まさにイマの時代の感覚に合うファッションムービー
私たちは、機械に囲まれ“生きている実感のない”時代を生きています。人と人との対話の多くには、金銭が関わっています。それは夫婦の間であってもです。大人も子供もお金がなければ楽しめないシステムにがんじがらめになっています。東京や大阪は、もはやお金がないと何も出来ない都市です。
自然というものは、お金のない人々を癒す環境でした。そして、今、その癒しは、失われた過去の遺産を映像で見ることでしか満たせなくなりつつあります。自然のほうが高く時代になりつつあります。間違いなく、私たちは安上がりに作り上げられたまやかしの中でもがき苦しんでいます。トレンチコートとギンガムチェック。機能性さえも失われた形ばかりのぺらぺらなトレンチコートと、一度洗濯すればギンガムチェック柄さえも消えてしまいそうな深みのない色味のギンガムチェック。
昔の映画の中で着ているファッションの中に見る本来のファッションの姿。私たちはそろそろ考えるべき時期に来ています。プチプラ、ファストファッションという言葉のまやかしに。明らかに、一昔前の人々よりも、私たちは低品質な衣服を身に着ける生き方で飼い慣らされているのではないでしょうか?機械よりも服にお金をかけるべき時代がやってきています。どうして?それは生きる実感が沸かないのは、多分にボロ着に包まれていることによる影響が強いからです。
ちなみに、ギンガムチェックドレスは、アルレット・ナスタ(1937-)によって創造されました。彼女は、60年代のブリジット・バルドーの多くのスタイルを創造した人としても有名な人ですが、日本では全く過小評価されている存在です。
ジュヌヴィエーヴ・ルック5 トレンチコート
- 水色のカーディガン
- アルレット・ナスタがデザインしたパウダーブルーのギンガムチェックのワンピース
- 黒色のヘアリボン
- クラシックなバーバリーのトレンチ
- 水色のショール
- ブラックパテント・メリージェーン
ジュヌヴィエーヴ・ルック6 レッドタートルネックセーター
- ショッキングレッドのタートルネックセーター
- グレーのプリーツスカート
- ピンクのモヘアコート
大人になると言うことは、永遠の愛の誓いを破ること
永遠の愛を誓い合ったギィとの愛を断ち切り、合理的な愛へと乗り換えるジュヌヴィエーヴ。いいえ、乗り換えたのではなく、過去に縛られて生きていくわけにはいかないのです。ラストシーンにおいて明かされる「男の子だったら、フランソワ、女の子だったらフランソワーズ」お互いの子にその名を付けていたのです。二人の愛の記憶は子供へと受け継がれています。しかし、ちょっとしたことで愛の歯車が狂い始めるのも、ごく自然なことなのです。愛は、いきものなのですから。
「ここは暖かいわ」「偶然だわ」「会ってみる?」「あなた、幸せ?」「とても幸せだよ」。ガソリンスタンドから去るジュヌヴィエーヴと、戻ってきた妻子と雪遊びに講じるギィ。二人は共に相応しい相手と結婚することが出来、素晴らしい思い出を共有して別れを迎えた。それは本当に切なくも幸せなことなのです。若き日の実らなかった恋。恋も愛もいきもの。実らなかったからこそ二人にとって永遠に美しい、そして、まだ現在進行形の愛なのです。
素晴らしい映画は、ファッション・センスだけでなく、文章では説明できない“愛”を教えてくれます。そして、カトリーヌ・ドヌーヴという女優が、ただ美しいだけの女優でないことを、見せてくれます。人間は年老います。しかし、映画は年老いません。
ジュヌヴィエーヴ・ルック7 ピンクノースリーブワンピース
- ノースリーブのピンクウールワンピース。フザールスタイル
- ピンクのヘアリボン
- ブラックメリージェーン、3人でガレット・デ・ロワを食べる。
お母さんは、ノースリーブのリトルブラックドレス、ピンクの大判シフォンストール。ブラックハイヒールパンプス。演じるアンヌ・ヴェルノン(1924-)は、50年代はグラマラスなイメージで活躍していた女優さんなのですが、40前の色気たっぷりのお母さんの魅力が、フランス映画っぽくて良いです。母も娘と同じくらいに魅力的な作品なのです。特にLBDの彼女は、若い娘には負けない危うい魅力に満ち溢れています。