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【クリスチャン ルブタン】クリスチャン ルブタン コレクションの全て

クリスチャン ルブタン
©Christian Louboutin
クリスチャン ルブタン
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クリスチャン ルブタン コレクション

Christian Louboutin Collection 靴の裏に赤いペインティングが施されたシューズが広まるきっかけを作った男クリスチャン・ルブタン(ルブタンのレッドソール人気が、多くの偽物を生むことになった)。そんな彼が、その「赤の革命」をフレグランス業界にまで波及させようと目論んだのが、2016年9月に発表された「クリスチャン ルブタン コレクション」でした。

そして、大々的に発売された3種類の香りは、ルブタンというブランドの個性を何一つ反映させていない凡庸なものでした。このコレクションは、明らかに〝赤を連想させない香り〟であり、一足目のルブタンシューズを購入したらそれは(ハワイアナスのような)ビーチサンダルだったというお粗末な歴史的失敗作となってしまいました。

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クリスチャン・ルブタンの野望

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クリスチャン・ルブタン。2016年コレクション発表当時、調香師の名を公表しませんでした。©Christian Louboutin

女性だけでなく男性にとってもラグジュアリー・シューズ・ブランドとして定着したクリスチャン・ルブタン。世に靴の裏に赤いペインティングが施されたシューズが広まるきっかけを作った男(ルブタンのレッドソール人気が、多くの偽物を生むことになった)。

クラッチバッグや財布などのアイテムも売れ、スタッズ=ルブタンというイメージを植えつけている彼がついにフレグランス業界にも乗り出したのでした(正確には、フィルメニッヒ社に依頼した)。

そのためにルブタンは、2013年にニューヨーク拠点のバタルア ビューティと合弁会社クリスチャン ルブタン ボーテを設立しました。このバタルア ビューティのCEOであるロビン・バーンズ・マクニールは、長年、カルバン・クライン・コスメティックスのCEOをつとめ、「オブセッション」と「エタニティ」をヒットさせたヒットメーカーでした。

振り返ると2016年という年は、ファッション=アパレル産業に従事する人々に、香水というものを否応なしに意識させる香水元年でした。それはルイ・ヴィトンが9月に販売したレ パルファン ルイ ヴィトンやニッチフレグランスの台頭が背景にあります(この年、多くのフレグランス・ブランドが日本に上陸した)。

その流れに乗るように発売されたルブタン・コレクション。しかし、それは新設されたコスメカウンターの販売員たちの理解不足と、4万円台の高価格帯、そして、(当初極秘にされた)調香師不在と、奇妙なボトルデザイン、一嗅ぎする限りにおいては平凡すぎる香りの五重苦に悩まされ、全く売れない代物となってしまいました。

発売当時の購買層は、香水についてほとんど知識のない、男性の財布で生きている類の女性層と、インスタグラマーの影響を受けやすいミーハー層のみでした。

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敗因は、このボトルデザインにあった。

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真ん中の空間は、ルブタンのシューズを後ろから見たシルエットです。©Christian Louboutin

ラグジュアリー・ブランドが香水を生み出すにあたり集中すべきことは以下の3点のみです。

  1. 香り(ブランドを連想させる香り)
  2. ボトルデザイン(これからのブランド・イメージの象徴)
  3. 調香師

つまりその香水を生み出す、ブランドイメージを裏切らない香水を作ることにファーストフレグランスは専念しなければならないわけです。そして、クリスチャン・ルブタンは、その素晴らしいブランドイメージに、ふさわしい香水を生み出すことに失敗しました。

クリスチャン・ルブタン自身は「私が目指したのは、女性本人と彼女たちがもつ欲望を称えること。この3つのフレグランスで、女性たちの個性をより際立たせたいと考えた」とアナウンスしています。

しかし、彼は香りを軽く見てしまったのです。靴の価値を高めた天才は、香りの価値を低く見つもってしまったのです。ここにトム・フォードの香りに対する姿勢の天才性との明確な差が見て取れます。

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天才が生み出した香りの〝ねじりこんにゃく〟

2019年にニューヨークでオープンした「ハドソン・ヤード」のデザインもトーマス・ヘザーウィックが担当した

トーマス・ヘザーウィック

女性の陰部およびねじりこんにゃくを連想させる悪趣味なガラス製のボトル。デザインを担当したトーマス・ヘザーウィックは「現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ」と称される人であり、2012年のロンドン五輪の聖火台のデザインをした人です。

ルブタンが彼にボトルデザインを依頼するに際し要求したのは、「人間の体のように血液が循環しているようなデザイン」「ずっと女性が近くに置いておきたいと願うようなデザイン」でした。

トーマスのデザインの根底には、日本の伝統工芸に対する深い敬愛の念があります。そんな彼が、トーテムポールやトロフィーをモチーフにデザインしたのがこのボトルです(ねじれたボトルにより、液体の生命観を生み出そうとした)。

さらに、同時に発表されたオリジナルフィルム3部作が本当にひどい代物でした。男優が一切出演しないジョージ・キューカーの傑作映画「ザ・ウィメン」(1939)から着想を得て制作されてたと言われていますが、ただ男性だけが出演している無味乾燥な会話で構成されるテレビドラマの一コマのような、退屈を絵に描いたようなフィルムでした(1年後に、ルブタン自身がプロデュースしたセクシーなイメージの映像に取って代わられることになります)。

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ルブタンの過信。当初、調香師の名はなぜ明かされなかったのか?

©Christian Louboutin

更に、当初、調香師を公表しなかったのは、あくまでクリスチャン・ルブタンによる創造物という概念を顧客に与える意図だったのですが、現代において、香りをブランド創業者が作れると考える人はほとんどいないことをルブタンは知りませんでした。そして、多くの香水愛好家たちは、何よりも調香師が誰であるかを気にとめていることも知らなかったのです。

ちなみにこの香りは、3年の月日をかけて、フィルメニッヒ社の30人の調香師が、120の香りを創造し、その中からルブタン自身がこの3つの香りを選び出したのでした。

80ml 40000円台のみという価格設定もさることながら、その後に、急いで、ミニボトル3本セット(2016年11月に5ml×3で、14,040円で発売。当初限定だったが今では常時販売している)や、30mlボトルを販売(2017年9月)することになるのですが、この異常に高い価格設定が、ルブタンという人間のブランドに対する姿勢を露呈してしまったのです。

つまりは、肝心のシューズ(そして、コスメ)においても、クリスチャン・ルブタンは、相当な粗利で販売しているんだろうなという事実です。この香水販売の馬鹿げた狂騒劇によって、ルブタンは多くのファンを失ってしまいました。

同時期に発売されたルイ・ヴィトンのレ パルファン ルイ ヴィトンと比べると、コンセプトもその力の入れようも全く違いました。一言で言うならば、ルイ・ヴィトンの一日前に発売しなければならなかった香水だということです。

ではクリスチャン・ルブタンのファースト・フレグランス・コレクションをひとつひとつ見ていきましょう。

ちなみに、このフレグランスの失敗により、ルブタンは、バタルア ビューティとの合弁契約を終了し、2018年にプーチと化粧品の製造および、開発、販売に関する長期ライセンス契約を締結しました。そして、2013年からルブタン・ボーテのGMとして責任を担ってきたロレアルから引き抜かれたキャサリン・ロジェロも、解雇されました。

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クリスチャン ルブタン コレクション


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