グレイス・ジョーンズという女
ジャン=ポール・グードによって撮影された二枚の写真が、今ではグレイス・ジョーンズを象徴する写真になっています。
超一流のファッション・モデルとして70年代に彗星の如く現れ、直ぐにその枠を飛び越え、歌手・女優としても活躍した彼女は、間違いなく80年代の寵児でした。
1948年に裕福な政治家の娘としてジャマイカで生まれた彼女は、1961年に家族と共にニューヨークに移住し、66年にパリに移り、179cmの長身を生かしファッションモデルとしてイヴ・サンローラン等のビッグメゾンのランウェイを歩き、「ヴォーグ」「エル」等の表紙を飾ることになります。そして、この頃より、ジェリー・ホールやジェシカ・ラングと一緒に住むほどの大親友になります。
1977年からは音楽活動に専念し、ニューヨークの「Studio 54」等のクラブでの活動を通じて、アンディ・ウォーホルとの交流を深め、ファクトリーの活動にも参加します。そして、1981年にディスコミュージックのアルバムが大ヒットし、歌手としても成功を収めます。
そして、その頃に交際していたフォトグラファーのジャン=ポール・グードにより彼女のビジュアル・イメージは完成したのでした。1984年にアーノルド・シュワルツェネッガーの『キング・オブ・デストロイヤー/コナンPART2』に出演し、女優としての活動も開始します。そして、アルバート・R・ブロッコリが彼女の個性的な存在感に夢中になったのでした(元々は『007 オクトパシー』のオクトパシー役の候補にも挙がっていた)。
2020年は近未来ファッションがトレンド
ラグジュアリー・ストリートというブームがひとつ落ち着いて、恐らく近未来ファッションがこれからのファッションシーンに革命を起こしていくであろう中、小休止するかのように2020年はじめのファッションシーンはミニマルへと戻りつつあります(ボッテガ・ヴェネタが象徴するように)。
そんな中で、これからのラグジュアリー・ブランドが学習すべきスタイルは、グレイス・ジョーンズとアズディン・アライアによる近未来ファッションの先駆け的なシルエットです。まさに『ブレードランナー』(1982)に出てきそうなこのシルエットこそが、これからの時代の主流になっていくことでしょう。
それはリアル・クローズに疲れた現代人の・・・いいや、不景気の中で、現実逃避したい現代人たちの毎日がハロウィン・ファッションのはじまりとも言えるのです。コスプレではなく、明るい未来が全く見えない時代だからこそ、退廃的な近未来ルックを人々は求め始めているのです。
メイ・デイ スタイル6
ブラックレザーブルゾン
- デザイナー:アズディン・アライア
- イエローフード付きブラック・レザー・ブルゾン
- ブラックレザーロンググローブ
- ブラックレザーコルセット
- ブラックレザーサブリナパンツ
- 黒と黄色のバイカラー・アンクルストラップサンダル
実はこのスタイルは、『スーパーマンII 冒険篇』(1980)のサラ・ダグラスが着ていたファッションに近いものがある。
メイ・デイ スタイル7
スカートスーツ
- デザイナー:アズディン・アライア
- チョークストライプのスカートスーツ
- ラウンド・サングラス
- 黒のハイヒールパンプス
メイ・デイ スタイル8
オールレザー・ルック
- デザイナー:アズディン・アライア
- パットウイングスリーブ・レザーブルゾン
- スリムパンツ→後半はレザーパンツ
メイ・デイ スタイル9
ボディコンシャス・ドレス
- デザイナー:アズディン・アライア
- フードつきグレーチュニック、裏地は水色
- グレーノースリーブボディコン
- ブラック太ベルト
- ブラックレザーロングブーツ
そして、ナオミはチーターと走る!
グレイス・ジョーンズの存在が、ナオミ・キャンベル(1970-)というブラック・スーパーモデルの原動力になったのは間違いありません。
そして、ジャン=ポール・グードはハーパースバザーのために2009年にアフリカ大陸で、ナオミをチーターと走らせるのでした!
作品データ
作品名:007 美しき獲物たち A View to a Kill (1985)
監督:ジョン・グレン
衣装:エマ・ ポーテウス
出演者:ロジャー・ムーア/クリストファー・ウォーケン/グレイス・ジョーンズ/タニア・ロバーツ/アリソン・ドゥーディ
- 【007 美しき獲物たち】三代目ボンド=ロジャー・ムーアの最終作
- 『007 美しき獲物たち』Vol.1|ロジャー・ムーアとデュラン・デュラン
- 『007 美しき獲物たち』Vol.2|ロジャー・ムーアとルイ・ヴィトン
- 『007 美しき獲物たち』Vol.3|ロジャー・ムーアとレザーブルゾン
- 『007 美しき獲物たち』Vol.4|クリストファー・ウォーケンとカルティエ
- 『007 美しき獲物たち』Vol.5|クリストファー・ウォーケンとドルフ・ラングレン
- 『007 美しき獲物たち』Vol.6|グレイス・ジョーンズとアズディン・アライア
- 『007 美しき獲物たち』Vol.7|グレイス・ジョーンズとジャン=ポール・グード
- 『007 美しき獲物たち』Vol.8|タニア・ロバーツという悲劇のボンドガール
- 『007 美しき獲物たち』Vol.9|タニア・ロバーツの80年代プレイメイトルック
- 『007 美しき獲物たち』Vol.10|アリソン・ドゥーディと取貝麻也子