実はブロフェルドがニュー・ボンドをサポートしていた
当初監督のピーター・ハントは、ブロフェルド役としてドナルド・プレザンス(『007は二度死ぬ』のブロフェルド)の再招聘を考えていました。しかし、スキー、ボブスレー等アクションの要素が多い今回の役柄を考え、より肉体派としての説得力のある役者を求めました。
更にもうひとつの条件として無名のボンドに対してスターであることを条件としました。そして、テリー・サバラス(1922-1994、TVドラマ『刑事コジャック』)が選ばれたのでした。
テリー・サバラスに対するジョージ・レーゼンビーの思い出として有名なのが、レーゼンビーは新米の俳優だからみんなでケアしようという空気が漂っていた二人の初リハーサルのシーンで、サバラスが、レーゼンビーを見て「彼には何の助けもいらないな。スクリーンの中で私を吹き飛ばすほどの存在感に溢れている」と言い放ったエピソードです。その瞬間、レーゼンビーは自分自身に信頼が持てるようになったと回想しています。
ブロフェルド役としてボンドと敵対する役柄のサバラスが、実際のところ、ボンドをサポートしていたのでした。それは映像の中に滲み出ているのですが、このテリー・サバラスのブロフェルドには、優雅さと大物の貫禄が存在しています。
『007 私を愛したスパイ』のクルト・ユルゲンスもそうなのですが、ボンドの悪役に絶対に必要なのは、これであり、最近のボンドムービーの悪役に決定的に欠けている要素とも言えます。
ジェームズ・ボンド・スタイル12
キルト・ファッション
- スコティッシュ・ハイランド・ドレス
- プリンス・チャーリー・ジャケット、3ボタン・ウエストコート
- ブラック・タータンチェックのキルト
- レース・ジャボ
- キルト・ホース(ソックス)
- スポーラン(ポーチ)
- フランク・フォスターの白シャツ、バンド・カラー
- ブラック・バックル・ブローグ
マオカラー・スーツのブロフェルド
レッドステッチが印象的な、テリー・サバラスが演じるスキンヘッドのブロフェルドのチャコールグレーのマオカラースーツ、中のレッドベストが実に美しいです。
ジェームズ・ボンド・スタイル13
カーディガン・カジュアル
- リブ編みのライトブラウン・カーディガン、5つのレザーボタン、2つのフロントポケット、ラグランスリーブ
- タッタソール格子柄のシャツ
- ブラウン・トラウザー、ツイード(変装スーツと同じトラウザー)、スリムカット、ダブル・フォワード・プリーツ
- ブラウン・レザー・ウイングチップ・ダービーシューズ
- ロレックス・クロノグラフ6283
ボンドムービーの特徴その1。変装した時のファッションは、途端にダサくなる。つまりそれだけスパイをしている時の普段着のボンド・ファッションが決まりに決まっているということです。
ボンド・ムービーの特徴その2
定番化したスキー・アクションはこの作品から始まった。そして、この作品以降、『007は二度死ぬ』のみならず、10回は死んでそうなアクションがてんこ盛りになるようになりました。
今見ても素晴らしいスキー・アクションを撮影したのは、ウィリー・ボグナー・ジュニア(1942-)です。この作品以降、ボンド・ムービーの『007 私を愛したスパイ』(1977)、『007 ユア・アイズ・オンリー』(1981)、『007 美しき獲物たち』(1985)におけるスキー・シーンを撮影し、父親が1932年に創業したスポーツウェア・ブランド・ボグナーのスキー・ウェアをボンド・ムービーに浸透させた男。
ジェームズ・ボンド・スタイル14
スキースタイル
- ボグナーのスキー・ウェア、タイトフィットなブルー・スキースーツ、ボグナーのBロゴ入りフロントジッパー
- 白のショート・ポロネックのニット
- ブラック・グローブ
- ブラック・スキーブーツ
- ネイビーブルーニットハット
作品データ
作品名:女王陛下の007 On Her Majesty’s Secret Service(1969)
監督:ピーター・ハント
衣装:マージョリー・コーネリアス
出演者:ジョージ・レーゼンビー/ダイアナ・リグ/テリー・サバラス/アンジェラ・スコーラー/カトリーヌ・シェル
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