして早春、ミラノに飛びました。一年後、見事その夢を叶え、ふたたび早春、ミラノに飛びます。次は、日本の香水業界を夢と希望で満たすために。

日本で空前絶後の香水ブームが起こったのは、2020年3月から2023年5月にかけての新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの間、おうち時間が長くなったことがきっかけでした。この時期、人々は、香水をモテるためにではなく、自分の心を豊かにするために使うようになりました。

実は、香水ブームは、同じ時期に世界的なブームとなっていました。そんな流れの中、世界中で沢山のニッチ・フレグランス・ブランドが生まれ、ラグジュアリー・ブランドも高級フレグランス・ラインを作ることになりました。

そしてパンデミックが完全に明けた2023年10月のサロンドパルファンを皮切りに、日本全国でたくさんの香水ポップアップイベントが行われるようになりました。

今では堰を切ったように、たくさんのニッチ・フレグランスとラグジュアリー・ブランドの高級フレグランスが日本に到来しています。そんな中、史上空前とも言える人数の、香水販売員または、ラグジュアリー・ブランドの中で、フレグランスを併せて販売できるスタッフが求められる時代がやって来ました。

日本の香水ブームは、2025年に入り、一時的なブームとして鎮静化していくのか、日本の香水文化が豊かになる礎となるのか、今年の香水業界の動きで全てが決まることでしょう。

さて、香水業界の影響力は、『企業からの時代』から、『個からの時代』に移行しています。その先鞭をつけたのは、ルシヤージュ京都の米倉さんなのですが、その後に、ART EAUの白石さんやEDIT(h)の葛和さん、調香師の大沢さとりさんといった方々が、業界を引っ張っていく存在として頭角を現しています。

その流れで、新しい香水界の希望の星として、彗星の如く現れたのが、いち香水販売員が、ミラノに飛び、香水販売代理店になる〝奇跡〟を成し遂げた西條さんと原さんです。

インダルトパリの日本販売総代理店の共同経営者の西條さんについて、私の第一印象は、帰国子女のニュースキャスターのような話し方をされる方だという印象でした。いつも笑顔で、彼女がいるだけでぱっと周りが明るくなる存在。後は、超一流の香水知識を持ちながら、新しいことを知ると一生懸命メモを取られる真面目な方。そしてもうひとつ、とにかくお客様に愛されている方、いいや、ちょっと違うな。より正確に表現するなら、人間として慕われている人。

昨年10月から12月にかけて東京・伊勢丹新宿店を皮切りに、名古屋栄三越、京都伊勢丹、仙台三越で開催された、日本最大の香りの祭典サロンドパルファンにおいて、大いなるセンセーションを巻き起こしたニッチ・フレグランス・ブランド「インダルト パリ」。

2024年12月に公開した西條さんへの独占インタビューが、業界内だけでなく、香水を愛し、香水に関わる仕事をしていきたいという人々にとっても大いなる反響を与えることになりました。

そこで2025年1月に、彼女にサロンドパルファンを終えた後の現状についてお聞きすることにしました。香水に対する愛が深まり、香水業界で働きたいと考えておられる老若男女の皆様、現在、香水業界で働いているが、自分がいる環境に不安を感じている皆様に、西條さんのインタビューから、元気とヒントを得て頂ければ幸いです。

2025年2月18日、現在エッシェンス(ヨーロッパ最大級のニッチ・フレグランスの見本市)のためミラノにおられる御多忙な中、記事の最終確認をして頂きました。下の写真は、西條さんが送って下さったミラノの写真です。

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インダルト パリから『日本限定の香り』が誕生するかもしれない。

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――― 西條さん、あけましておめでとうございます。去年の同じ時期には、すでに3月のミラノ行きが決定し、ディストリビューターとして、いち香水販売員からキャリアアップする夢と野望に燃えていたと思うのですが、今はどのような心持ちでしょうか?

あけましておめでとうございます。実は、今年も2月にミラノに行くのです。それは兎も角としまして、長いようで短い一年でした。ずっと私が店頭でご案内してきたメゾン・フランシス・クルジャン。その調香師であるフランシス・クルジャンが若き日に作った「インダルト パリ」と出会えたことは、本当に運命的でした。そして10月のサロンドパルファンで日本初上陸を無事果たし、お陰様で予想を大幅に越える反響をいただいております。

――― さっそく驚かされました。今年の2月にふたたびミラノに行かれるということですが、エッシェンス(ヨーロッパ最大級のニッチ・フレグランスの見本市)に行かれるのでしょうか?

