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【ゲラン】ダービー(ジャン=ポール・ゲラン)

ゲラン
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ダービー

原名:Derby
種類:オード・トワレ
ブランド:ゲラン
調香師:ジャン=ポール・ゲラン、アン・マリー・サジェ
発表年:1985年
対象性別:男性
価格:100ml/35,200円

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「ケントゥリオ(百人隊長)」の名になる予定だった香り



ゲランの香りが特別なのは、調香師と会社の〝ゲランを愛する人々の教養〟に対する揺ぎ無い信頼の上に築かれていました。特に、20世紀のゲランの香りには、高い教養を必要とする背景が存在していました。

1985年に生誕した「ダービー」にもそんな崇高な精神が存在していました。四代目調香師ジャン=ポール・ゲランは、古代ローマの遺跡がたくさん存在するチュニジアのエル・ジェムを訪れたとき、円形闘技場(アンフィテアトルム)からこの香りに対する強烈なインスピレーションを得ました。

ローマのコロセウム(観客席約45,000人)の次に大きなこの円形闘技場(観客席約35,000人)は、238年頃に総督ゴルディアヌス1世(のちに36日間だけローマ皇帝になる)により建設され、『グラディエーター』『ベン・ハー』『スパルタカス』といった映画の中に登場する剣闘士や戦車レースのために使用されました。

ジャン=ポールは、この闘技場に立ったとき、即座に、古代ローマの最強の軍隊組織の背骨とも言われたケントゥリオ(百人隊長)の息吹を感じ、この名を香りに冠したいと渇望したのでした。そして、ラボに戻り、香りの創造に励みました。

結果的に、マーケティング部門の指摘により、闘技場の中を汗を掻きながら疾走する馬をイメージさせる「ダービー」という名で発売されることになったこの香りは、1975年にジャン=ポール・ゲランに誘われ共に働くことになったアン・マリー・サジェ(1989年まで共作する)と共に生み出されました。

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シプレ・フゼア・レザーが織り成すダンディズムの極致

©GUERLAIN

「野蛮さと、非常に文明的な要素を併せ持つ」という打ち出しで発表されたこの香りは、シェービング・クリームのようなフゼアとアロマティックなシプレが半分半分に香り立つ、「アビルージュ」のレザーと「ベチバー」のタバコの中間に位置するような香りが特徴でした。

そして、この香りは、「パコ ラバンヌ プールオム」(1973)の影響を強く受けた香りでした。マーケティング部門の失態により失敗作となったこの香り(オリジナル版)は、1985年から1993年にかけて発売されました。香りの構成は、

トップノート:アルテミシア、ベルガモット、ミント、レモン、メース
ミドルノート:ナツメグフラワー、ジャスミン、ローズ
ラストノート:オークモス、レザー、サンダルウッド、パチョリ、ベチバー

のグリーンシプレでした。2006年に復刻されたバージョンとの違いは、トップノートがシトラスの炸裂ではなくスパイシーでハーブのようであり、レザーとオークモスがふんだんに使用されている点です。

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スーツを着て戦う現代の騎士のための香り

©GUERLAIN

そして、2006年に「パトリモワンヌ・コレクション」のうちのひとつとして復刻し、現在は「メンズ エクスクルーシブ コレクション」(2012年)のひとつとして木枠で囲まれた独特なデザインのボトルで発売されています。

シェービング・クリームのようなフゼアとアロマティックなシプレが半分半分なのはそのままに、レザーを主体に現代風にアレンジされたこの香りは、オリジナルと同じく「男性版ミツコ」と言う壮大なテーマを持つ香りです。

この香りは、柑橘類(オレンジ、ベルガモット)とハーブ類(ミント、アルテミシア)とスパイシーな花(パウダリーなカーネーション)がブレンドされ炸裂するような激しさを、オークモスノートが柔らかく優雅さと格式に変えていくようなシプレからはじまります。それはまさしく「ダービー」=「競技」のファンファーレのようなはじまりです。

そこにベースのレザーが溶け込んでいき、ローズ、ジャスミンがラベンダー、ゼラニウムと共鳴しあいながらフゼアの要素も運んできます。

この香りは、身に纏うコンディションにより、シプレ、フゼア、レザーのいずれかの側面が突出するように、「匠の調香」がなされています。

でありながらも、レザーを主体としたスモーキーかつアーシィなドライダウンがこの香りのゴールに待つものを教えてくれるのです。それは、スーツを着た洗練された男の背景に立つローマの騎士のスタンドです。まさに「スーツを着て戦う現代の騎士」のための香りという形容こそ相応しい香りです。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「ダービー」を「スモーキーウッド」と呼び、「ダービーは不運な香水で、ゲランの名香の中でひっそりと世を去った唯一のもの。1985年に発表されたが、インパクトがとても弱かったのはおそらく、あまり宣伝されなかったのと、醜い瓶のせいだろう。この後パッケージを変えてパリの店舗のみで売られていたが、間もなく打ち切りとなり、また復刻されてラインナップに加わっている。ずっと残ってほしいと思う。」

「ダービーは自信にあふれた「アビルージュ」と、ドライな抑制を見せる「ベチバー」の中間にあり、男性用香水の重力の中心と言えるところに位置している。構造はウッディ調のバルサム様で、スモークも少し加えられている。香りの広がり方は青々とした葉の霊気を写したキルリアン写真のようで、放たれる深緑のオーラは至近にしか届かないが、近くで見ると驚くほど濃くはっきりしている。今まで世に存在した中で、十指に入る男性用。」と5つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:ダービー
原名:Derby
種類:オード・トワレ
ブランド:ゲラン
調香師:ジャン=ポール・ゲラン、アン・マリー・サジェ
発表年:1985年
対象性別:男性
価格:100ml/35,200円



トップノート:オレンジ、ベルガモット、ミント、アルテミシア
ミドルノート:カーネーション、ローズ、ジャスミン、ナツメグフラワー
ラストノート:レザー、バーチ、パチョリ、ベチバー