オムニア
Omnia 1884年にローマで創業された『ブルガリ』の香水の歴史は、1992年に、ジャン=クロード・エレナが創造した「オ パフメ オーテヴェール」からはじまります。この香りは世界ではじめてのティー・フレグランスでした。以後、たくさんのお茶の香りを中心とした素敵な香りが発売されてゆきます。
そして、10年の時が経ち(「オーテヴェール」が一般向けに発売されたのは1993年からです)・・・2003年にブルガリ・フレグランス10周年を記念し、鮮やかなカラー・ジュエリーにインスパイアされた「オムニア」が誕生しました。オムニアとはラテン語で「全ての」という意味です。これは20代~30代の女性をターゲットにした「はじめてのジュエリー」というコンセプトでした。
2022年5月現在までの10作品すべての調香はアルベルト・モリヤスによるものです。
ブルガリの「はじめてのジュエリー」
ギリシアの内陸部にある小さな村に生まれた銀細工師の息子ソティリオ・ブルガリ。この20代の若者が、ケルキラ島からミラノを経由し、1884年にローマに高級宝飾店を創業したことから『ブルガリ』の歴史は始まります。
ソティリオは1932年に死去し、引き継いだ二人の息子コンスタンティノとジョルジョにより、ブルガリ独自のスタイルが生み出されてゆきます。この時代に主流であったダイヤモンド、ルピー、 サファイア、エメラルドといった四大宝石以外に、アメジストやトルマリンなどの天然石をも組み合わせ、色彩を重視する新しい宝石の美学を創造したのでした。
このようにして、ブルガリは、ハイジュエリー・ブランドとしての不動の地位を固めてゆきました。
そして、1992年に世界ではじめてのティー・フレグランスである「オ パフメ オーテヴェール」の誕生により、ブルガリはフレグランス部門への進出を果たしたのでした(「オーテヴェール」が一般向けに発売されたのは1993年からでした)。
「オムニア」は、フレグランス発売10周年を迎える2003年に発表されました(もちろん発売時はシリーズ化の予定はなかった)。
一度見ると絶対に忘れられない、香水史上において、とてもユニークなボトル・デザインも有名です。それは2つの円が重なり合い、縦の∞を生み出していくという印象的なものであり、ファブリース・ルグロにより手がけられたものです。
現役スペシャリストが語る「オムニア」シリーズの世界観
何よりも確かな情報をお伝えさせて頂くために、かつてブルーベルのチーフだったフレグランス・スペシャリスト様に、オムニアシリーズについて解説して頂きましょう。以下彼女のお言葉です。
オムニアのクリスタリンからアメジスト、グリーンジェイド、コーラル、ガーネット、パライバまで私はブルーベルのカウンターに居たのですが、当時、ご購入頂いたお客様の層は、〝二十歳前後の香水初心者な女性〟というよりも、〝お仕事やプライベートでも香水をさりげなく、上品にまといたいと考える20代後半から30、40代の女性〟でした。
当時、他のファッションフレグランスと比較しても、
- 可愛らしさよりもシンプルで洗練されている
- いかにも、ではなくさりげなく
- 個性よりも好感度
- ブランドの安心感
- ボトルも華美になりすぎてない
といった大きな違いがありました。
ブルガリのレディース・フレグランスにおいて、シリーズ化され、〝選べる楽しさ〟〝集める楽しさ〟があるというのも、オムニアシリーズの稀有なところだと思います。
ちなみに当時ブルガリの香水と同じくらいの位置付けにあったのが、「エタニティ」が人気だったカルバン・クラインやグッチでした。つまりオムニア発売前夜のブルガリは、「ブルガリ ブルー」や「ブルガリ プールファム」シリーズという風に、どこかバブル時代の面影を感じさせる商品ラインナップだったのでした。
そんな中、「オムニア クリスタリン」が発売され、〝透明感〟がとても受け、さらに「オムニア アメジスト」がこのシリーズの人気を押し上げた気がします。
アメジストは、クリスタリンの透明感は残したまま(ブルガリのジェムストーンがテーマですから)
〝気品〟を感じる香りであることや、クリスタリンよりも柔らかい女性らしさにより、人気を二分化させたのでした。
特に印象深い最初の三作品。
以下、あくまで私の個人的見解なのですが、オムニアシリーズのストーリーを勝手に解釈していきますね。
シリーズ一作目の「オムニア」は、東洋の神秘やその美しさを香りで表現したいというブルガリの想いから創られた、「オ パフメ」シリーズのお茶とはまた違う、謎めいていて幻惑的な東洋の一面を探求した香り。
そして、二作目の「オムニア クリスタリン」はアジアの〝透明感〟を水晶(クリスタル)に投影し、竹林の中にいる時のような〝静けさ〟や、蓮の花が浮かぶ庭園を思わせるピュアを表現した香り。
そして、三作目の「オムニア アメジスト」は、クリスタリンの透明感を残しつつも、一作目にあった〝謎めいた〟面影を思わせる紫水晶を香りで表現したもの。見たいのに見えない、手が届きそうで届かない、そんな〝二面性〟を含んだ香り。
そして、グリーンジェイド、コーラル、ガーネット、パライバへ続いていくのです…