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ハンフリー・ボガート

ハンフリー・ボガート1 『カサブランカ』1(2ページ)

ハンフリー・ボガート
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ソフト帽の美学

映画のオープニング・シーンはドン・シーゲル(後にダーティハリーの監督をつとめる)によって撮影されました。

ストライプのネクタイとストライプのシャツ。

ゆったりとしたスーツのシルエットが生み出す男のゆとり。

ボギーだけがソフト帽を被り、そのイメージは構築されていきます。

男にとって、スーツを着こなすということは、ダンディズムの入り口です。

男にとって、スーツを着たときに必要な所作の全てが堪能できる作品です。

休憩中にポール・ヘンリードとチェスをするボギー。後ろから覗き込むクロード・レインズ。

リック・ブレイン・ルック3 デザートスーツ
  • アースカラーのウールスーツ、ノッチラペル、シングル
  • ホワイトシャツ、長めの襟元にステッチ(40年代とは思えない70年代後半風な襟)
  • 円柄のネクタイ、もしくは、レジメンタルタイ
  • ホワイトリネン・ポケットチーフ
  • ロンジン エヴィデンツァの腕時計
  • ダークグレーのソフト帽
  • ダークブラウンのレザースリッポン
  • ダークブラウンのレザーベルト

ボギーと言えば、その代名詞は、特徴的な煙草の吸い方や、トレンチコートがあげられるのですが、もうひとつ忘れてはならないのが、ソフト帽です。

世界中でこの男ほどソフト帽が似合う男は存在しないと言えるほどに、ボギーはソフト帽が似合う男の絶対条件を教えてくれます。

ここでソフト帽が似合う男の絶対条件を箇条書きしてみましょう。

  1. 高身長の男には似合わない。165cm~175cmの男性によく似合う
  2. ある程度の皺がないと帽子が浮き上がってしまう
  3. 勇気を出して斜めに傾けること
  4. ポケットに手を入れて、猫背気味に歩くべし
  5. 絶対に笑わない
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トレンチコートの美学

ボギーと言えばトレンチコートであり、もはやそのブランドがバーバリーであるか、アクアスキュータムであるかは重要ではない。

君と幸せだったパリの思い出があるさ(We’ll always have Paris.)」

男と女が共に帽子をかぶり抱き合う瞬間。そして、ダンディズムは昇華する。

これぞボギーの最強イメージである「三つ数えろ!」ムーブ。

リック・ブレイン・ルック4 トレンチコート
  • バーバリーアクアスキュータムのカーキのトレンチコート
  • ホワイトシャツ、長めの襟元にステッチ(40年代とは思えない70年代後半風な襟)
  • 円柄のネクタイ
  • ダークグレーのソフト帽
  • ダークブラウンのレザースリッポン

映画史上最も有名なトレンチコート・ムービーにひとつであるこの作品におけるトレンチコートには、諸説がありますが、恐らくアクアスキュータムバーバリーだと言われています。

ちなみにボギー自身は、プライベートでは、アクアスキュータムを愛用していました(バーバリーとの著作権裁判で、ボギーの息子スティーブンもそう証言していました)。

トレンチコートが完全に復権を果たした現在において、ボギーのトレンチコートの着こなしは、大いに参考になります。そして、それ以後のトレンチコートを着ている映画の主人公たちが、いかに彼の影響を受けていたのかということを思い知らされずにはおれません。

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トレンチコートの歴史

ソフト帽とトレンチコートと煙草。

トレンチコートのボタンは締めずにガウンのようにつき合わせ、ベルトをバックルに通さずに前で結んでいます。

トレンチコートとは、涙を流すコートなのです。

ハンフリー・ボガートによって、ソフト帽とトレンチコートと煙草という男のダンディズムの「三種の神器」は生み出されました。

つまりこの作品により、まだ戦場における軍服であったトレンチコートに、男性のダンディズムを体現する新たな役割が与えられたのでした。

ちなみにトレンチコートと言えば、英国のバーバリー(バーバリー・チェック)とアクアスキュータム(ガンクラブチェック)が有名です。バーバリーは1879年にギャバジンを考案しました。トレンチコートは、1899年の第二次ボーア戦争の際に初めて戦場で着用されたと言われています。

そして、1914年からはじまる第一次世界大戦の塹壕戦においてトレンチコートは英国陸海軍に正式採用された、大戦中に50万着以上着用され、終戦後に、伝統的なレインコートの代わりとして市民に広まったのでした。

1917年8月29日のニューヨーク・タイムズ紙で「トレンチコートの需要が急増中」と報道され、公式にトレンチコートという名が知れ渡るようになりました。

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そして、ハンフリー・ボガートは永遠になった。

トレンチコートには後姿がとても似合います。

名台詞「ルイ、これが美しい友情の始まりだな」。

わたしは自分がポール・ヘンリードとハンフリー・ボガートのどちらを愛しているのかわからなくて、しつこく監督に質問した。「まだわからないんだ・・・うまくやってくれよ・・・どっちつかずの感じで」・・・わたしが夫と一緒に飛行機で発つのか、それともハンフリー・ボガートと一緒に残るのかがどうしても決まらないので、二通りのエンディングを撮影する予定になっていた。

イングリッド・バーグマン

ハンフリー・ボガートは、この作品の撮影中に、脚本がほとんど出来ていない状況に対して、「救いようのない駄作」に出演してしまったと後悔していたと言われています。そして、バーグマンをはじめとする出演者のほとんど全員が、この作品はヒットしないだろうと予想していました。

であるにも関わらず、映画は大ヒットし、なんと第16回アカデミー作品賞まで受賞することになりました。

今ではこの作品は、男が必ず見ておかなければならない「ダンディズムの教科書」として不動の地位を確立しています。この作品が永遠に不滅なのは、今ではすっかり見ることの出来ない種類の男たちの姿が、ギリシア神話のように、映像の中に焼き付けられているからなのではないでしょうか?私たちは、明らかに、スマホで流行に振り回されている男たちの立ち振る舞いとファッションにうんざりしているのです。

ホンモノの男とは、どんなものにも振り回されずに、自分の信じるもののためだけに生きていくその姿から生み出されていくのではないでしょうか?ボギーを見ていると、笑顔を振りまく男に魅力なぞ感じることが出来ないと思うのは私だけでしょうか?

最後に、この作品に対して、自信がなかったボギーに対してある男がしたアドバイスを記載しておこう。当時のボギーは42歳の自分のような男(アル中の妻としょっちゅう喧嘩をしていた)に、あれほどの若い美女が惚れるわけがないという思いに悩まされていました。

そのアドバイスとは、「きみはじっと立っていて、つねに彼女のほうからきみのところに来させるんだ」ただそれだけです。これぞホンモノの男の作り方なのです。