フェミナン プルリエル
原名:Feminin Pluriel
種類:オード・パルファム
ブランド:メゾン・フランシス・クルジャン
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2014年
対象性別:女性
価格:70ml/39,600円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム
「香水は芸術ではないが、素肌の上で〝生きる芸術〟となる」

©Maison Francis Kurkdjian

©Maison Francis Kurkdjian
天然香料ともとの植物との関係は、言ってみればオレンジ・ジャムとオレンジ、あるいはヒバロ族の干し首と生身の敵との関係に相当する。・・・ある意味では、天然香料が本物のレプリカとしてできがよくないからこそ香料が存在するとも言える。
もしローズオイルの匂いがバラの匂いと同じだったら、調香師はうなだれて降参するしかない。しかし実際は違う。調香師の課題とは、そのように切り刻まれて加熱され、変わり果ててしまった自然物の破片を混ぜ合わせ、まるで遺体修復師のように、ふたたび生命の輝きをあたえることなのだ。
ルカ・トゥリン
しかし、天然香料の魅力は、同時に最大の難点でもあるのだが、その複雑さにある、複雑さは定義づけがむつかしく、認識するのはたやすい。
ルカ・トゥリン
「偉大なる香水が表現できる、女性と男性らしさの永遠性への探求」というテーマで生み出されたメゾン・フランシス・クルジャンによるペア・フレグランス。それが2014年に誕生した「フェミナン プルリエル」と「マスキュラン プルリエル」です。
「フェミナン プルリエル」には、〝複数の女性〟という不思議な名前が付けられています。それは、一人の女性の中の複数の女性、つまり理想の女性(憧れる女性)が持つ、誰からも愛される人だからこそ、近寄りがたい人であるという複雑さをアイリス、ジャスミン、ローズ、オレンジブロッサムのフローラルブーケ×シプレに託したこの香りは、フランシス・クルジャンにより調香されました。
「香水は芸術ではない」と発言しながら、世界中の誰よりも、香水を芸術の領域にまで高めてやろうという野心を心に秘める、複雑なオトコゴコロの持ち主であるクルジャン。そんな彼=複数の男性だからこそ生み出すことが出来た、複雑だからこそ魅力的なオンナゴコロの香りです。
女性の肌の上で、根を張り、花を咲かせていく香り。

©Maison Francis Kurkdjian
魔法のように幻想的なフローラルシプレの空気を、自然な仕上がり、時間がたっても自然な美しさで吹き込んでいくこの香りは、ムエットに一吹きした程度では、その良さを感じることが出来ない、全体的に柔らかい香り立ちで、甘さを強調しない〝とらえどころのない複雑さ〟が特徴です。
〝とらえどころのない複雑さ〟とは?そもそもフレグランスにおける〝とらえどころのない複雑さ〟とはどういうことなのでしょうか?一流調香師と呼ばれる人のフレグランスに存在するのが、この〝とらえどころのない複雑さ=いろいろな感じ方〟が出来る香りを生み出す、という共通点です。
香りに対する感じ方とは、それを身にまとう人それぞれの人生模様が如実に反映されるものなのです。そんな感じ方を〝とらえどころのない複雑さ〟が豊かなものにし、万能性へと昇華してくれるのです。
そのような香り立ちの流れにおいて、「フェミナン プルリエル」は、誰からも愛される、近寄りがたい女性を演出する香りと言えます。
すなおで自然な感じのまま生きている女性のように、フルーティなグラースローズ、艶やかなジャスミン、爽やかに花の蜜を散らすオレンジ・ブロッサム、涼しげなスズラン、そしてお淑やかなアイリスとヴァイオレットが、スプレーから吹き出したのではなく、どこからともなく朝露をふくんだパステルカラーの花々の匂いが我が身にしづやかに舞い落ちるようにして、この香りははじまります。
この香りの魅力の秘密は、地球が自転するように、あなたという地球を中心に、パウダリーなアイリスとヴァイオレットのコスメティックな清潔感溢れる女性の優しさを、他の花々が生み出す、冷たさ、温かさ、甘さ、苦さといった女性の多面性とのコントラストを生み出しながら自転していく所にあります。
さらに、大地の目覚めを感じさせるベチバーと森の静謐さを感じさせる(仄かにチョコレートのような)パチョリが、洋ナシのようなほのかなフルーティーさと共に、それぞれの花々をひとまとめにして、手と心のぬくもりを感じさせるようなやさしさで肌に馴染んでいくように広がってゆきます。
クワイエット・ラグジュアリーを体現する、理想の女性の花の匂い。

©Maison Francis Kurkdjian

王妃になる前のグレース・ケリーを思わせる香りです。
たぐい稀なる天然香料と合成香料を匠の技でブレンドし、その素材の良さを一瞬で伝えることなく、つまり、ひけらかすことなく、クワイエット・ラグジュアリーの精髄とも言える、(高級石鹸の香りが広がるわけでもなく)まるで女性の肌の上で、花々が生命を持ち、根を張り花を咲かせているような錯覚を覚えさせてくれる香りです。
端的な表現をするならば、〝香りが前に出るのではなく、香りは絶えず、あなたの周りを回っているのです〟そんな心安らぐ豊かで明るい輝き、すなおで自然な感じのまま生きているロマンチックな心を持ち続ける女性の、さまざまな魅力を引き出してくれる香りです。
素肌の上に、一年中咲き続けることが許される花々の香り。しずかにフレッシュにスパークリングする、最初から最後まで、時代を超えた、息をのむほど美しいアイリスを中心としたヴァイオレット、ローズの繊細な優雅さと至福のハーモニーに包まれていくようです。
ラルフ・ローレンの「ロマンス」や、ゲランの「イディール」、ナルシソ・ロドリゲスの「ナルシソ ロドリゲス フォーハー」ともよく比較される香りです。
香水データ
香水名:フェミナン プルリエル
原名:Feminin Pluriel
種類:オード・パルファム
ブランド:メゾン・フランシス・クルジャン
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2014年
対象性別:女性
価格:70ml/39,600円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム
シングルノート:フィレンツェ産アイリス、ヴァイオレット、グラース産ローズ、エジプト産ジャスミン、スズラン、オレンジ・ブロッサム、ベチバー、インドネシア産パチョリ