はい。新しい出会いを求めてふたたび行きます。

――― 相変わらず、行動の早い方です。

そしてもう一つ、インダルト パリのオーナーのキム(・チャールズ)が、ヨーロッパの香水業界で、日本市場が好調だと話して下さり、何人かのニッチ・フレグランス・ブランドの関係者の方々を紹介して頂く予定です。

――― すごいですね!キムさんはとても魅力的な方ですよね。私も少しだけお話しさせて頂いたのですが、どんな事に対しても好奇心旺盛な、永遠の少年のような心をお持ちの方ですね。

はい、キムとは、共同経営者の原さんと一緒に、伊勢丹新宿のサロンドパルファンが終わった後、京都や金沢など日本各地をアテンドさせて頂いたんですけど、すっかり日本文化が気に入られたようでした。その後、インダルト パリが日本でとても売れていることもあるのですが、日本限定のフレグランスのようなものを作りたいねという話をしています。

――― 日本限定のフレグランスということは、ルシヤージュさんでしか購入できない『京都限定の香り』が誕生するかもしれないということですよね?ルラボの「シティ エクスクルーシブ」のようで、とても興味深いです。

キムは、一流調香師の人脈も豊富な人なので、フランシス・クルジャンに匹敵する、有名調香師にお願いしようという話になっています。

――― クルジャンにまたお願いしないのですか?

ディオールの専属調香師ですから…

まだ現実化するかはわかりませんが。今、日本人に愛されている香水を作っている人。例えば「レイジー サンデー モーニング」や「ロストチェリー」を調香したルイーズ・ターナーさんや、私が大好きなクエンティン・ビスクさんにお願いできればいいなと話しています。

あとエルメスの「オー デ メルヴェイユ」を調香したナタリー・ ファイツァーが三年かけて2021年に生み出した「My Ju-Ju」の復刻も計画されてます。

――― インダルト パリさんの五番目の香り「My Ju-Ju」の復刻楽しみです。

バニラとコーヒーがうっとりするほど美しく匂い立つホワイトフローラルの香りなんですよ。

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インダルト パリ取り扱い一号店は、ルシヤージュ京都。

――― 2025年1月25日に、インダルト パリのオンラインショップが、ついにオープンしましたね。

はい。当初は去年の12月5日で予定していたのですが、嬉しい悲鳴なのですが、商品の確保が出来ませんでしたので、1月までずれ込んでしまいました。

――― さらに、その一週間前から、はじめて店舗でインダルト パリの香水がレギュラー販売されることになりました。その店舗がルシヤージュ京都さんであるのは、西條さんにとって良き先輩である米倉さんとの信頼関係から生まれたことなのですか?

信頼関係もありますが、米倉さんはブランドの精神を大切にして下さる方です。ブランドに対する敬意からその情熱が伝わりお客様に適切にお伝えできる方だと思っています。

――― なるほど、そして米倉さんはインダルト パリを、去年12月にリニューアルされたばかりの町屋スタイルの店舗で扱ってみたいと思ってくださったのですね。

はい。丁度、新宿伊勢丹のサロンドパルファンが終わった後、キムをお連れして、ルシヤージュ京都さんを訪問したんです。その時はまだ旧店舗だったのですが、ヨーロッパの香水ショップを端から端まで知り尽くしているキムが、米倉さんの人柄と情熱、お店の雰囲気に感動しておられたのです。その時に、他に何箇所かお店にご挨拶させて頂いたのですが、一番最初に取り扱いして頂きたいお店はココしかない!と話していたのです。そしてキムは「シンペイのために何かインダルトパリができる事はないか」と米倉さんを気遣う様子さえ見受けられました

――― そして念願が叶えられたわけですね。数年前までは、お客様として来店されていたお店で、ご自身が扱われるフレグランス・ブランドを取り扱って頂けることは、感慨深いものがありますよね?

ホントに!インダルト パリの香りを、米倉さんと二人のスタッフの方々がどのようにご案内して下さるかとても楽しみなんです。

――― ルシヤージュ京都さんの二人のスタッフの方々は、それぞれがブルーベルとNose Shopのトップオブトップと呼ばれた凄い方ですよね。ちなみに、新しくなったルシヤージュさんには伺われましたか?

はい。去年12月6日の内覧会に招待頂いて、お昼に伺わせて頂きました。いまだかつて存在しない町屋の雰囲気にただただ圧倒されました。カイエデモードさんも内覧会に行かれたのですよね?

