イングリッシュ ペアー & フリージア コロン
原名:English Pear & Freesia Cologne
種類:オーデ・コロン
ブランド:ジョー・マローン・ロンドン
調香師:クリスティーヌ・ナジェル
発表年:2010年
対象性別:女性
価格:30ml/11,880円、50ml/16,940円、100ml/23,650円
公式ホームページ:ジョー・マローン・ロンドン
クリスティーヌ、はじめてのジョー・マローンの香り
1990年にジョー・マローンが創業したジョー・マローン・ロンドンは、2008年9月3日に日本初上陸しました(東京・新宿の伊勢丹に上陸し、1年後に丸の内に日本初の路面店をオープンさせました)。そして、世界的に、このブランドが爆発的なブームを生み出すことになったのは、2010年9月に誕生したひとつの香りによってでした。
その香りの名を「イングリッシュ ぺアー & フリージア コロン」と申します。2003年に創業者のジョー・マローンは乳癌になってしまい、回復を遂げ、仕事に復帰するも、2006年にクリエイティブ・ディレクターを辞職しました。
そして2009年3月、フランス人のセリーヌ・ルーという女性が、ジョー・マローン・ロンドンの新しいクリエイティブ・ディレクターになりました。彼女こそが〝フレグランス・コンバイニング〟というブランディングを立案した人でした。
セリーヌ自身は調香師ではありません。彼女は、元々ディオールとエスティローダーのメイクアップ部門で働いていました。南フランスで生まれた彼女の祖父は花の輸入業をしていました。グラースで生まれ育ったわけでもないセリーヌは、ロンドンのフラワー・マーケットなどで精油を購入し、成分の勉強を一から独学で行いました。それはちょうどジョー・マローンのようでした。
現在、ジョー・マローン・ロンドンのフレグランスを作る調香師たちは、イギリス人ではありません。しかし、彼らがクリエイトするときには必ずイギリスに滞在してもらいます。私もフランス人ですが、ロンドンに住んでいます。外国人だからこそ、より敏感に感じ取れる英国の魅力を、自分の目と鼻で感じ、フレグランスに反映させることが出来るのです。
セリーヌ・ルー
そして、一番最初の香りの創造のためにセリーヌは、クリスティーヌ・ナジェルに調香を依頼したのでした。クリスティーヌは、この作品以降、ジョー・マローン・ロンドンの主任調香師的な役割を果たし、ブランドの中興の祖となるのでした(2016年1月よりエルメスの二代目専属調香師となる)。
ジョン・キーツの『秋に寄せて』から生まれた香り
私は、完全に熟した洋ナシにかぶりついた瞬間に、ジュースが顎に垂れる瞬間を香りで表現したかったのです。
クリスティーヌ・ナジェル
この香りは、わずか25歳の若さで世を去った英国の詩人ジョン・キーツが、1819年に書いた豊饒な秋の実りを謳う輝かしい自然賛歌『秋に寄せて(TO AUTUMN)』からインスパイアされた香りです。夏から秋へと移り変わる時期の、イギリスの果樹園の魅惑的な魅力を表現しています。
日本の和梨は冷やして食べると美味しい位に水分を含んでいるのですが、洋ナシは熟成させてから食べるものであり、その甘味の濃厚さが全く違い、香りもより濃厚です。
フランスで洋ナシと言えば、ラ・フランスとル・レクチェが有名なのですが、世界的にも生産量の多い洋ナシの品種がキングウィリアム・ペアー=バートレットです。
洋ナシの中でも完熟した時の芳醇な香りは強く、甘味の中にほどよい酸味があり、〝最も理想的な香りを持つ洋ナシ〟といわれています。この香りをアコードで再現しています。
ジョー・マローンで最も人気のある香りの誕生
10年経った今でも、根強い人気を誇っています。何よりも魅力的で身につけやすいフレグランスであること。そして、甘美で、黄金色で、楽しい香りです。普遍的なエレガンスと独特のフレッシュさがあるからこそ、長年にわたって人気を保っているのだと思います。ユニークで個性的でありながら、突飛なところがない香りなのです。
セリーヌ・ルー
熟しつつある太陽の親友である洋ナシの香りを乗せて、ムスクの霧が漂う中、みずみずしいメロンとパリっとしたルバーブが、サクサクとジューシーなフルーツとフレッシュなグリーンの輝きで肌に浸透していくようにしてこの香りははじまります。
実に興味深いのは、弾けるように拡散するのではなく、肌の中に向かって進んでいくように香り立つところにあります。
すぐにマルメロにより芳醇な甘さを滴り落す洋ナシの前に、暮れ行く空を彩るように白いフリージアが、千切れ雲の如くグリーンなスパイシーさを広がらせてゆきます。
そして夕日が大地をバラ色に染めるようにローズとパチョリが広がり、ルバーブと透き通るように清らかな三重奏を、肌の上で奏でてゆくのです。
やがて、黄金のアンバーの煌きがシャワーのように全身に降り注ぎ、黄金の果実と純白の花々のコントラストが、うっとりまったりと肌を透かして心に、エレガンスと甘やかな余韻で満たしてくれるのです。
単体で所有しても、「フレグランス・コンバイニング」のベースとして所有しても、どちらでも非常に使い勝手の良い万能スキン・フレグランスです。
この香りはどこかジャン=クロード・エレナの「庭園のフレグランス」を連想させます。そして、この作品で重要な役割を果たしたルバーブが、ナジェルによるエルメス最大のヒット作「オー ドゥ ルバーブ エカルラット」へと繋がっていくのでした。
香水データ
香水名:イングリッシュ ペアー&フリージア コロン
原名:English Pear & Freesia Cologne
種類:オーデ・コロン
ブランド:ジョー・マローン・ロンドン
調香師:クリスティーヌ・ナジェル
発表年:2010年
対象性別:女性
価格:30ml/11,880円、50ml/16,940円、100ml/23,650円
公式ホームページ:ジョー・マローン・ロンドン
トップノート:メロン、キングウィリアム・ペアー
ミドルノート:フリージア、ローズ
ラストノート:ムスク、パチョリ、アンバー、ルバーブ