ディア プール ファム(ディア ウーマン)
原名:Dia pour Femme
種類:オード・パルファム
ブランド:アムアージュ
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2002年
対象性別:女性
価格:日本未発売
エレナの最初の香り「ファースト」の最終形態=別名「ラスト」
フランキンセンス(乳香)の代表的産地であるオマーンのカーブース・ビン・サイード国王(1940-2020、かなりの親日家で、東日本大震災の際には1,000万ドルの義援金を寄贈)が、オマーンの香りの伝統を反映した独自の香りを作りたいと、1983年にギ・ロベールを招聘し、作らせた香りが、「アムアージュ(現在のアムアージュ ゴールド)」でした。
アムアージュというブランド名はフランス語の〝アムール(愛)〟とアラビア語の〝موجة(波)〟を組み合わせた造語です。それは香りが波のように愛を呼び覚ますという意味です。
やがて国王は「ゴールド」の日常使い出来るヴァージョンを作りたいと考え、エルメスの専属調香師になる前のジャン=クロード・エレナを招聘したのでした。
「オ パフメ オーテヴェール」(1992)以降、ハイク時代に突入していたエレナにとって、妥協する必要が無いほど豪華な香料は必要ないものでした。しかし、彼は封印していた「ファースト」時代に作り上げていた複雑な香りを、とんでもなく贅沢な香料によって作ることにしたのでした。
かくしてアムアージュのために2002年に調香した「ディア プール ファム(ディア ウーマン)」は、「ファースト」の究極形態であり、エレナにとって「ファースト」と決別するための「ラスト」の香りとなりました。
ちなみに〝Dia〟とは、アラビア語で〝光、輝き〟を意味します。
今宵限りのゴージャス・フローラルの香り
この香りのイメージは、上質なフランキンセンスの香が焚かれた大理石で作られた豪奢なバスルームで、上質な薔薇石鹸で身体を洗う贅沢なイメージです。このバスルームは全面ガラス張りで、その向こうには人工的に作られたフローラルガーデンが広がっています。
アルデハイド(シクラメンアルデヒド)がベルガモットにより弾き出される中、タラゴン、ヴァイオレットリーフ、(メタリックな)セージといったハーブが見事に溶け込んだ高級ソープのようなホワイトムスクの香りからはじまります(隠し味は間違いなくフルーティなイチジク)。
煌びやかなムスクに照らされながらも、アルデハイドが蜃気楼のように広がり、とても繊細でエレガントな空気が漂います。
すぐに(オマーン産の中でも最高峰のアムアージュ特製の)フランキンセンスが現れ、オリスルートも加わり、ホワイトムスクと見事に調和しながら、白いソープで作られた涼しげなパウダリーヴェールが清涼感が広がってゆきます。
と同時に、待機していたローズ、ピオニー、(花蜜のような)オレンジブロッサム、(甘酸っぱい)ピーチブロッサムをはじめとする様々なフローラルの演者が、ローズを指揮者にして楽劇を演奏してゆきます。
それぞれの香りは、ローズに導かれ、アルデハイドに対して優雅に解き放ち、風も起こさずに美しく舞うアゲハチョウのような、この上なく甘美なロマンティックなフローラル・シンフォニーを奏ではじめるのです。
サンダルウッド、バニラ、ガイアックウッド、ヘリオトロープ、シダーといった登場人物に対して支払われたキャスティング料は相当なものだったのでしょう。偽者は何一つ存在しない妥協なきベースノートによる、(宴の後のような)うっとりさせるようなクリーミーなドライダウンは圧巻としか言いようがありません。
それはまるで、水彩画のタッチを愛するジャン=クロード・エレナに、油絵を描かせたような香りです。どこか仄かに水彩画のタッチが潜んでいる魅惑の油絵です。普段はエレナの水彩画の香りを愛している女性にうってつけの〝今宵限りのゴージャス・フローラル〟の香りです。
ピンクゴールドが装飾されたフランス産のクリスタル・ガラス(24%)で作られたボトルがとても美しいです。
ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「ディア プール ファム」を「典型的フローラル」呼び、「ディアはあまり派手過ぎない雰囲気の、魅力的なフローラルを求める女性向けに作られたと思われる。大胆なオリジナリティはないが美しい作りをしており、アルデハイドが少し香る以外はとても自然で、純粋な香りで長く続く。フレッシュでパウダリーなドライダウンが特にいい。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。
作品データ
香水名:ディア プール ファム(ディア ウーマン)
原名:Dia pour Femme
種類:オード・パルファム
ブランド:アムアージュ
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2002年
対象性別:女性
価格:日本未発売
トップノート:アルデハイド、シクラメン、タラゴン、ヴァイオレットリーフ、セージ、ベルガモット、イチジク
ミドルノート:ピオニー、オレンジ・ブロッサム、オリスルート、ターキッシュローズオイル、ピーチ・ブロッサム
ラストノート:サンダルウッド、バニラ、ガイアックウッド、フランキンセンス、ヘリオトロープ、シダー、ホワイトムスク