――― はい。夜にお伺いしました。リナーリのナターリアさんやRフレグランスの村井さん、そして梅田阪急の方が来ておられました。私も西條さんと同じで心から圧倒されました。私の印象は、八重洲のシャングリ・ラのようなラグジュアリーな空間だなと感じました。活けられた花もある本物志向の和空間の中で、坪庭までしっかりあって、なぜかジヴェルニーにあるモネの庭を思い出しました。それほど静謐な美しい空気が流れている空間なのです。日本の香水文化は、ルシヤージュさんによって、新たなる扉を開かれたのだなと感じました。

本当!私も、このような空間が誕生したことにより、お客様の香水との向き合い方も変わっていくような、さらに言うと、販売員にとっても自分の職業に誇りが持てるような環境が誕生した瞬間だと感じました。

そうそう、元々私の顧客様だった方も、スタッフ(東京のイベントで参加されている男性の方)としてその場におられて、本当に生き生きと輝いておられたので、私までとても嬉しくなりました。

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2025年の日本の香水業界のキーワードは『ご縁と目的と情熱』。

――― ルシヤージュ京都さんだけでなく、今年の春は、ラルチザン、フエギア、ヴァン・クリーフ&アーペル、新しいフレグランス・セレクトショップなど東京・大阪でたくさんの新店舗が誕生していくようです。つまりプロフェッショナルとして香水販売の仕事の重要性が増していきそうですよね?

はい。ただ黙々とムエットに香りを吹きかけて、自分で選んでという風に売ればいい仕事ではなく、香水初心者のお客様には、丁寧に香りを使う喜びをお伝えし、香水愛好家のお客様には、その愛について共感し合い、ワクワク感をもって、香りを選んで頂けるような接客をしていきたい!と考える新しい香水販売員さんが増えていくと思います。

――― そう言えば、元々西條さんの顧客さんで、西條さんの接客に憧れて香水販売員になられた先程の方が、私にこう仰ったことがあるんです。

「ファッションと香水が好きで、学生時代に、都内で、香水を購入する時、ずっと販売員さんの仕事は、香りをムエットに吹きかけて無言で立っていることだと思っていました。ですが、西條さんの接客を受けて、心の底からびっくりしました。心と心が通じ合うような感覚を得ることが出来たからです。そして西條さんと一緒に選んだ香水が、自分にとってとてもスペシャルなものであることに気づき、私もこの仕事をしたいと考えたのです」と。

そのように考えて下さっていたのですね。とても嬉しいです!

――― あの方は、通常、伊勢丹新宿のリナーリさんで働かれているのですが、ルシヤージュ京都さんが東京で行われるポップアップイベントには、必ずおられて、彼を目当てに、来客されるお客様も沢山いると聞き及んでいます。

そうですよね!新しい香水界の希望の星ですよね!

私はお客様と香りと全く関係のない話をよくするのですが、フレグランスの販売のスペシャルなところは、商品のご案内だけでなく、お客様のパーソナルな部分を垣間見ることができる事だと思います。私が何かを購入する時も商売としてだけではなく、心と心で結びつく瞬間に喜びを感じられる販売員さんから購入したものは、もっと尊く感じられますものね。

――― だからこそ接客スペースが大切なのですね。一昔前は、商売的に、スタッフの役割を代替えがきくようにするために「あなたの感性で選んでください」というスタンスが香水販売の常套文句で使われてきましたが、まともなレストランでワインを自分で選んでくださいとは言わないですよね…

(間を置かずに)そうなんです。私がかつてルシヤージュさんで椅子に座って、米倉さんからとても丁寧な接客を受けた時に感じたように、嗅覚は、色々な知識を知り、積み重ねて、鍛え上げられていくものだと思うのです。調香師の方々も、感覚でフレグランスを作ってはいないでしょうから。

――― ルイ・ヴィトンの某店舗のフレグランス・マネージャーの方も部下と共に、ルシヤージュさんの伊勢丹新宿ポップアップに伺い、その香水案内を体験し、自分たちの接客姿勢に取り入れていこうと熱心に動かれています。エルメスやカルティエはまだまだですが、一流ブランドのフレグランスとの向き合い方が急速に変わりつつあるように思います。

と言いますと?

