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【フレデリック マル】ドリス ヴァン ノッテン(ブルーノ・ジョヴァノヴィック)

フレデリック・マル
©FREDERIC MALLE
フレデリック・マル
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ドリス ヴァン ノッテン

【特別監修】Le Chercheur de Parfum様

原名:Dries Van Noten
種類:オード・パルファム
ブランド:フレデリック・マル
調香師:ブルーノ・ジョヴァノヴィック
発表年:2013年
対象性別:ユニセックス
価格:10ml/7,920円、50ml/27,720円、100ml/39,600円

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ファッション・デザイナーとのはじめてのコラボ


この香水を特別なものにしているのは、大量のサンダルウッドやユニークな原料であるサクラソールではなく、この香水がPortrait of Dries〝ポートレート・オブ・ドリス〟であり、彼にフィットした香りだという点だ。だから、他の誰かにこの香水が売れるとは、私は思わない。

フレデリック・マル

私にとっても、この香水は誰かに自分の肖像画を描いてもらうようなものでした。もちろん、それは難しいことでした。なぜなら私はいつも自分で全てをコントロールしようとしているからです。

今回はフレデリックに自由を与えなければならなかったし、私が指示を与えることができても、ある時は、「オーケー、今からは君の番だ」と言う必要がありました。

それは第三者が自分をどう見ているか感じることが出来て興味深い経験でした。彼らが私について何を考えているか知ることは、己を知るために、そして、自分の作品においても大切なことだからです。

ドリス・ヴァン・ノッテン

フレデリック・マルは、自身が敬愛する人物の世界観を、香りで表現するという新たなコレクション「XXX=ポートレート」の構想を2010年から練っていました。

そして、その第一弾として、2013年に「ドリス ヴァン ノッテン」は発売されました(第二弾は「スーパースティシャス」)。ドリス・ヴァン・ノッテンとは、90年代にファッション・シーンに革命を起こした「アントワープの6人」の一人であり、ベルギー出身のファッション・デザイナーです。

それはデザイナーとライセンス契約をして「ドリス・ヴァン・ノッテン」というブランドの香りを作るのではなく、あくまで、フレデリック・マルというブランドが、ドリス・ヴァン・ノッテンというデザイナーの香りを作ったところに大きな意味がありました。

そのプロセスの持つ意味をより分かりやすく言うと、グッチが作るアレッサンドロ・ミケーレの香りではなく、フレデリック・マルが作るアレッサンドロ・ミケーレの香りということです。

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ドリス・ヴァン・ノッテンが唯一認めた香水ブランド

ドリス・ヴァン・ノッテンの旗艦店「ヘット・ モードパレス」

ちなみに、元々、ドリスのアントワープの旗艦店「ヘット・ モードパレス」には、2002年からフレデリック・マルの香りが販売されており、マルの直営店以外でマルの香水が売っているはじめての店舗でした。

ドリスとマルがはじめて出会ったのは、2000年に「フレデリック・マル」の旗艦店がパリにオープンしてから、数ヶ月経ったある土曜の午後でした。ひょいっと店舗に現れたドリスは、すぐにマルと意気投合したのでした。

2001年以降2人は、共通の友人である(エディ・スリマンを育てたフランスの伝説的ファッションコンサルタント)ジャン・ジャック・ピカールを通して更に交流を深めてゆきました。

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妥協しない2人の天才が生み出した作品

ドリス・ヴァン・ノッテン、フレデリック・マル。©FREDERIC MALLE

彼はこれまで自分の香水を販売したくなかった。思うに、それは悪魔に魂を売りたくなかったんだろうね。だから、私たちが彼のために香水を作ることは自然の流れだった。

フレデリック・マル

かつてドリス・ヴァン・ノッテンは、フレグランスのライセンス契約を考えていたことがありました。しかし、自身のブランド価値が落ちない香りを商業ベースに乗せて作ってもらうことが非常に大変であることを痛感し、断念しました。

そんなこともあり、フレデリック・マルという最高のパートナーを見つけたことは、ドリスにとって、思う存分、自分のこだわりをぶつけ、香りを生み出すことができる絶好の機会でした。そのため彼は全身全霊を込めて、このプロジェクトに打ち込みました。

はじまりは、2011年4月5日にマルがアントワープを訪れ、ドリスと打ち合わせを開始した日でした。その日、マルはドリスの自宅でディナーを食べ、徹底的に二人の目指す香りの方向性をクリアにしてゆきました。

