衣裳考証を担当したのは、甲斐庄楠音。
徳姫ルック2
- 薄いピンクの熨斗柄の打掛
- 水色の唐草模様の小袖
この作品は、明らかに従来の時代劇とは違う空気を生み出すことを意図して製作されています。それは甲斐庄楠音(かいのしょう ただおと、1894-1978)という画家であり風俗考証家を起用することにより、生み出された独特の世界観でした。
だからこそ、この作品をもってして、昔の時代劇には違和感があると考えるのは笑止千万なのです。つまり、この作品は、公開当時においても、人々がそれまで見ていた時代劇とは全く違う世界観で描かれていた作品だったのです。
岩崎加根子 VS 杉村春子
徳姫ルック3
- エメラルドブルーに朱色の模様(マティスの絵のような)が入った有職文様の打掛
- 薄紫の小袖
岩崎加根子の静の芝居の素晴らしさは、姑役の杉村春子と対峙する事により、頂点に達します。抑えすぎずに抑えた静の雰囲気が、奥行きのある人物像を生み出していきます。そして、徳姫は、物語を飛び越え、今では着物を着ることがなくなり失われた日本人女性の美を、私たちに再発見させるタイムレスアイコンとして再評価されるのです。
素晴らしい時代劇とは、映画の中の時代に、登場人物が生きている作品です。それは、見る人に対しても教養が求められます。これはファッションにも相通じるものがあります。なぜ人々は、スーツをちゃんと着なくなったのでしょうか?それと同じことです。
この作品の中には、脇役に至るまで、着物を通して培われた日本人女性の優美さを知ることが出来るのです。