ピエール・バルマン

ブリジット・バルドー2 『素直な悪女』1(2ページ)

    作品名:素直な悪女 Et Dieu… créa la femme(1956)
    監督:ロジェ・ヴァディム
    衣装:ピエール・バルマン
    出演者:ブリジット・バルドー/クルト・ユルゲンス/ジャン=ルイ・トランティニャン/イザベル・コーレイ



    そして神はブリジット・バルドーをつくり給えり・・・

    ブリジット・バルドー。愛称はBB。身長168cm、体重48kg。スリーサイズ90/50/89。

    (1956年4月、カンヌ映画祭に向かう前の月に)私は私の長い髪を脱色した。金色に輝くブロンドは私にとてもよく似合い、私はライオンのように見えた。この髪の色の変化は私の性格の転換点となった。

    ブリジット・バルドー自伝より

    ブリジット・バルドー(1934-)が、覚醒した瞬間を見ることが出来ることが、本作の歴史的な価値です。最初は、フランスで酷評された〝新生バルドー〟が、アメリカで評価されたことにより、「世界のセックス・シンボル」として、当時の若い人々を中心に大旋風を巻き起こします。そして、逆輸入の形で、〝新生バルドー〟はフランスに再上陸し、一瞬にしてフランス人の心を鷲掴みにし、〝新たなるフレンチ・アイコン〟となったのでした。

    それはまさにファッションにおけるアメリカの影響力を示した1954年のシャネルの復活や、オードリー・ヘプバーンの作品によってブランド・イメージを作り上げたユベール・ド・ジバンシィと似た現象でした。

    『素直な悪女』という作品の原題の意味は『そして神は女をつくり給えり・・・』なのですが、ブリジット・バルドー=愛称BB(ちなみにマリリン・モンローはMM、クラウディア・カルディナーレはCC)は、アメリカ人気によって生み出されたフレンチ・アイコンだったのです。

    もはや「しなければならないこと」に拘束されることなく、「してはいけないもの」によって私は生きはじめていた。そして、ある夜、風に吹かれたままのような髪型をし、体の線がくっきりと浮かび上がるドレスを着て、テーブルの下ですぐに脱げるようなバレエシューズ風の靴をはき、宝石の代わりに、無名のしかし情熱的な恋人がつけた大きなキスマークを、まるで15カラットのダイヤモンドのように、高慢かつ誇らしげに見せびらかしながら、マキシム(パリの最高級フレンチ・レストラン)に姿を現したのである。

    ブリジット・バルドー自伝

    世界の女性たちのファッションを180度転換させるほどの衝撃を与えたBBスタイルは、初監督作を作るために奔走した当時の夫ロジェ・ヴァディム(1928-2000)と友人のプロデューサー・ラウール・レヴィ(1922-1966)がこだわった、当時最新の撮影技術であるカラー撮影が生み出す視覚的な力と共に、彼女自身の高い意識によって創造されたものでした。



    物語は、当時衝撃的だったフルヌードから始まる。

    ヴァディム心理学。「つかみは裸で」の法則。それは『バーバレラ』においても見事に効果を発揮している。

    クルト・ユルゲンスは、3年間ぎっしり詰まっていた撮影スケジュールをやりくりし、本作に出演した。

    オープニングの撮影風景。代役を一切使わず、自身で演じました。

    理由はいくつもある。まず台本です。ある新しさがあって、いつも私に持ち込まれるものとはずいぶん違う。ブリジット・バルドーももちろん理由の一つです。彼女のことはとても気になっています。どう位置づけしたものかまだわからないんですよ。とにかくありきたりではなくて、間近に観察したいと思っていたんです。それからレヴィーヴァディムという組み合わせだ。これからいろんな事件を起こすような気がしたんです。その渦中にいるのは面白いだろうと思いました。

    クルト・ユルゲンス(撮影当時のインタビューにて)

    ブリジット・バルドーのフルヌードから始まる物語。そして、この瞬間、彼女は「世界のセックス・シンボル」として、マリリン・モンロー(1926-)と双璧をなす存在となったのです。遊び慣れた中年の紳士エリック(クルト・ユルゲンス)を誘惑するロリータ的な危険さをはらんだBBの魅力。それはパリの超一流フレンチ・レストランのマキシムで、若さの特権を誇示するふてぶてしさにも似たところがあります。

    世間では私がブリジット・バルドーを「作った」ことになっている。しかし、彼女が「作られた」ものではなかったからこそ、彼女は衝撃を与え、誘惑し、流行を創り、最後には全世界のセックス・シンボルとなったのである。あからさまでない裸なら、映画には昔からあった。陽気な、大胆不敵な裸、罪の意識のない裸が、人々を興奮させると同時に怒らせたのだった。

    ロジェ・ヴァディム

    ここに彼女の独白があります。「臆病な人々にありがちなように、無礼と攻撃はいつも私の最良の盾であった。そして、私の高慢さの影にはしばしば恐ろしいほどの傷つきやすさが隠れていた」。これこそが、バルドーのBBスタイルの原動力でした。それは〝無礼と攻撃〟のためのツールだったのです。ファッションとは反逆です。アメリカ嫌いの彼女は、貴族的なフレンチ・モードではなく、若さの反逆ともいえるフレンチ・カジュアルをセクシーさに変換して、アメリカ人を始めとする世界中の男女を夢中にしたのでした。



