アンドロギュヌス

『魔界転生』 日本の美7(4ページ)

    これほど素晴らしい狂乱する姫様の芝居を見せる女優が他に存在するだろうか?

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    黒髪の復権。日本女性は今、細川ガラシャに向かおうとしています。

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    「ごろうじませ、忠興様」「どきゃら~」乱心するガラシャ様。

    燃える、燃える、ごろうじませ、忠興様。江戸一面に燃え広がったあの火の海のうつくしいこと。うつくしいこと・・・

    細川ガラシャ(佳那晃子)

    「ごろうじませ、忠興様」。佳那晃子様の台詞回しの素晴らしさ。あなたこそ、うつくしいことうつくしいことなんです。炎に包まれた江戸城天守閣で、高笑いする狂気さえも、美しいと感じてしまうこの人の魔性。私はこの人となら一緒に「ごろうじませ」たいと願ってしまいました。

    貞淑なガラシャ様が、静かに妖艶なガラシャ様に変身し、最後には、狂乱のガラシャ様になる。この芝居の幅の広さ。これが今出来る女優様として頭に浮かぶのは深田恭子様ただ一人でしょう。しかし、当初深作監督が希望していた松坂慶子様が演じるガラシャも見てみたい気がします。

    さて、この作品の妖しさを生み出す一役を担っていたのが、『砂の器』(1974)の組曲「宿命」を作曲・ピアノ演奏したジャズピアニスト菅野光亮様(1939-1983)が担当した音楽です。人間国宝・山本邦山様の尺八と赤尾三千子様の横笛が、映像に自然に溶け込んでいます。

    辻村ジュサブローの魔界転生

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    1981年公開時のポスター。何気に天草四郎は首を掲げている。更になぜか『ミスター・ロボット』(1983)がたくさんいます。

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    ジュサブロー様の人形浄瑠璃。本当にこの作品。濃厚です。

    ものに出会って驚くという体のしくみこそ、人間のすべての創造の源泉だと言っても言い過ぎにはならないと思います。驚くことは喜びを知ることであり、恐ろしさを知ることでもあります。太陽が昇ることを驚き、草が芽を吹くことに驚き、生命の不思議さに驚くことは、生きる者の智恵につながっていきます。
    知識があっても知恵がなければ、人は生きていくことができません。まして創造的な仕事をすることなど、思いもよらぬことです。創造的な活動とは、自分だけの驚きの体験を、創作家の智恵を通して、人々の驚きにまで進めていくこととも言えるのではないでしょうか。

    辻村ジュサブロー

    この作品においてとても重要な役割を果たした人。それは人形浄瑠璃師である辻村ジュサブロー様(1933-)の衣装でした。この方の参加なくして、山田風太郎の世界観の映像化は成功しえなかったでしょう。どれほど俳優が素晴らしくとも、衣装が登場人物に生命を吹き込まないと、その作品が、現実離れした物語であればあるほどに、映像は空回りしていきます。今の日本映画に多いのがこの部分です。

    さてジュサブロー様の生涯は反骨の生涯です。1933年旧満州国錦州省に生れ、少年時代を中国大陸で過ごしました。1944年 11歳の時、日本に引き揚げ。広島市内に住むが、1945年の原爆投下の3ヶ月前に母の郷里である広島県三次市に引越しし、被爆を免れます(同級生の多くが、原爆症で死にました)。1959年創作人形を一生の仕事と決意し、かわいい人形ではなく、「人間の本質を、人形たちに語らせたい」という観念で、人形創作に励みました。

    1973年、 NHK『新八犬伝』で人形美術を担当し、「玉梓の怨霊」をはじめとする300体もの人形を作り、一躍人気作家となりました。1978年、蜷川幸雄演出、平幹二朗主演「王女メディア」、「ハムレット」のアートディレクター(衣裳、小道具、メイク)を担当。1980年、蜷川幸雄演出「NINAGAWAマクベス」のアートディレクターを担当。以後蜷川幸雄様の多くの作品に参加しました。

    人形からはじまり、原爆を通過し、人間に至り、人形の世界感を人間に融合するという唯一無二の芸術家ジュサブロー様。この作品の奇跡は、破天荒なオカルト時代劇を、超一流の人々が本気で創作したところにあります。だからこそ、これから再評価されるべき日本映画の至宝の一つであり、佳那晃子様が演じた細川ガラシャは日本女性にとて、「日本女性の魔性」を知るためのスタイル・アイコンなのです。


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