オーデフルール プラム
原名:Eau de Fleur de Prunier
種類:オード・トワレ
ブランド:ケンゾー KENZO
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2009年
対象性別:女性
価格:50ml/7,000円
2008年から2011年にかけて発売されていた『花の水』シリーズ

©KENZO PARFUMS

©KENZO PARFUMS
2022年よりNIGOがクリエイティブ・ディレクターをつとめるファッション・ブランド、KENZOの歴史は、高田賢三(1939-2020)が、男子にも門戸を開いたばかりの文化服装学院を卒業後、1964年に船旅で単身パリに向かうことからはじまりました。
そしてパリで経験を積み、1970年にギャルリ・ヴィヴィエンヌにブティック「ジャングル・ジャップ」をオープンし、日本人としてパリに初めて出店したデザイナーとなりました。同年、ランウェイショーを行い、着物スリーブのプルオーバーを発表し、ヨーロッパでセンセーショナルな存在となりました。
立体裁断が基本のパリ・モードに、着物の幾何学的な形に由来する〝隠す美しさ〟を持ち込み、さらに木綿を素材に、レイヤードとオーバーサイズという概念を持ち込みました。そして後に、ヒッピー・ファッションを明るく上品なものへと転生させたフォークロア旋風の火付け役となるのでした。
高田賢三のフレグランスに対する挑戦は、1978年からはじまりました。この年「キングコング」というバナナの香りがするフレグランスを発表するも、まったく売れず、すぐに廃盤となりました。
1987年にケンゾー・パルファムが創設され(初代CEO兼クリエイティブ・ディレクターはピエール・ブロック、1999年に退任)、1993年にLVMH傘下に入りました。
そして1999年に、KENZOの創立者・高田賢三(1939-2020)が引退するにあたり、ケンゾー・パルファムのクリエイティブ・ディレクターに就任した、写真家、映像作家でもあるパトリック・グエージが、賢三の愛した花、ポピー(けし)をモチーフに、〝究極のケンゾーイズム〟を体現する香りとして、2000年に「フラワー バイ ケンゾー」を、アルベルト・モリヤスの調香により生み出しました。
空前絶後のヒット作となったこの作品以降、ケンゾーにとって〝花の香り〟は神聖なものとなりました。そのケンゾーのフラワー旋風の余波で、2008年に生み出された限定コレクションが『オーデフルール(花の水)』でした。
このコレクションのために、日本を連想させる3つの花々(お茶の花、マグノリア、絹の花)が選ばれ、フランシス・クルジャン、オーレリアン・ギシャール、ジャン・ジャックといった3人の著名な調香師に依頼して創造されました(好評を博し、2011年までに合計6作品が発売されました)。
好評の中、4番目の香りとして2009年に発表されたのが、フランシス・クルジャンにより調香された「オーデフルール プラム」でした。
冬の名残を感じさせる梅の花が、素肌に舞い落ち、春を開花させる

ケンゾー2008年秋冬 ©KENZO
大伴旅人『万葉集』
紫式部の『源氏物語』に最も多く登場する三つの花のうちのひとつ梅(他は、桜と藤)。日本最古の歌集『万葉集』にも、梅を題材とした和歌が122種あるほど、古来より親しまれてきた梅は、日本の歴史・文化・生活を、幾千年もの春の訪れと共に見守って来ました。
光源氏39歳の春。『源氏物語 第三十二帖 梅枝』のものがたりが、しづやかに素肌に舞い落ちるように、梅の香りが、ふんわりと酸っぱさを漂わせるように広がってゆきます。
すぐにパウダリーなアーモンドが注ぎ込まれ、素肌を透かして心に満たされた清らかな水の上に、梅の花びらが浮かんでいくような、瞑想感で満たしてゆきます。
冬の名残を感じさせる、まだ冷たい風に乗ってやってくる梅の花が、温かい素肌の上で、完全な春を開花させていく、育ちの良いお嬢様の面影を残す、39歳の春を演出してくれる香りです。
香水データ
香水名:オーデフルールプラム
原名:Eau de Fleur de Prunier
種類:オード・トワレ
ブランド:ケンゾー KENZO
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2009年
対象性別:女性
価格:50ml/7,000円
トップノート:プラム
ミドルノート:プラム・ブロッサム
ラストノート:アーモンド