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【シャネル】N°19(No.19)オードゥパルファム(アンリ・ロベール)

シャネル
©CHANEL
シャネル
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N°19(No.19)オードゥパルファム

原名:N°19 Eau de Parfum
種類:オード・パルファム
ブランド:シャネル
調香師:アンリ・ロベール
発表年:1971年
対象性別:女性
価格:100ml/24,200円
公式ホームページ:シャネル

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〝謎めいた微笑みのない獅子座のモナリザ〟の香水

1988年 ©CHANEL

©CHANEL

80代のガブリエル・ココ・シャネル(1883-1971)が、シャネルの二代目調香師アンリ・ロベールに調香させた「N°19(No.19)」は、1970年にシャネルが87歳の時に完成しました。

そして、自身の誕生日(1883年)獅子座の8月19日から香水の名はN°19と命名され、香水発表の数週間後の1971年1月10日にマドモアゼル・シャネルは死にました。この〝最後のシャネルの香水〟のオード・パルファム・ヴァージョンも、同年に発売されました。

ただし今発売されているヴァージョンは、シャネルの三代目調香師ジャック・ポルジュによるものです。

オード・トワレが〝きりりとした女性の厳しさとやさしさを演出してくれる香り〟であるならば、こちらは、そんな凛とした女性に〝光と影〟が追加されたような香りです。

「氷の女王」、隙のないきりりとした美女。彼女は37歳。結婚しているかどうか誰も知らない。生活感を感じさせないこの女性。たとえばあなたの名が「岡ひろみ」であるなら、「ひろみ」と呼び捨てにして欲しくなるような女性。そんな女性から立ち上って来そうな香りがこの香りです。

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女の殺し屋にもっとも似合う、孤高のフローラルグリーンの香り

1982年 ©CHANEL

すべてが静けさの中で生み出されていく〝謎めいた微笑みのないモナリザ〟の香りは、爽快に弾けるベルガモットとレモンに、真っ向からぶつかっていくフラッシュグリーンのガルバナムの衝撃からはじまります。すぐに至福の瞬間は、甘やかなネロリの調べと共にやって来ます。

オード・パルファム版がクール・ビューティーの香りでありながら、明るさを感じさせるのは、このネロリが、彼女を映画のヒロインに当てる照明のようなスポットライトの役割を果たしているからです。さらにもうひとつ、コスメティックなアルデハイドも静かに佇んでいるようです。

そして荘厳たるオークモスが存在感を増してゆきます。まるでグリーンをカーキに変えていくようにすべてを慈悲深く包み込んでゆきます。クールに澄ましていながら彼女にとって〝恋も仕事も命がけ〟なのです。

舞台は整いました。素肌の上にパウダリーなアイリスが満ち広がり、煌めくスズランをはじめとするローズ、ジャスミン、イランイランといった花々が、(ファッション業界のような)華やかな世界の中で、カーキのトレンチコートを着たこの女性の後姿を祝福するように、洗練された美しい甘さで包んでゆきます。

やがて、グリーンベチバーと滑らかなレザーが、クリーミーなサンダルウッドと混ざり合いながら、壮大なエメラルドシャワーのフィナーレで最高潮に達したこのヒロインは、最後に、凛とした気品あふれる微笑みを残して、素肌の上から去ってゆくのです。

はだしで大地を駆け抜けるようなグリーンの輝きでありながら、スティレットヒールのパンプスを履いて、隙の無いメイクアップと完璧なファッションで大都会のアスファルト・ジャングルを氷のような微笑みを残して去ってゆく、しめやかなグリーンの残光に満たされる香りなのです。

女の殺し屋が存在したならば、絶対この香りを身に纏うことでしょう。そして、1971年に発売された当時から、今に至るまで、永遠に10年先を往く、他に類を見ない「孤高のフローラルグリーンの香り」です。

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香水データ

香水名:N°19(No.19)オードゥパルファム
原名:N°19 Eau de Parfum
種類:オード・パルファム
ブランド:シャネル
調香師:アンリ・ロベール
発表年:1971年
対象性別:女性
価格:100ml/24,200円
公式ホームページ:シャネル


トップノート:ネロリ、ベルガモット、レモン、ガルバナム
ミドルノート:アイリス、スイセン、ローズ、スズラン、イランイラン
ラストノート:ベチバー、サンダルウッド、オークモス、レザー