アクア ヴィタエ
原名:Aqua Vitae
種類:オード・トワレ
ブランド:メゾン・フランシス・クルジャン
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2013年
対象性別:ユニセックス
価格:70ml/37,400円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム
クルジャン史上最も売れなかった香り
2009年に発売された「アクア ユニヴェルサリス」からはじまる『アクア コレクション』の第ニ弾として「アクア ヴィタエ」は、2013年10月に発売されました。
人間にとって水とは、〝生命力〟を象徴するものであり、このフレグランスのネーミングは〝生命の水〟というストレートなものです。この思い切ったネーミングに、調香師フランシス・クルジャンの自信が伺えます。
2021年現在、世界的な調香師の地位にまで登りつめたクルジャンの中期の集大成的な意味合いを持つフレグランスです。そして、自信作であるにも関わらず、クルジャン調香史上最も売れなかったフレグランスという事実においても非常に興味深い香りです。
スペインのバカンスでヒントを得る。
フォルメンテーラ島の、ある暑く乾燥した日のことです。古いモーターバイクでゆっくり走っていると、私の顔に当たる空気が冷たく心地よく感じられました。そして、太陽の温かさが私の周りの自然の香りを強めていきました。
この香りは、ふと日常から解放された瞬間に生まれる、人生がもっともシンプルに美しく輝くひとときを捉えようとした香りです。
フランシス・クルジャン
クルジャン自身が、ヌーディストビーチが点在するフォルメンテーラ島(スペイン・イビザ島すぐ近く)でバカンスを過ごしていた時に、イメージを膨らませ生み出された香りです。本作は構想から商品化まで18ヶ月を要したと言われています。
クルジャンはこの香りについて、日本語で言うところの男性と女性の「間(ま)」を表現した香りと言及しています。この香りにおいて、ガイアックウッドが男性であり、トンカビーンとバニラは女性としてイメージされています。
二人の人間がひとつにならない香り
太陽が最も黄色く輝く瞬間のようなカラブリア産レモンと、ハニースイートなシチリア産マンダリンがスパークリングする爽快感からこの香りははじまります。そして、すぐにベースのガイアックウッドがスパイシーウッディなスモーキーさを加えてゆきます。
爽やかでありながら、スパイシーさとほのかな甘さを感じさせる、泣いてるとも笑ってるともつかない、「中間的表情」が表れている能の精神のような香りとも言えます(つまりどこか捉えどころのない香り)。
やがて香りの50%以上を占める(スズランのような側面を持つ)メタリックなヘディオン(煌くグリーンジャスミン)が、レモンが減退する中、存在感を増すオレンジと共に、黄金色の夕日のような甘さで包み込んでゆきます。
一方で減退しつつあるレモンは、バニラとトンカビーンの中に溶け込むことにより、クリーミーな滑らかさを生み出します。その中に、イソEスーパーが加えられ、(スパイシーな)スモークティーのようなガイアックウッドが温かく注ぎ込まれ、うっとりするような余韻を生み出してゆきます。
明らかにこの香りの主役はヘディオンであり、往年のメンズ・フレグランスの傑作「オーソバージュ」を彷彿させる瞬間があるのですが、であるにもかかわらずメンズには転ばないところがあります。
よくカルバン・クラインの「シーケーワン」と比較される香りです。
クルジャンは、この作品の商業的失敗によって受けた悲しみをバネに偉大なる調香師の道へと駆け上っていくのでした。そして、リベンジの意味を込めて売り出されたのが、「アクア ヴィタエ フォルテ」なのでした。
香水データ
香水名:アクア ヴィタエ
原名:Aqua Vitae
種類:オード・トワレ
ブランド:メゾン・フランシス・クルジャン
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2013年
対象性別:ユニセックス
価格:70ml/37,400円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム
シングルノート:カラブリア産レモン、シチリア産マンダリン、ブラジル産トンカビーン、バニラ、ジャスミン、ガイアックウッド