――― 定期的に顧客様に来客を案内することが出来る唯一のラグジュアリー・アイテム。

なるほど!高価な商品しか置いていないラグジュアリー・ブランドにとって、定期的な来客をして頂くことは、大切なことですよね。「新しいバッグが出ました」とはご案内しにくいですが、「新しいフレグランスが出たので遊びに来てくださいね」とご案内するのは、お互いに気安さが生まれますよね。

――― そして、新しい高級品やジュエリーが、ゆるやかに案内されるきっかけが生み出されるのです。ラグジュアリー・フレグランスは、まさにブランドからの招待状=アンバサダーとしての役割をもっともっと果たしていくだろうと考えられています。もちろん、そのためには、スタッフがフレグランスを通して、ブランドの精神をストーリーシェアする能力を高めないといけないのですが。

そうですよね。私もラグジュアリー・ブランドにとってフレグランスはとても相性の良いものだと思います。まずは、ブティックの空間を堪能し、一本フレグランスを選んでいく過程で、そのブランドで働く販売員の方のブランドを代表するものとしての佇まいに憧れ、今度はバッグやジュエリーを購入したい!と考えるわけですから。つまりフレグランスはブランドの精神をお伝えしやすい商品だと思います。

――― なぜこのようなお話をお伝えしたかと言いますと、フレグランスに対するお客様の向き合い方は、変化しており、一部のラグジュアリー・ブランドはその変化を敏感に察知しているという事をお伝えしたかったからです。つまり、フレグランスを購入するプロセスを楽しむ〝香りのコト消費〟の傾向が高まりつつあるように思えます。

私もそれは強く感じます。

――― そんな中で、香水販売員として頑張っている皆様にとって、これから重要なことは何だと思いますか?

私は、ご縁と目的と情熱だと思います。カイエデモードさんとの縁もそうなのですが、香水業界の色々な人との出会いなくして、道は開いていかないと思います。そして目的です。どうしたいのか、どうなりたいのか。そんなに大きい目的を持つ必要はありません。ただ明確にビジョンを持つこととその目的を果たすための情熱を絶やさない事だと思います。「香水が大好き!」それも立派な情熱ですよね。順番は情熱が先でも後から全てはついてきます。

――― 一方で、老舗の香水販売代理店や人気のある香水ブランドで働いている方の多くは、安い給与と重労働に打ちのめされて、生気を失っているようにも感じます。インバウンドの対応で忙しい店舗だと、接客というよりも、マラソンを走ってるような感覚になってしまうでしょうから。

香水販売も二極化していくべきでしょうね。お決まりのものをご購入される方と、しっかりと説明を受けたい方という風にです。お客様にあわせて、軽く接客する人とスペシャリストの人という風に、給与を変えていくと、香水業界はより遣り甲斐のある環境に変わっていくと思います。

――― 香水を販売することは、プロフェッショナルなことだという意識が、各企業に広がっていくと、香水販売を取り巻く環境がしっかりと整備されていくのでしょうね。このことを教えてくださったのが、ルシヤージュ京都さんだと私は思います。

ルシヤージュ京都の米倉さんの下に、二人の素晴らしいスペシャリストの方々が集まったのも、会社の垣根を越えた、交流があったからこそだと私は考えます。そのような交流は、フレグランスに対する知識も深めていきますし、一石二鳥ですよね。

――― 井の中の蛙の如く、ウジウジやっていても何も変わらないという事ですよね。つまり2025年、香水販売員をしている人々、または香水業界で働きたいと考えている人々にとって、〝ご縁と目的と情熱〟が大切だという事ですよね。

良き先生を見つけると、自然に、香水業界において自分が出来ることの可能性は広がっていくと思います。まだまだ狭い業界なので横のつながりを大切にしながら販売員にとってもお客様にとっても良い環境が作られていく事を願っています。より多くの方々に香水の楽しみ方がお伝えできればと思います。

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インダルト パリについて(基本情報)

フランシス・クルジャン

2009年に「メゾン フランシス クルジャン」を創業する3年前にあたる2006年4月9日に、フランシス・クルジャンが、ジュリアン・マセリと共にインダルト パリを設立しました(2007年1月より香水販売は開始された)。

ブランド名はラテン語の〝Indultum=恩恵〟に由来し、フランス国王またはローマ法王が高貴な個人に与える特権を意味します。それぞれ999本限定の生産数の3種類の香りからはじまりました。

2010年すっかり衰退しつつあったこのブランドをクルジャンから譲り受けたキム・チャールズにより、2013年、ブランドは復活し、2024年10月〝天国にいちばん近い純粋なバニラの香り〟と世界中で今もSNSで話題になり続けている香り「ティオタ」と共に、日本に初上陸を果たしたのでした。

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全作品

イスバラヤ(2006)
ティオタ(2006)
マナカラ(2006)
キュイール404(2008→2024)