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【エルメス】キュイール ダンジュ(ジャン=クロード・エレナ)

エルメス
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キュイール ダンジュ

【特別監修】Le Chercheur de Parfum様

原名:Cuir d’Ange
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2014年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/39,820円
公式ホームページ:エルメス

エルメス HERMES キュイールドゥアンジュ EDT 4ml〜 選べるサイズ

価格:6,200円
(2023/8/24 13:34時点)
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10年間かけて生み出したエレナの宿願の香り

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地中海の庭』はわずか3日で生み出した香りです。しかし、この香りには10年かかりました。長ければ良いという話ではないが、本当に長かった・・・

ジャン=クロード・エレナ

「地中海の庭」の成功により、2004年にジャン=クロード・エレナエルメスの初代専属調香師に就任することになりました。そして、≪嗅覚の詩≫とも言える究極のフレグランス・コレクション『エルメッセンス』が誕生しました。

2014年に十二作目として発表されたのが「キュイール ダンジュ」です。エルメッセンス初のレザー・フレグランスである「キュイール ダンジュ」とは、英語でAngel’s Leather、日本語で「天使の革」という意味です。

2004年にエレナがエルメスの専属調香師に就任した直後に、ひとつの野望が生まれました。きっかけは、初めてパリにあるエルメスのレザー保管庫に入った時に、あらゆる種類のなめされている革の山の中を歩き、そこで革を触って薫るだけで一日を過ごした経験からでした。

そこで私が出会い、触れた最も美しいレザーは、手の上で数グラムくらいにしか感じられず、とても柔らかく、ほとんど触っているかどうかも分からないものでした。そして、その経験から、自然になめされたレザーはそれぞれ異なる香りを持つということを知りました。

そこにある最高級の革のひとつは、ミモザ、アイリス、水仙のような花の香りがするということをエレナは知り衝撃を受けました。そして、彼は今までにない新しいレザーのアイデアを思いつくのでした。

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「天使の革」=「エルメス・レザー」の香り

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かねてより、自分が文学に認めている重要性、そして文学がどのようにフレグランスと結びつくのかを明らかにしたいと願っていました。

特にジャン・ジオノの作品(『木を植えた男』で有名なフランス人作家)との出会いについて香りで語りたいと思っていたのです。その時ふと『Jean le Bleu』の一節に出てくる2つの言葉が頭に浮かびました(「神の足もとを美しく飾る天使の革の香り」)、キュイール・ダンジュ(天使のレザー)。

香りという私の言葉を用いて、詩の形式で、レザーと肌の愛情に満ちた会話を新しく表現したいと考えました。柔らかさと軽さ、緊張とやさしい愛撫。ヘリオトロープとサンザシ、レザーとムスク。

ジャン=クロード・エレナ

それは、ほとんどのレザー・フレグランスが採用している伝統的なキュイール ドゥ ルシー(ロシアの革)という荒々しくオイリーでスモーキーな香り(しかもそれらはレザーの香りというより、レザーの香りからインスピレーションを受けた香り)ではなく、繊細で艶のある滑らかな香りを生み出そうというアイデアでした。

かくして、エレナは自身の理想のレザー・フレグランスを作るために10年の月日をかけることになるのでした。ちなみに、レザー自体は香料として使用することは出来ず、レザーを表現する1つの香料も存在しないため、調香師が独自でレザーアコードを作らなければなりません。

レザーの香りというのは、1つの匂いではなく、何百もの香気成分が含まれています。自然のタンニングの過程でお花のように香るジェニュイン・レザーも多くあります。そして、レザーにおいて、化学的な香りというのは実は一般的なのです。

そのため調香師がレザーの香りを作る場合、それはレザーの香りではなく、レザーの芳香にインスピレーションを受けた香りになります。ちなみに天使の香りに関しては、私はまだ天使に会ったことがないので、甘い香りとほんの少し意地悪そうな香りを一緒にすることで作り上げました。

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さぁ、エルメスレザーを抱きしめて!

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ケリー カレーシュ」と「キュイール ダンジュ」は異なるものなのですが、ケリーカレーシュがキュイール ダンジュを部分的に演じているというのもまた真実であり、キュイール ダンジュの中にはケリーカレーシュの前身もまた存在しているのです。

ジャン=クロード・エレナ

エレナが、キュイール ダンジュを生み出すための最初の草稿として生まれたのが、ケリーカレーシュでした。しかし、ケリーカレーシュは、まだまだ彼自身が求めるレザー・フレグランスからは程遠いものでした。

2007年に発売されたケリーカレーシュから、7年の年月を経て誕生したキュイール ダンジュは、(ブラックカラントとグレープフルーツの酸味のあるノートと、ローズを中心としたフローラルノートをレザーと組み合わせた)ケリーカレーシュとは異なり、よりスパイシーノートが追加され、ほんのりとスモーキーな方向へと香りが進行してゆきます。

サンザシのアニマリックなインドールの香りが、エルメスレザーだけが持ちうる、極上の革製品の香りを連想させます。そこに、エレナは、念入りに、オレンジブロッサムを中心とする少しパウダリーなフローラルノートを配することにより、エルメスレザーに抱擁されているかのような至福のトップノートを生み出すことに成功しています。

このオレンジブロッサム中心のフローラルノートが、ケリーカレーシュのローズとは異なり、エレナの嗅いだタンニングされている革のふくよかな、少し甘みのある香りを演出しています。

やがて、レザーノートが肌と一体化する中で、雲雀のごとく天使の羽を持ったパウダリーなヘリオトロープがやって来るのです。そこに、セカンドスキンのように肌にピッタリと馴染むムスクが加わり、エルメスレザーの持つあの独特な色艶と自身の肌艶が渾身一体化してゆくのです。

それはまるで、エルメスのなめし革工場で、あなた自身のすべてがなめされてゆき、極上の女性もしくは男性へと育て上げられていくような香りなのです。

さらに言うと、無骨さよりもエレガンスが引き出されたエルメスの上質なレザーに、様々なフローラルの芳香が、柔らかく戯れるようにレザーと踊って見せるような香りです。つまりは、身に着けているレザー(エルメス製でなくても良い)に生気を与えてくれる「レザーのための」香りとも言えます。

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作品データ

香水名:キュイール ダンジュ
原名:Cuir d’Ange
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2014年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/39,820円
公式ホームページ:エルメス


シングルノート:ヘリオトロープ、サンザシ、スミレ、水仙、ムスク、レザー

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価格:6,200円
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