    シャツドレスとバレエシューズ、または裸足の組み合わせ。

    よく歩き、よく乗り、よく踊る青い自転車の女ジュリエット。

    ジャン=ルイ・トランティニャンとは、本当に恋に落ちてしまいます。

    足の指の形がくっきりと出るほどに足の裏にフィットしているバレエシューズ。

    シャツドレスの魅力は、十戒の海のように布地が割れ、肉感的な太ももが見えるところにあります。

    生活感溢れる衣装が、その後に現れるレッドドレスをより映えさせる効果を生み出しています。

    女子でありながら青い自転車に乗るジュリエット。

    ジュリエット・ルック1 ラベンダー・シャツドレス
    • ラベンダー・カラーのシャンブレー・シャツドレス、ショートスリーブ、フロントボタン
    • ベージュのバレエシューズ

    私はブリジット・バルドーを作り出したのではない。ただ彼女本来のものが花開くように、彼女が自分を見失わないで女優の仕事を覚えるように、手を貸しただけだ。既成のやり方を教え込んで、最も個性的な才能を台無しにしてしまうことは映画の世界に限らずよくあるが、私はブリジットがそうならないようにした。

    (ジュリエットという役柄は)映画での役と現実の彼女とが見事に一つになった役でした。ブリジットはそれまでに16の映画に出ていた。そして、17回目の作品で彼女はスターの座にのぼったのである。

    ロジェ・ヴァディム

    動物を抱きしめるジュリエット、女友達と女学生のようにはしゃぐジュリエット、「新聞はあげるから、キスしてちょうだい」と少女に優しいジュリエット、道徳的な小言を言われ無関心を装うジュリエット、「私を強く抱きしめて、決して離さないで」と言うジュリエット、イイ男を見ると目が輝いてしまうジュリエット、バレエシューズを履いているジュリエット。全てが、当時のブリジット・バルドーそのものの姿なのです。



    ブリジット・バルドーとレペット

    1956年にレペットに注文したカーマインレッドのサンドリヨン。

    1956年のある日、本作の製作が決定した日、ロジェ・ヴァディムとブリジット・バルドーは、パリ・オペラ座近くの小さなアトリエを訪れました。バレリーナのシューズを作っているそのアトリエの名をレペットと言いました。そして、創設者ローズ・レペット(1907-1984)に撮影に使用するために、タウンユース出来るベージュ色のバレエシューズを発注しました。

    撮影を通じてこのバレエシューズがたいそう気に入ったバルドーは、さらにカーマインレッドのバレリーナシューズを発注しました。このシューズこそが、“サンドリヨン(英語でいうところのシンデレラ)”という今ではレペットのエターナル・アイコンとなったバレエシューズです。

    バレエシューズの元祖『レペット』の歴史は、1947年に、バレエ・デ・シャンゼリゼのバレエ・ダンサー兼振付師として活躍していたローラン・プティ(1924-2011)が、ビストロ経営をしていた母親のローズ・レペットにバレエシューズの工房を作ることを薦めたことから始まりました。アッパーとソールを裏返しの状態で縫い合わせ、その後にひっくり返すステッチ&リターン製法で、足に手袋をはめているかのようなフィット感を生み出し、瞬く間にバレエ・ダンサーの間で人気のバレエシューズとなりました。そんな時、前述の二人がやって来たのでした。

    現在においては、バレエシューズは、年齢を問わず女性が一足は必ず持っておくべき定番のシューズになっています。レペットのバレエシューズをコピーしたものも多く販売されているのですが、元々はバレリーナが履くように作られているシューズなので、前が浅く、側面の高さがしっかりしており、シープスキンなどのしなる靴底でないと、足の裏に多大なる負担がかかります。

    プライベートでもバルドーは裸足で歩く人でした。

    本作においてバルドーがバレエシューズを違和感なく履きこなせるのは、バレリーナとしてのバックグラウンド(7歳から15歳まで)があるのと、普段から裸足で歩きなれている足の裏の皮の厚さによるものなのです。実際のところ、バレエシューズほど、スタイルと身体運動の優雅さが問われるファッション・アイテムは存在しません。

    それは、一時期熱狂的に流行し、今では、すっかり流行外れになってしまったガウチョ・パンツに共通する部分があります。非常に人を選ぶアイテムであり、失敗すれば、短所を際立たせるキラー・アイテムになるのです。



    イザベル・コーレイという美少女

    ジュリエットの唯一の女友達リュシエンヌを演じたイザベル・コーレイ。

    フレンチスリーブとポルカドット・スタイルが50年代的。

    リュシエンヌ・ルック1
    • 黒のフレンチスリーブカットソー
    • 白地に赤のポルカドットのロングスカート

    本作でジュリエットの唯一の女友達を演じているのが、ジャン=ピエール・メルヴィルの『賭博師ボブ』(1955)でデビューしたばかりのイザベル・コーレイ(1939-2011)です。バルドーとはまた違ったフレンチガールの魅力を発散しているのですが、出演作に恵まれず1961年に引退しました。

    しかし、この作品における彼女のファッションの数々は、50年代のフレンチ・カジュアルの見本とも言え、大変印象的です。



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