そして、ドミニク・ロピオンとブルーノ・ジョヴァノヴィックに試作品を作ってもらうことにしました。

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香りを生み出すプロセスを知る喜び

©FREDERIC MALLE

私は学習欲が強い人間です。分からなかったり、醜いと思ってしまう物事を理解したい。たとえば嫌いな花がある場合、なぜそれを嫌うのか、そしてそれを違う方法で使えないかを探ることに、興味があるのです。

ドリス・ヴァン・ノッテン

同年6月、マルは5つの試作品を持ってアントワープを再訪しました。そして、ドリスと4人の側近に、フローラルアルデヒド、シプレ・ムスキー・アニマリック、サンダルウッドがベースのモダンオリエンタル、グリーンフローラル、スパイシーカーネーションの香りを試香してもらいました。

熟考と討論の末、ドリスがチョイスしたのが、ドミニクによるフローラルアルデヒドと、ブルーノによるサンダルウッドでした(ちなみにこのドミニクの試作品が、のちの「スーパースティシャス」の原型なのかもしれません)。

さらに同年9月12日に、二人の調香師に微調整させたものを、マルはアントワープへ持参し、ドリスと求める香りの輪郭を明白にしていきました。

そして、12月14日の最終テストで、ブルーノのサンダルウッドの香りを磨き上げ商品化することが決定し、マイソール産の天然のサンダルウッドを使用することを決定したのでした。

2012年3月29日にドリスは、ニューヨークのマルの自宅に招待されました。そして、細部をさらに煮詰めていきました。マルは、ブルーノに自由な創造性を発揮してもらうために、ドリスから直接コンセプトを聞くことがないようにしました。

ドリスのような一流のファッション・デザイナーと働くとき、彼の好きな花やエキゾチックな面から香りを創造してしまうとショートカットになってしまう。私は調香師に作品やビジョンの本質を捉えてもらいたいと願いました。

フレデリック・マル

5月16日、マルは最後の試作品4作品を持参し、アントワープでドリスの最終決定を仰ぎました。そして、決定されたものに微調整を重ね、10月15日についにこの香りは完成したのでした。

IFFのブルーノ・ジョヴァノヴィック(ドミニク・ロピオンとソフィア・グロスマンの弟子)により調香されたこの香りは、18ヶ月の歳月をかけ、そういった大変なプロセスを経て生み出されたものでした。かくして2013年2月に「ドリス ヴァン ノッテン」は発売されることになりました。

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細部にまで宿る作品に対するこだわり

©FREDERIC MALLE

ちなみに黒のベークライトのボトルキャップから、ラベルのカラー・書体・配置のすべてはドリスの細部にわたるこだわりを反映したものです。

このパッケージとボトルに書かれた“par”というのは、ドリス・ヴァン・ノッテンの portrait という意味を込めてつけられており、こういう風にマルはドリスを見ているということです。そして、これがこのコレクションの本質である、とマルは公言しています。

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ドリスのクリエイティブ精神を反映させた香り

刺繍、プリント、ジャカードであれ、無地であれ、私にとって重要なのは、それが素材として、体とどうかかわるかです。私は、布地を感情を揺り動かすために使います。黒地に黒のプリントも作ります。それぞれに独自の価値、独特の感情があるのです。

ドリス・ヴァン・ノッテン

フレデリック・マルがドリス・ヴァン・ノッテンに会いに行くと、必ずフランドルのケーキ(クローブ。シナモン。ジンジャーが効いた)が出されたことから、この香りには、スペキュラースや、ワッフル、シュガーパイといったベルギーのお菓子の香りが存在します。

そのため、非常に珍しいことなのですが、食品に使用する香料であるサクラソール(スルフロール)が使用されています(温めたミルクの香り)。

そして、ドリスのファッション・デザインの特徴である、一見、相性が抜群に悪いと思える2つの色味を合わせていく感覚を香りにも反映させました。それは、この香りに、黄色の色味を加えるという試みでした。サフラン、クローブ、ナツメグのスパイシーノートと、大量のレモンとベルガモットにより表現しました。

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サンダルウッドとスペキュラースの香り

ベルギーの伝統的なクッキーであるスペキュラース

ゲランの「シャリマー」のようなクラシカルなオリエンタルを彷彿させるベルガモットとレモンの煌めきからこの香りははじまります。そして、すぐに香りはサフランの涼しげな風で包み込まれてゆきます。

やがて、二層の香りが(感情の錘によって反応する)シーソーゲームのように現れます。それはグルマンとウッディです。つまりは焼きたての(クローブとナツメグを素材とした)スペキュラースのクッキーとそれに浸すミルクティーがブレンドされたバター風味のグルマンノートと、クリーミーかつスモーキーなサンダルウッドとガイアックウッドです。

