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『ブリット』Vol.3|ジャクリーン・ビセットとボーイフレンドシャツ

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60年代のミステリアス・エレガンス

私は生まれてこのかた結婚に興味を持ったことはありません。

ジャクリーン・ビセット

1970年代に〝ジャッキー〟と言えば、ジャクリーン・オナシス。そして、もう一人の〝ジャッキー〟がジャクリーン・ビセットでした。

彼女は女優としての評価は高くはなかったのですが、その類まれなる高貴さが発散された1974年の『オリエント急行殺人事件』を頂点に、映画史ではなく、ファッション史において、今後再評価の対象となる要素に満ち溢れています。その魅力は、一言でいうとミステリアス・エレガンスです。

フランス系の血が入っているためか彼女のファッションは、実に垢抜けており、モンゴメリー・クリフトとマーロン・ブランド、そして、ジャンヌ・モローを崇拝する演技派志向であるにもかかわらず、その類まれなるルックスのため、そうなれなかった悲しき人でもありました。

しかし、その表情の端々から漂う「知性」は、極めて60年代的で、もし、現代の女性にこの雰囲気を漂わせることが出来たならば、そういう人は、ツイッターやインスタのフォロワーが1万人以上いるのよということなど自慢しない類の人であろうことを易々と想像させます。

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キャシー スタイル1

60年代のシャツワンピース
  • シルクのイエローシャツワンピース。両胸にフラップポケット、かなりミニ
  • 膝下のブラックブーツ
  • 鼈甲の髪留め

ミニスカートをエレガントに着る提案は、最上級の女が目指すべき永遠のテーマ。

黄色というチョイスにとって、素材は死活問題である。

それにしてもかなり高価そうなワンピースです。シルクの包み込むようなドレープ感は、他の生地では生み出せない。

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ミニマルを選ぶか?サイケを選ぶか?


60年代ミニマルの極み。1967年、エミリオ・プッチの覚醒をはじめとするファッション業界をも巻き込むサイケデリック・レヴォリューションの波の中で、女性は、ミニマルを選ぶか?サイケを選ぶか?という問いかけを毎日自問自答しながら、クローゼットからファッションを選抜し、外出していました。

この映画の中では強く見えてきませんが、1968年はあらゆる価値観が崩壊しようとしている時代の流れの中で、戸惑いの中で人々が生きている非常に刺激的な時代だったのです。

スウィンギング・ロンドンにより大流行したミニスカートが、そのお嬢様っぽさを否定する形で、「サイケデリック街道」をひた走るのです。それは、1966年、中国で文化大革命が起きた翌年に、世界において、支配階級に対する反発の心が生み出した諦めと闘争の境地とも言えるヒッピー文化の始まりとなったのです。

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キャシー スタイル2

グレンチェックミニワンピ
  • グレンチェックのミニワンピ

作中ではほんの一瞬しか登場しないのですが、彼女のミステリアス・エレガンスの雰囲気が最も体現されているスタイルです。



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キャシー スタイル3

ボーイフレンド・シャツ
  • 男物の水色のカッターシャツ。袖を2回ロールアップ

1960年代という時代は、女性らしさの中に、男性のアイテムを落としこむことがハイセンスであるというボーイフレンド・スタイルが確立されていった時代でした。

ジャクリーン・ビセットの魅力。それは「メランコリー」を連想させる美女であるということ。彼女がこの作品について回想する言葉で非常に印象深い言葉があります。「スティーブと最初に会ったとき彼は言いました。キミはこれから女優として頑張っていく新人女優だよね。早く仕事を終えて彼氏のもとに帰りたいなんて気持ちで仕事はしないでくれ。この役柄に全身全霊を傾けてくれ!と・・・彼はどんなことにも決して妥協しない人なの」

1960年代のスティーブ・マックイーンは、男性にとっても女性にとっても、最もカッコいい男の象徴でした。そんな男と付き合っている説得力を生み出せる女性としてのジャクリーンの存在感は、いい男を引き立たてるいい女の絶好のサンプルになるはずです。

モードを一言で表現すると、テーブルにスマホのない風景。

この脚のラインの美しさは罪としか言いようがありません。

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キャシー スタイル4

ウール・トレンチコート
  • ベージュのウール・トレンチコート、エポレットなし。腕周りは細い、右に2つ、左に3つ配置されている大き目のフラップポケット
  • 黒のタートルネック
  • ベージュのパンツ
  • ショートレザーブーツ
  • 黒のヘアリボン

クールなトレンチというよりは、大き目のフラップポケットにより、フェミニンなトレンチです。

3つ並ぶフラップポケットと、二つだけのボタンの対比。

イイ女は、いつもレザーブーツと共に走るものです。

憂いの表情が、最も引き立つコートというアイテム。

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背筋をピンと伸ばして!コートと女の美学

ウールコートを着る女は、一緒にいる男の格まで上げてくれる。

まるで恋人のような撮影中のオフショット。

今、男も女もイマイチぱっとしない理由はなぜでしょうか?それは恐らく一歩前に踏み込みすぎということではないでしょうか?私はどうやらでしゃばらないジャクリーン・ビセットが好きらしい。それは、自己主張しすぎない女から漂うそこはかとない魅力が彼女の魅力だと思うからです。

セリフを省略することに細心の注意を払ったスティーブ・マックイーン。彼の魅力は、動ではなく、静の魅力であり、そんな上等な男のヒロインをつとめることはすごく大変なことです。この作品のジャクリーンは、『ゲッタウェイ』のアリ・マッグローと同じく静の魅力に満ち溢れています。そして、そんな女にとって、最も似合うファッション・アイテムこそが、トレンチコートというアイテムなのです。

『シンシナティ・キッド』のチューズデイ・ウェルド、前述のアリ・マッグローにしても劇中のトレンチ・コートが本当に様になっていました。それは恐らくマックイーンが生み出す孤独が彼女たちに連鎖しているからでしょう。

トレンチコートを着る女は、背筋をピンと伸ばし、「孤独」を友にして、歩いている雰囲気が似合います。だから、私たちがトレンチコートを選ぶときの参考として、60年代のトレンチコート・アイコン・ムービーを見てみましょう。クラシカルなバーバリーのトレンチコートもいいのですが、この作品のトレンチコートのようにフラップポケットがついたものも可愛くて、クールな女にひとつの不思議なスパイスを生み出すのです。

作品データ

作品名:ブリット Bullitt (1968)
監督:ピーター・イェーツ
衣装:セオドア・ヴァン・ランクル
出演者:スティーブ・マックイーン/ジャクリーン・ビセット/ロバート・ヴォーン

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