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『反逆児』 日本の美24 (3ページ)

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作品名:反逆児 (1961)
監督:伊藤大輔
衣装:三上剛
出演者:中村錦之助/岩崎加根子/佐野周二/杉村春子

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キミは中村錦之助という日本人を知っているか?

昔の時代劇の方が、今の時代劇よりも遥かにカッコよかった!

中村錦之助。この作品の10数年後に、子連れ狼になる男。

私たちはまだ生まれていなかった時代の時代劇を振り返る必要があるだろう。少なくとも、ファッションというものに関わる仕事をしているのならば、洋服の映画だけを見ていても、日本人のファッションの本質を理解することは出来ません。過去における日本人の装いの美学を知らずして、ファッションについて語ることは出来ないのです。

私たちのファッションの奥底には、全く意識せずともたえず〝着物の美学〟が存在するのです。そして、数年前まで全く見ることのなくなった着物姿が、今では京都で、沢山見ることが出来るようになりました。それは観光客に対するレンタル着物という形であり、時には、カラフルすぎて、安っぽい生地感のものがほとんどなのですが、そういった着物リバイバルの波の中で、本物の着物を着る日本人も、京都において急激に増えてきているのです。

その火付け役となったのは、外国人観光客に対する着物レンタルからでした。どうやら私たち日本人は、外国人に評価されることにより、独自の日本文化に対して自信を回復する傾向があるらしい。そんな外国人を惹きつけて止まない〝和の美学〟を分析する絶好の作品<特に、日本人女性の幽玄さを伝えてくれる作品>が、この『反逆児』なのです。

ここには、まことにあっぱれな時代劇の男性像を演じあげた中村錦之助(1932-1997)という稀代の時代劇スターの存在感があります。そして、それに対峙する様に、杉村春子(1906-1997)というオンナの究極を演じることが出来る名女優の存在があります。この二人が、今の時代劇からは感じ取るのことの出来ない時代劇の空気を生み出しています。そして、そんな空気の中に、第三の女として、登場するのが、我らが岩崎加根子様(1932-)なのです。

それは、日本人女性の真の魅力の全てを体現した役柄でした。

藁人形を五寸釘で打つ杉村春子


白装束に、白塗り、頭に五徳をかぶり、そこに三本の蝋燭を突き立て、丑の刻参りする築山御前を演じる杉村春子という女優の凄さは、どんなメイクを施されようとも、そこから女性の怖さと情念を生み出すところにあります(当初、この築山御前役は、黒澤明監督の『蜘蛛巣城』において鷲津浅茅を演じた山田五十鈴が演じる予定でした)。

推参な!」(無礼なやつだ!)といった、現代では決して使用されないクールな狂言調の台詞の数々が本当にサマになっています。

そして、この作品を、戦国時代を舞台にしたシェイクスピア劇と言わしめるは、彼女の存在感がとても大きいのです。そして、彼女の存在があればこそ、岩崎加根子は思う存分、戦国時代の姫様の持つ日本人女性の美を示すことが出来たのでした。

病鉢巻姿で初登場する徳姫=岩崎加根子

「なりませね!おなごにはおなごの・・・おなごだけの掟がございます」イチイチ素晴らしい岩崎加根子の台詞回し。

病鉢巻で登場する徳姫=岩崎加根子こそが、この作品における真の主人公です。

戦国時代の政略結婚により生み出された夫婦間の緊張感が、夫であろうとも妻の寝室に、なかなか入ることの出来ない不条理さを生み出しています。そして、その葛藤が、夫に浮気の虫を起こさせ、破滅のはじまりとなったのでした。それは、個人と個人で関わることの出来なかった男女の悲劇の物語です。

徳姫の不幸は、常に側に小侍従を置き、自分の目で物事を見る習慣がないことにありました。

そして、そういった小侍従というフィルターが、彼女の貴人としてのプライドを保つ役割を果たしていたのです。この女性の姿に、共感を覚える現代女性は多いことでしょう。なぜなら、スマホやSNSという小侍従にいつのまにか支配され、貴人のプライドに包まれた女性が多く存在するからです。そして、そんな女性が真に愛されることは難しいのです。

更にそれはファッションの概念においても適応されます。どれほど美しい女性であろうとも、「わらわ綺麗なかや」と尋ね回るその姿にうんざりさせられるものなのです。

やがて殿上眉が生み出す魔性の魅力の虜となる

現代の視点で見ると奇異な殿上眉は選ばれしものの証です。

そして、その所作の全てがお姫様そのものである岩崎加根子。

そして、そっと打掛をかけてもらうその姿。

こういった一連の流れを〝様式美〟と申します。

小侍従を演じる喜多川千鶴(1930-1997)もとても良い。

本作の少し前に名作『宮本武蔵』の撮影を終えていた中村錦之助。

素晴らしい「心無いのはわらわであった」の台詞回し。

徳姫ルック1
  • 水色とピンクの植物文様の打掛
  • ピンクの小袖

殿上眉とお歯黒でどこまでもリアルに当時の戦国時代の姫様を再現したこの作品は、古めかしいと感じさせるよりも、芸術性の高い斬新さと普遍性を感じさせます。そして、何よりも、打掛を身に纏いし、岩崎加根子の所作の素晴らしさが、言葉では正確に言い表せない日本の美の本質を伝えてくれています。

  1. 全ての所作が、静であることが美の基準となる、つまり、歩くときも、衣を身に纏うときも、無音でやってのけることが重要なのだ。
  2. 獣のような笑い声。
  3. これはヴィヴィアン・リーが片眉だけをあげるが如しの岩崎加根子の十八番のものだが、うつろな目になる幽玄さ。

そして彼女はこの後の内田吐夢/中村錦之助の『宮本武蔵 一乗寺の決斗』(1964)において、吉野太夫というこれまた日本の和の美学を体現した役柄を演じあげるのでした。

それにしても、小侍従に打掛の着付けをさせる所作と手順と手馴れた感じがとても美しいです。それはまさに、ファッションの本質を教えてくるシーンなのです。つまりは自分自身で着ることを想定していないファッションこそが真のファッションなのです(パリコレ等のコレクションのファッションもその大半は自分自身では着る事が出来ない)。

そもそもファッションというものは、自分自身で着ることが出来ないからこそファッションであるという美学なのです。

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