サンダルウッドは、インド・マイソール産のものを植林してオーストラリアで育てているTFS社のものが使用されています。

そこに、さらにインドールの効いたジャスミンとムスクがアニマリックな獣が忍び寄る気配をときおり感じさせてくれます。かくして滑らかなクリーミーバニラにすべてが渾然一体となり薄く肌の上で伸ばされていくように浸透していくのです。

この香りの素晴らしさは、むわっと外側に拡散するオリエンタルの甘さではなく、内側にまとまっていく孤高の精神性を感じさせてくれるところにあります。

ちなみにトップノートの草のような柑橘の香りは、ドリスが最も大切な時間として挙げている、彼の城のような大豪邸の24ヘクタール(73,000坪!東京ドーム5つ分)の庭の手入れをイメージしてのことです。ドリスにとって庭の手入れは一種の儀式であり、瞑想の時間なのです(彼は決してパーティなど社交的な集まりには現れない)。

さらに火のような温かみを加えるためにペルー産のバルサムを、深い精神性を与えるためにパチョリを、そして、官能性を生み出すためにムスクと非常に高品質なスペイン産ジャスミンのアブソリュートが加えられています。

「シャリマー」との明確な違い。それは大量のサンダルウッドが使われていることと、天然のバニラを使用しているところ(シャリマーの独特なバニリンによるむわっとくるスモーキー感はない)。
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ドリスの偉大さについて

私にとって服を作るということは物語です。それは人ではありません。私にはミューズは必要ありません。・・・私は、服のために広告を出すことはない。なぜなら、ブランドとしてその服を着てもらうことを私は望まないからだ。この服を着たいから着てくれることが、私にとって最大の賞賛なのです。

ドリス・ヴァン・ノッテン

ドリス・ヴァン・ノッテン(1958-)は、アントワープ王立芸術アカデミーのファッション学科を1980年に卒業し、1986年に「アントワープの6人」(他に、アン・ドゥムルメステールがいた)としてロンドンコレクションで展示会を行い、注目を浴び、バーニーズ・ニューヨークが買い付けたことにより、一躍時の人になりました。

1991年にメンズコレクションでパリコレ・デビューを果たし、2年後にはウィメンズ・デビューも果たしました。東洋とアフリカのテイストを入れた、エスニック柄のプリント、オリジナルの素材(生地やアイテムの90%は全て職人によるオリジナル)、レイヤリングの独創性、絵画的で斬新な色使いにより〝異文化のクロスロード〟と称されました。

「アントワープの6人」の活躍により、アントワープ出身のデザイナーは世界的に注目されることになり、アントワープ市は、これを機に、2001年にファッション都市宣言をしました。

2008年には、ドリスはCFDA(米国ファッションデザイナー協会)からファッション業界でも最も栄誉のある賞のひとつであるインターナショナル・アワードを受賞されたのでした。そして、2009年3月には、トゥモローランドとのパートナーシップにより南青山に旗艦店が開店し、今に至ります(2018年に、ドリス・ヴァン・ノッテンは、プーチ・グループの傘下に入りました)。

ドリス・ヴァン・ノッテン2020SS。なんとあのクリスチャン・ラクロワが協力した!


ちなみにこのフレグランスの創造の過程に全面協力したドリスは、「香水を作ることがこれほど複雑なことだとは思わなかった」と衝撃を受けました。

そして、「私はこの香りがとても気に入っています。この香りには、私のファッションに対するヴィジョンが詰め込まれています。そして、何よりも単調ではなく、多くの要素に満ちていることが素晴らしい」とコメントするほどのお気に入りとなり、今でも世界中のドリス・ヴァン・ノッテンのブティックの最も目立つ場所に、陳列されています(日本だと青山に)。

ちなみにこの香りは、2021年5月現在、在庫のみで、グローバルで廃盤となります。フレデリック・マル初の廃盤です。

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香水データ

香水名:ドリス ヴァン ノッテン
原名:Dries Van Noten
種類:オード・パルファム
ブランド:フレデリック・マル
調香師:ブルーノ・ジョヴァノヴィック
発表年:2013年
対象性別:ユニセックス
価格:10ml/7,920円、50ml/27,720円、100ml/39,600円


トップノート:レモン、ベルガモット
ミドルノート:エジプト産ジャスミン、ムスク、サフラン、パチョリ、ナツメグ、クローブ
ラストノート:マイソール・サンダルウッド、バニラ、エチルマルトール、スルフロール、ペルーバルサム

【正規品・送料込】フレデリック マル ドリス ヴァン ノッテン(50ml)

価格:52,470円
(2022/8/4 08:11時点)
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